2013/01/29 19:35

『カラー化で広がるモノクロ漫画の作品世界』

取材:コルク編集部

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安野モヨコ『バッファロー5人娘』の発売に合わせ、電子書籍ではオールカラー版を製作・発売。今回のプロジェクトではオールカラー豪華本を限定製作する。モノクロ漫画をオールカラー化する過程には読者の想像を超えたクリエイティブな世界が広がっていた。オールカラー化を担当した色彩デザイナーへのインタビューを通して『バッファロー5人娘』の実際のシーンを例に、モノクロへの尊敬、カラー化に対する不安、徹底したこだわりと作品理解に迫る。
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【第1回】−モノクロ漫画と徹底的に向き合う−



—今回『バッファロー5人娘』のオールカラー化をしていただき、ありがとうございました。カラー作品は完成した状態をみることはありますが、なかなかその過程を知る機会はありません。カラー化の作業とはどのようなものなのでしょうか?

「そもそも、モノクロとカラーの違いはどこにあると思いますか?」

ー一番の違いは『情報量』ですよね?

「確かに一般的にはモノクロは情報量が少なく、カラーは情報量が多いと思われがちです。ですが、カラー化に携わっていると、これまで日本が築き上げてきたモノクロ漫画の技術は凄まじいものだと実感します。白と黒だけで表現された紙面に、私たち読者は想像力を掻き立てられる。モノクロ漫画は、いい意味での曖昧さを包括した最高峰の技術であり、それが日本独自のカルチャーとしてここまで大きく育った要因だと思います。」

ーたしかに漫画はモノクロでも、読者には「色」が見え「世界観」が頭の中に広がります。

「そうなんですよね。それこそが読者の心をつかんで離さなかったモノクロ漫画の魅力です。だからこそ、私たちはモノクロ漫画の魅力を心から理解した上で、カラー化の意義を常に問い続けています。カラー化は時としてそれまで読者に委ねられてきた世界観の解釈を、決めつけることになりかねません。」

ー好きな漫画がアニメ化されるときにも、色味に違和感を抱くことはありますよね。

「まったく同じことがモノクロ漫画をカラー化するときにも起こりえます。カラー化に取り組む際、モノクロが持っていた雰囲気を損なってしまっては、意味がないんですよね。大前提として、モノクロがカラー化されることで、より作品の世界観が広がらなければいけない。」

ーなるほど。

「わたしたちの仕事は、一歩間違えると、モノクロ漫画の魅力を根本的に損ね、作家さんの大切な作品を『改悪』しかねない危険性も持ち合わせている。そこをしっかりと心に留め、仕事をしています。」


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【第2回】−カラー化とは、すべてを具体化していく作業−
第1回で語られたモノクロ漫画の魅力。その魅力を損ねずカラー化を進める具体的な作業の流れ、徹底したこだわりについて。
(第2回は1月30日更新予定)