クラウドファンディングにご協力いただいている皆さま、これからご協力いただける皆さま、通りすがりの皆さま、こんにちは!チェロの長南牧人です。
今回はヴァイオリンなどを弾く時の「弓」について触れたいと思います。
楽器本体については良く語られるのですが、弓もとても重要で楽器本体との相性が良いものを使うと楽器が元々持つ能力を引き出してくれて、同じ楽器とは思えないくらい良い音で弾きやすくなったりします。
楽器と奏者との相性、楽器と弓との相性、奏者と弓との相性、があるので三角関係ですね。
この三角関係がドンピシャにハマると、本当に凄い事になります。
面白いのは、もちろん値段にも比例している部分もあるのですが、こっちの高い弓よりこっちの安い弓のほうがこの楽器には相性が良い、なんて事もあります。
ピアノ程ではありませんが、弓もヴァイオリン本体と同じ程度に、音楽の発展、変化や商業的な事由によってその形を変えてきています。
まずは歴史から辿ってみましょう。
「弓」というくらいですので、最初は武器としての弓のような形をしていました。
がしかし、みなさん現在、目にするヴァイオリンの弓はいわゆる弓状に反っていませんよね。
これには大きな理由があります。
ルネッサンスやバロック時代は、武器の弓のような反り方をしていた弓が使われていました。
やはり、なんとも古風な響きですよね。
しかしより高度な演奏テクニックや大きな音量が求められるようになり、18世紀後半にフランソワ・トルテさんによって逆に反らせる弓が作られました。日本は江戸時代の頃ですね。
これはトルテさん一人が独自のアイデアではなく、ヴィオッティさんやクレゼールさんといった名ヴァイオリニストの
助言により、開発されたものでした。
さて、中世から現代まで一気に来ましたが、次はマテリアルを。
中世の頃の材料は、筆者の勉強不足の為はっきり言ってわかりません。スミマセン。
ご存じの方がいらっしゃいましたら、ご教授願います。
解っている範囲は、スネークウッドやアイアンウッド、という事です。
その後、ブラジルウッドというブラジル原産のマメ科の木材が使われるようになりました。
中でもペルナンブーコ州で取れるものは品質が良く、現在ほとんどの弓がこのペルナンブーコ材が使われています。
現代ではカーボン、ペルナンブーコを芯材に周りがカーボンのハイブリッド、などもあります。
弓に求められる性能は、軽いがしっかりとした音が出すことが出来て、ちょっと弦に触れただけでも音程感のある美しい音が出せ、スピッカートなど飛ばし弓の時に操作性のよい事です。
良い弓は、弓が勝手に演奏してくれる錯覚に陥ります。
おっと、あまりに見事な演奏なので気が遠くなってしまいましたが、気絶しないように今日も先を続けましょう。
ペルナンブーコはコシとしなやかさを兼ねそろえていて、これらの条件を満たすものが多いです。
しかし、最近は乱獲によって絶滅危惧種に指定され、ブラジルからの輸出が禁止となり、弓製作家がこぞってブラジルに
移住して現地で製作を継続したりしています。ここのところ、Made in Brasilの優れた弓をよく見かけます。
もちろん禁輸以前のストックで製作している方もいらっしゃいます。
さて、棹の部分以外も説明いたしましょう。
手元の黒い部分、フロッグ(毛箱)といいますが、ここは一般的には黒檀、そしてべっ甲、オックスホーンなどが
使われ、変わりダネではマンモスのつの、なんていうのもあります。
フロッグの装飾には貝殻が使われ、日本の三陸産のアワビが最高級とされているそうです。
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金属の部分は、金、銀、ニッケルなどが使われます。個人的には銀が一番、音色的にも弾き心地的にも良いような気がします。
弓先の白い部分は象牙、スチール、プラスチックなどが使われます。
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小さい部品ですが、象牙製のものはワシントン条約で商業取引が禁止されているので海外からお取り寄せで購入する場合は要注意です。
お次は、これが無いとなんとも音が出せられない重要な部分、「毛」です。
これには馬のしっぽの毛が使われています。基本、白馬のしっぽが使われますが、脱色されたものや、コントラバスなど弦が太い楽器は(最近はチェロの方もいらっしゃいます)黒毛の剛毛が使われたりします。
近年、代用品としてナイロン糸なども研究されていますが、今のところ馬のしっぽの毛が主流です。
ヴァイオリンで160本から180本、ヴィオラやチェロは割り増されます。
この馬のしっぽの毛のキューティクルに松脂を絡め付け、摩擦係数を増やして音を出す、という事です。
松脂についても気が遠くなりそうな膨大な量のレシピがあり、色々なメーカーが
多種多様な製品を作っており、気温や湿度で使い分けたりもします。
また気が遠くなってきてしまったので、今回はこのくらいにしておきましょう。
それでは次の活動報告もお楽しみに!!