2022/04/16 12:40

病室の狭いカーテンに囲まれた空間で必死に受験勉強していた子(でも受からなかった)、医師に内緒でダンベルを持ち込み筋トレしていた元ヤンキー、「だんじり祭りに出られないなら死んだ方がマシ」と手術を拒否した子…。孤独に闘っていた彼らが、少しでもほっと自分を解放できる場を――。

小児がん病棟で看護師をしてきた私が、TSURUMIこどもホスピスにゲームルームが必要と思う理由をお話しします。(以前の活動報告と多分にかぶる内容ですがお許しください)

難病の10代に起こっていること

10代という、自分も周囲も目まぐるしく変化していく貴重な青春時代。そんな時期にある日突然、または生まれ持って大きな病気を抱えることになった若者は、どのように過ごしているのでしょうか。

手術、放射線、抗がん剤など、病気を治すためとはいえ、心身ともに負担の強い治療を繰り返します。その治療のためには長期間の入院が必要です。

入院によって学校へ行けなくなり、元居た世界から隔絶されていきます。治療がひと段落して退院できたとしても、体力や免疫力が著しく低下しているため、元の自分や周囲の人と同じように活動することができません。

友だち関係が重要なこの年代で、周りの人に追い付けない焦燥感、疎外感。死への恐怖、家族へ負担をかけることの申し訳なさ。そして、病気に関係なく、アイデンティティの確立でもがくこの世代特有の悩み…。そういったものが問答無用に押し寄せてきます。誰かと分かり合えれば少しはラクになれるかもしれない。ですが、この世代で重い病気を抱えた人の人数は、統計的にも少なく、普通に過ごしていて出会えることはまずありません。

そこで、彼らが感じるのがこの2つ。

「なんで自分だけ」「この気持ちを分かってくれる人なんてどこにもいない」です。


誰にも心を開かず孤独感を深め、どこか諦めた目をしている青年をたくさん見てきました。幸い大人になることができたサバイバーからも、退院後の辛さからあの時に死んどいたほうがよかった」という言葉を投げられることがあります。それを聞くたびに、そこまで追い込んでしまった医療者の一端として、どうしようもない申し訳なさを感じます。

彼らに起こる様々な変化を一人きりで受け止めさせるのは、無理があります。彼らには間違いなくサポートが必要です。ちょっとしたことで希望を取り戻せる力があるのも、彼らの特徴です。

ですが、ここで1つ問題が。自立心の強くなるこの年代、大人のサポートを快く受け入れてくれる人はそんなにいません。「ホスピスにおいでよ」と言っても、来てくれません。実際、TSURUMIこどもホスピスがオープンして6年間で、利用してくれた中高生は5人以下です。でも、ニーズがないわけではない。病院関係者からは、彼らの受け入れをリクエストされ続けてきました。

だから、ゲーミングルーム

待っても待っても来ないのなら、「ここなら行ってみてもいいかも」と思ってもらえる、彼らを大歓迎するエリアを作ろう!そう思い『ティーン向け改装計画』と、今回の『ゲーミングルームクラファン』を立ち上げました。

一生懸命作っても、結局は来てくれないかもしれない。それでも、私たち大人が妥協せずに本気で作ったよ、と胸を張ってお誘いできる場を作ります。この場所で、誰の目も気にせず一人きりでぼーっとしていい、泣いていい。そして、分かり合える友人と出会って1人じゃないことを実感してほしい。それだけで、世界の彩りが変わって見えるはずです。


クラウドファンディング終了まであと2週間。たくさんの大人の「あなたを思う気持ち」が詰まったプロジェクトを、成功させたいです。引き続き応援よろしくお願いします! 


TSURUMIこどもホスピス

西出由実