こんにちは。ハンドブック編集長の矢嶋桃子です。『えんじゅ アフターケアから、出会いへ』の、本のご紹介を少しずつさせてください。今回、表紙の絵は、画家の堀川理万子さんにお願いをしました。堀川さんは『海のアトリエ』(偕成社)という絵本で昨年Bunkamuraドゥマゴ賞を受賞されました。原画展を見て、やさしく、温かな雰囲気に、堀川さんに描いていただきたい!と思ったのでした。ありがたいことにご快諾いただき、何度か打ち合わせをさせていただく中で、イメージやキーワードをいろいろと伝えさせていただきました。この本のキーワードのひとつが「お守り」です。誰かと伴走していて迷ったときに、そうだ、あの本を開いてみよう、と思えるようなお守りとして。そして、もし本を開く機会がなかったとしても、本棚や机の上にあるだけでもうれしくなるような、お守りになるような本になってほしい。そのときに、装画はとても重要でした。そしていろいろとお話をしていく中で、「夜の闇の中にぽっと灯る、あたたかな光」のイメージが湧いてきました。夜とか、闇というと、ネガティブなイメージもありますが、でも、闇が全部悪者かというと、そうとも言えないと思ったのです。消えてしまいそうな気持ちの時に、闇が消し去ってくれる、包んでくれる、溶かしてくれる、そんな優しさを感じることもあるのではないだろうか。お日様や蛍光灯の強いあかりは強すぎるけれど、暗闇に灯る、街灯だったり、月だったり、星だったり、お店の明かりだったり、そんな灯りが、やっぱり誰かのお守りとしてそこにあったらいいな、と思いました。「朝が来るのがいやだ」という人たちの声もお伝えしました。堀川さんからは、「私にも苦しい時期、朝が来るのがいやだと思っていたことがあるのを思い出しました」という言葉もいただきました。そうして、いくつかの案を出してくださった中に、「夜のえんじゅの木」がありました。えんじゅは公園に植えられていたり、街路樹としても珍しい木ではありません。マメ科のため、初夏には白い花を咲かせます。堀川さんの描いてくださったラフ画を見たとき、夜空に立ち昇るような白い花と、枝葉の陰からきらめく星の光が、控えめに、しかしキラキラと、とても美しいと思ったのを覚えています。この度、堀川さんから、原画が完成し、送られてきました。「そこにひっそりとあるだけで、お守りとなるような本」これを受け取ってくださった皆さんが、大切にしたいと思ってくださったら、この上なくうれしいです。もう少し、本の制作も頑張ります。