2曲めのご紹介です。今回のCDのコンセプトは「エスクラ&バスクラ」ですが、普通のクラリネットの曲ももちろん収録します。僕の大好きな曲で、他には無い曲となると、これしか浮かびませんでした。
Clarinet Sonata No.1/J. Pucihar
この曲を初めて知ったのはポーランドのクラリネット奏者、J. J. BokunのCDがきっかけでした。僕の持論として、「美味い飲み屋は御通しから美味い」「素晴らしい文学作品は最初の一文から素晴らしい」「素敵な曲はイントロから素敵」というのがありますが、この曲も冒頭のピアノからノックアウトされた類のものです。
当時大学を出たばかりだった僕は当然のように楽譜を探したわけですが、どの国のサイトを見ても見当たりませんでした。それもそのはず、この文章を書いている今も、まだ出版されていないようです。どうにも諦めきれなかったので、作曲家のメールアドレスを探し当て、直接楽譜について聞いてみました。「どうしても貴方の作品を演奏したいのですが、楽譜はどうすれば手に入りますか」と。すると彼は「好きに使ってくれ」と一言、楽譜データをそのまま送ってくれたのでした。
今回録音するにあたって、許諾を得ようと10年ぶりくらいにメールをしてみました。するとまたすぐに返事が来て、「問題無い。うまくやってくれ」と、あくまで素っ気ないプチハール氏ですが、現在は大学教授になられているようです。
というわけで、おそらく僕が日本初演したことになるんだと思います。日本人による録音も初でしょう。僕も自身のユニット、Trymultyのライブで取り上げるような曲ですので、クラシックというよりはジャズ寄りな、カッコイイ1曲です。