話し合いによる問いのプロセスを記録する雑誌
『SYN(シン) MAGAZINE』を出版したい!
■はじめに
■大学同窓会が挑戦する雑誌出版
問いを共に育む仲間と、問いをもとにつながれる場所をつくりたい。そして、学びを深めてゆく足跡を多くの人と共有したい。そんな思いから、対話をとおして問いを深める雑誌『SYN (シン)MAGAZINE』を創刊します。
『SYN MAGAZINE』の編集部を担う私たちは、「龍谷大学政策学部同窓会」という卒業生組織です。行政職員、まちづくり会社、大学教員、フリーライター、大学院生、デザイン組織など、さまざまな領域で活動するメンバーが集まり、人生で学びを止めないための企画・場づくりに取り組んでいます。
現在はコミュニティが無数に増えていく時代。皆さんもLINEをひらけば、いくつものチャットグループが画面に並んでいるはずです。誰もが複数のコミュニティに所属するようになった今、大学同窓会というコミュニティの存在意義は相対的に弱くなってきているように感じています。かつてのように大規模なパーティーや名刺交換会をするだけの集まりではダメで、固有の存在意義を発揮していくことが求められていると言えるでしょう。私たちはそんな従来の同窓会像を更新し、固有の価値をつくりだすことをモットーに活動をしています。
そして同窓会設立10周年を迎えた今、これまで学んだ政策学の知見を生かして、「雑誌出版」という新たな挑戦をはじめます。
■問いを深め合うディスカッションメディア syn
雑誌の母体となる「問いを深め合うディスカッションメディア syn(シン)」は、2020年より同窓会で運営を始めたウェブメディアです。「より良く生きるための学びの姿勢を身につける」ことを目的に、「対話」をとおして問いを深めていく過程を記録・発信しています。
『syn』という名前は「共話(synlogue)」という言葉の接頭語に由来します。
「共話」は、日本語教育学者の水谷信子氏の造語で、「ひとつの発話を必ずしもひとりの話し手が完結させるのではなく、話し手と聞き手の二人で作っていくという考えにもとづいた話し方」を意味します。
このような、話し手と聞き手が一緒になって話を編みあげ、共に問いを深めていくような姿勢こそが学びの基本になるという考えから、synは共話的な態度での問いの探求を重要視しています。
synというプロジェクトの大きな特徴は、1年にひとつの普遍的なイシューをさだめ、その問いだけを様々な角度から問いなおしていくこと。長期間「問いを続ける」という制約を設けることで、深められる細やかな問いの可能性や、当初は予想できなかった思わぬ展開を大切にしています。
第1期となる初年度は、「よい話し合いとはなにか」をテーマに設定し、多方面で活躍されている13名の方へのインタビューを学びの柱としながら問いを続けました。
また、問いを膨らませたり話し合いの姿勢を鍛える仕組みとして、チャットアプリでの編集会議の公開や、対話型イベントやワークショップの開催をとおして、誰もが編集部の一員として問いのプロセスに参加できる場を用意しています。
そして最も特徴的なのが、イシューについての1年間の問いが終われば、その足跡を振り返り、雑誌という媒体をつくるサイクルを設けていること。課題解決のための複合的な知でもある「政策学」の視点を生かしながら、私と公のあいだ、問いと答えのあいだをつなぐ道具としての雑誌を生み出すことを目指しています。
以上の仕組みで問いを続けた結果、方向性や深度は違えど、編集部メンバーそれぞれが同じ問いをもとに1年に渡るコミュニケーションを続けることができました。細かな反省点や難しさはありますが、「永い問いを共に育む」という独特なつながりの魅力を実感しています。
synの個性は、素人的な眼差しとスローな学びの足跡にあります。素人の立場から一歩ずつ問いを進めていく過程は、私たちと同じような初学者の学びに少なからず参考になるかもしれません。
synが目指すのは、インタビュー対象者の知名度やテーマの切り口に関心をもってもらうというより、永く問いを続けること、話し合いを諦めないことの魅力を伝えるメディアづくりです。
けれど、ウェブメディアで記事単体を届けるだけでは、問いに向き合い続けた時間の試行錯誤や、その後の継続的な学びに関心を持ってもらうことは難しい。それならば、1つの問いに対する複数の視点を盛り込むことができ、問いを続けた時間をそのまま記録できるメディアをつくるのが最適なのかもしれない!
そんな思いから創刊するのが『syn magazine』です。
この雑誌が新しい読者との出会いの場となり、共に問いを育む仲間とつながるきっかけになれば嬉しいです。
■近くの問いからはじめる『syn magazine』
雑誌のコンセプトは「近くの問いからはじめる」。
天下国家を考えるのではなく、人間誰にでも共通する普遍的な問題を取り上げ、身近でありふれた問いから一歩ずつ学びを進めていく過程を共有します。
話題のネタやマーケットのサイズを想定せず、ひとりの人間として考えてみたい特集テーマを設定。その分野の素人である編集部が学びを深めてくプロセスを大切に、読者と共に問いを育む雑誌を目指します。
記念すべき第1期の特集イシューは「よい話し合いとはなにか」。
創刊号は誰にでも共通するコミュニケーションの問題をとりあげます。龍谷大学政策学部が掲げる「つなぐ・ひきだす」という合言葉や、synの運営精神でもある「共話」の姿勢をメタ的に問いなおす意味でも、まず最初はこの問いを考えたいという思いがありました。
取材をおこなった2020〜2021年はコロナ禍の真っ只中。集い、語らうことが難しくなった時代に、建設的なコミュニケーションはどのように成立するのか。政策学、言語学、まちづくり、組織開発、雑誌編集、場づくり、建築、地域文化、イノベーション開発、それぞれの領域で生まれる社会とのコミュニケーションのかたちをもとに、話し合いの限界と可能性を考えました。
『syn magazine vol.1 - よい話し合いとはなにか 』 の内容
[special]話し合いを支える人の条件 ー 2020年代以後の話し合いの行方 I 株式会社Studio-L 代表 山崎 亮
[interview]「支配されない/支配しない私」でいるために | 法政大学法学部 教授 土山希美枝
[interview]「言葉」から考える人間と想像力 | 龍谷大学政策学部 准教授 碓井智子
[Q&A]話し合いのヒント集 | まちとしごと総合研究所 組合員 東信史
[interview]異なるものをつなぐ「話し合い」の可能性 | 龍谷大学政策学部 教授 村田和代
[interview]描くことで生まれる対話の場 | 一般社団法人かたりすと 理事 石橋智晴
[interview]地域での話し合いから生活をつくる | 福知山市役所 職員 伊庭弥広
[comic]漫画「横断」 | 平田基
[interview]問いと学びとつくるを続けるけることで創発は生まれる | 株式会社MIMIGURI CO-CEO 安斎勇樹
[interview]自分という根を持ちながら、揺れる柳のように | 僧侶・煩悩クリエイター 稲田ズイキ
[interview]ただここにあること、遠い誰かとつながること | 株式会社ここにある 代表取締役 藤本遼
[interview]誤読が生まれる原型をつくりたい ー 地域文化商社が目指す対話のかたち | 株式会社うなぎの寝床 代表取締役 白水高広
[interview]コミュニケーションの設計と設計のコミュニケーション | NPO法人CHAr 代表理事 連勇太朗
[image]写真「視点のリフレーミング」 | コムラマイ
[discussion]社会装置から生まれるコミニケーション | ユヌスソーシャルビジネスリサーチセンター 白石克孝×深尾昌峰×田中友悟
[workshop]「よい話し合い」を問いなおすためのエクササイズ | Nue.inc 代表取締役 松倉早星
[topic]問いを深めるための選書企画「話し合いを考える32冊」
[discussion]1年の問いを振りかえって | syn編集部
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発行部数:1000部
仕様:B5/128ページ
定価:1,800円(税別)
出版者名: 龍谷大学校友会政策学部同窓会
発行 :2022年6月1日
syn magazine編集:田中友悟(龍谷大学校友会政策学部同窓会)、稲垣佳乃子 (出版社さりげなく)、阪田晋平(Nue inc.)、浦川彰太 (omote)
アートディレクション・デザイン:浦川彰太
本文フォーマット・デザイン:窪田実莉
表紙イラスト:寺本 愛
本文イラスト:中島あかね、大久保つぐみ、中島花野
印刷:藤原印刷
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■学び続けることを止めないために
syn編集部には書籍づくりや編集のプロがいません。それでも雑誌を創刊するのは、誰もがひとりの人間として学びを続けられる仕組みがほしかったからです。
私たちは東日本大震災が起こった2011年に大学に入学し、社会がめまぐるしく変化するさまを横目に政策学という「社会の課題解決」をとりあつかう学問を学びました。
そして、あれから10年と少し。コロナ禍という世界規模の災厄が、また新たに世の中の当たり前を塗り替え始めています。集うことが制限されたここ数年に、私たちの暮らしや遊び、仕事のかたちは大きく一変しました。
世の中の課題は、社会の変化にともなってその姿を変えます。そんな複雑化が進む社会の中で毎日を忙しく生きていると、学生の頃のように社会について思考を巡らせることが難しくなっていると気づきました。
学生時代は知識も経験もありませんでしたが、答えのない問題を語り合ったり、わからないことを誰かに聞きにいく姿勢だけは大切にしていました。友人との議論や先輩方のアドバイスは、いつも私たちの価値観をガラガラと崩し、知らなかった世界への入り口を見つける機会を与えてくれました。話し合いは、私たちにとって「学びを深めるために必要な作法」だったと言えます。
しかし、私たちは「社会人」になったにも関わらず、じっくりと社会について考えることができなくなっていました。人間にとって、もっとも基本的なコミュニケーションである集い、語らうことを大切にできなくなっているのです。
『SYN MAGAZINE』は、そのような状況を変えるべくスタートします。
これは改めてまっさらな気持ちで、社会との終わらない対話を始めるための試み。ひとりの人間として、仕事を頑張ったり、友人とおしゃべりをしたり、美味しいご飯を味わうように、日々の生活の中で学びを楽しむきっかけをつくりたいと思っています。
正しい1つの答えを探し求めるのではなく、多くの人たちと共に問いを育てていくプロセスを共有することがsynの理想とする雑誌づくりです。人間だけがもつ高度な技術である「対話」を諦めず、社会とコミュニケーションを続ける姿勢を養っていければと考えています。
■リターンについて
リターンは①購入する、②応援する、③共に学ぶの3パターンをご用意しています。
様々なかたちでsynというプロジェクトのこれからをご一緒できればと考えています。ご支援いただいた資金は、手数料を差し引いた分の全額を本誌の制作費とウェブサイトの管理運営費にあてさせていただきます。
■さいごに
あくまでその道の専門家ではない多様なメンバーが集まり、編集会議の様子を全公開する参加型メディアだからこそ、手をつけられる細やかな問いや、思ってもいなかった展開があるはずです。
「素人の集団学習」の可能性を信じて、関わる人たちの問いを束ねながら、多くの方々と「永い問い」のための姿勢を身につけていきたいと考えています。問いを深め合うメディアのこれからをみなさんと共に作っていければ嬉しいです。
■運営団体について
龍谷大学校友会政策学部同窓会
2015年3月設立。チーム政策の発展を目指して活動する卒業生有志によって構成された組織です。メンバーの知見を生かしながら、学生・卒業生間の交流や学部活動の支援、政策学的思考を拡げる独自プロジェクトに取り組んでいます。2021年からは〈つなぐ・ひきだす・うみだす〉の実践と探求を目標に掲げ、イベント開催やメディア運営を行なっています。
最新の活動報告
もっと見るリターン商品を発送いたしました!
2022/06/09 23:10支援者の皆様宛にsyn magazineと特製ステッカーを発送いたしました!本日以降、皆様のお手元に届き始めるはずです。まずは気になるテーマから目を通すもよし、編集部の問いの過程を追体験するように頭から読み進めるのもよし。それぞれのペースとリズムで雑誌を楽しんでいただけると嬉しいです。ご意見・感想は、#synmagazineのハッシュタグをつけてSNSなどに投稿いただだけると飛び跳ねて喜びます。雑誌づくりでのこだわりや各コンテンツの裏話は、後日実施する出版記念オンラインイベントにてお話する予定ですので、そちらもお楽しみに..!出版イベントの詳細や、特別プランのリターン詳細については、追って支援者様宛にメールにてご連絡差し上げます。引き続きよろしくお願いいたします。問いを深め合うディスカッションメディアsyn編集部 一同 もっと見る
【目標達成!】話し合いで問いを深める雑誌『SYN MAGAZINE』出版CF
2022/05/30 09:064月27日より実施していた『syn magazine』出版クラウドファンディングですが、合計127名もの方からご支援をいただき、昨日目標額を達成することができました!たくさんのご支援、応援の言葉をいただき、編集部一同心から嬉しく思っております。本当にありがとうございます。『SYN MAGAZINE』は、大学を卒業しても学びをやめない、問いを諦めないためにスタートした取り組みです。正しい1つの答えを探し求めるのではなく、多くの人たちと共に問いを育てていくプロセスを共有することがsynの理想とする雑誌づくりです。人間だけがもつ高度な技術である「対話」を諦めず、社会とコミュニケーションを続ける姿勢を養っていければと考えています。今後はこの雑誌をとおして皆さんとお話できる機会を増やしていきたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いいたします。発送は6月の上旬を予定しております。雑誌の到着まで今しばらくお待ちください! もっと見る
『syn magazine』コンテンツ紹介⑨異なるものをつなぐ話し合いの可能性
2022/05/26 21:08話し合いで問いを深める雑誌『syn magazine』創刊号となる本誌の特集テーマは「よい話し合いとはなにか」。言語学、コミュニティデザイン、地域行政、組織開発、建築、商社、イノベーションなどの領域で活躍する13人の方々との話し合いのプロセスを収録しています。今回ご紹介するのは社会言語学者で龍谷大学政策学部教授の村田和代さんとのダイアローグです。村田 和代 (むらた かずよ)奈良県橿原市出身。ニュージーランド国立ヴィクトリア大学大学院言語学科PhD (言語学)龍谷大学政策学部教授。現在、龍谷大学グローバル教育推進センター長、龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンター長を務める。専門は、社会言語学、異文化間コミュニケーション、人材育成論。人にやさしいコミュニケーションのエッセンス探求をめざしている。政策学部着任以来、市民参加型の話し合いや、異なる他者との話し合いを通した学びについての研究や、学際的アプローチによる『話し合い学』の構築に取り組んでいる。(主著・主論文) An empirical cross-cultural study of humour in business meetings in New Zealand and Japan, Journal of Pragmatics. (Elsevier, 2014).『雑談の美学』(ひつじ書房 2016)、『市民参加の話し合いを考える』(シリーズ『話し合い学をつくる 』第1巻、2017)『話し合い研究の多様性を考える』(第2巻、2018)『これからの話し合いを考えよう』(シリーズ『話し合い学をつくる 』第3巻、2020、ひつじ書房)-------領域を横断したコミュニケーションを対象とする「話し合い学」の構築を目指す村田さんにとって、「よい話し合い」とはどのようなものなのか。話し合いという行為の本質を探りなら、これからの「よい話し合い」が生まれ得る場所について考えを深めました。クラウドファンディングも残すところあと数日。引き続き応援のほどよろしくお願いいたします!プロジェクトはこちら もっと見る
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