京屋染物店の蜂谷淳平です。今週あたりから岩手では雪の降る日が続き、いよいよ冬の訪れを感じています。冬は山に暮らす動物たちにとって厳しい季節です。そんな環境でも力強く生きていく動物たちを見ていると、野生に生きる逞さにただただ感服するばかりです。クラウドファンディングからスタートした『山ノ頂』も、若干ではありますがようやく在庫を作ることができたので、一般販売をスタートすることとなりました。価格についても、クラウドファンディングで皆様よりご支援いただいたお陰で、中量生産ができる体制が整ったことで、改めて原価等の見直しを行い、以下の価格にて一般販売を開始いたします。■「山ノ頂」商品価格について『KOMONO-IRE(コモノイレ)』 ¥4,000円(税別)『HOGUCHI-IRE(ホグチイレ)』 ¥7,000円(税別)『TESAGE(テサゲ)』 ¥22,000円(税別)販売日は12月12日(月曜日)の『山の神様の日』に合わせて、販売を開始いたします。12という数字は、山の神様にとって大切な数字でマタギは狩猟で12人では山に入らない掟があるほど大切に扱わせた数字です。12が並ぶ12月12日は、山の神様の日と言い伝えられており、猟師は山に入らず山へのお供えなどをして山に感謝をする日です。山の恵に感謝をして、命を巡らせていくプロダクト『山ノ頂』のメッセージと共に、12月12日より一般販売を開始いたします。ECサイトでも購入できるように、ページの準備も進めておりましたので、販売が開始されましたら改めて皆様にお知らせしたいと思っております。引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
狩猟 の付いた活動報告
京屋染物店の蜂谷淳平です。『山ノ頂』狩猟体験ツアー無事開催しました!※ツアーの活動報告をアップしますが、解体の写真なども少しアップしていますので、閲覧注意してくださいませ。今回は関西から4名のお客様をお迎えし、山ノ頂で使われている鹿を獲っている岩手県遠野市で狩猟体験をして頂きました。絶好の秋晴れの中、罠にかかっている鹿の止め刺しから解体までを見学体験できる、かなりディープな狩猟体験ツアーとなりました。遠野に暮らす人にとって当たり前に行われている命の営みですが、山から離れた生活の中ではなかなか見えてこないリアルがそこにはあります。猟師の苦労や、鹿の可愛らしさ、殺す行為が可哀想だなと思う気持ちなど、人それぞれ感じ方が違い、参加された方々がそれぞれが色んな思いを感じ取って頂きとても有意義なツアーになりました。皆さん進んで解体の体験もして頂きました。後半はかなり腕も上げて一人で解体できるようになりました。皮加工の話をする山田泰平くん参加された方々から、『このツアーを定期開催してほしい』という声もいただいたので、沢山の方に山のリアルをお届けできるツアーとして少しずつ整備していきたいと思っています。昼食は『芋の子汁』と鹿肉カレーと鹿の焼き肉そして何より嬉しかったのが、皮を加工している山田泰平くん初め、猟友会の方々が、ツアー参加者との交流をとても楽しんでくれたことです。なかなか遠野の山間の暮らしに、外からの交流というものは少なかったのですが、山ノ頂にご支援いただいた方々からも沢山注目もいただきながら、このツアーのように県外からもお客さんがいらして、猟友会の方々が地道に続けてきた山と人の暮らしの調和を保つ活動に少しスポットライトが当たったことを、猟友会の皆さんも快く思ってくれたことが、自分としては本当に意義あることに繋がってきているなと嬉しくなりました。猟友会のお二人のテンションが上がったため、予定になかった罠の設置方法をレクチャーいただくことに(笑)これから『山ノ頂』の一般販売に向けて、さらに頑張っていきたいと思いますし、ただのものづくりには終わらずに狩猟の現場への理解と関心を広げていくためにもツアーを整備して、沢山の方々に体験を届けていきたいと気持ちを新たにさせていただくツアーとなりました。狩猟体験ツアーにご参加いただいた皆様、ありがとうございました!!
ご支援いただきました皆様、本当にありがとうございました。296名のサポーター様によって総応援購入額は5,364,510円(達成率536%)で終えることができました。また、期間中様々な励ましのお言葉をお寄せいただいた皆様にもあわせてお礼申し上げます。岩手の知られざる自然や郷土芸能に、多くの関心や共感が寄せられたことは未来への大きな希望となりました。私たちは今後も山ノ頂を通して、岩手の自然と郷土芸能を未来に繋げていく継続的な活動をしていきます。山ノ頂を通して、皆様と岩手の山々がより深く繋がっていくことを期待しています。リターンの発送に関しては準備ができ次第、ご案内させて頂きます。プロジェクトの定期的な進捗につきましては、私たちのSNSでもご報告させていただく予定です。ぜひ「いいね」やフォローをお願いいたします。◎京屋染物店 Facebookhttps://www.facebook.com/kyoya161◎en・nichi Facebookhttps://www.facebook.com/en.nichi.official◎縁日 Facebookhttps://www.facebook.com/ennichiselectshop◎京屋染物店 Instagramhttps://www.instagram.com/kyoya_dyeing/◎en・nichi Instagramhttps://www.instagram.com/en.nichi_official/◎縁日 Instagramhttps://www.instagram.com/ennichi_selectshop/今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。京屋染物店スタッフ一同
『山ノ頂』の根幹である、鹿踊りと鹿の命の繋がりという、深い着想を与えてくれたのが人類学者の石倉 敏明(いしくら としあき)先生です。石倉先生は秋田公立美術大学アーツ&ルーツ専攻准教授で、日本や世界の神話や山岳信仰などの調査を行い、多数の論稿、エッセイ、神話集などを発表されています。人類学を芸術領域まで高め、多くの美術作家や音楽家との共同制作活動を行っています。山ノ頂のプロジェクトを進める中で、鹿踊りと鹿の命の深い繋がりについてお話をお伺いしたいと思い、昨年の秋に石倉先生の元を訪れました。石倉先生はとても気さくで、私の印象としては研究者というよりもアーティストの雰囲気を感じる方で、芸能や神話におけるとても細かな知識を沢山知っているのですが、難しいことをとても簡単な言葉で教えてくれる凄い人です。写真家・田附勝さんとの共著『野生めぐり 列島神話の源流に触れる12の旅』(淡交社) 神話の源流にふれる旅を記録しており、山ノ頂のコンセプトを固める上でとても勉強になった本です。そこで私がまず最初に学んだのが、海外と日本の決定的な神様に対する考え方の違いでした。海外ではキリストのように単一の神様を信仰しているものが多く、食べ物などは神様が分け与えてくれるという考え方が多いこと。そして自然は神によって作られた被造物であるというスタンスを取っているものが多いということでした。一方日本は、八百万の神々を信仰しており、野菜や米や肉など、それぞれに神様が宿っているという考え方をしています。それを食べる我々人間もまた神様であり、一時的にその命のめぐりを自分の体の中に入れ、いずれその命を自然に循環させるという考え方をしているということでした。この基本的な神様に対する考え方が、日本人の自然との繋がりを大切にしていきた根幹にあると感じました。獣の命や山の神様に感謝する鹿踊りにもそうした考え方が生きています。石倉先生は鹿踊りについて「平等の極み」と表現してくれました。 人、獣、自然の境界線をなくし、命のめぐりをありのまま踊る鹿踊りは、『人間的な平等』という考えではなく『宇宙から見た平等』の精神が鹿踊りには宿ってるといいます。岩手出身の宮沢賢治の作品「鹿踊りのはじまり」にも、人と鹿が登場する話の中で、人間と獣の種としての境がなくなる表現があります。「鹿踊りのはじまり」は、主人公の嘉十(かじゅう)があえて残した栃の団子を6頭の鹿が分け合って食べながら、ぐるぐる廻りながら踊る印象的な場面が描かれた物語です。鹿たちは嘉十(かじゅう)が忘れていった手ぬぐいを不審に思いながらも、そこに置かれている団子を一つ一つ食べ、鹿は我を忘れて歌い踊っていきます。それをススキに隠れて見ていた嘉十(かじゅう)も「もうまったくじぶんと鹿とのちがいを忘れて」しまい、「ホウ、やれ、やれい。」と叫びながらススキを飛び出してしまう。そんなストーリーが描かれてた物語です。この時に、嘉十(かじゅう)は人と獣を分ける種の境界を忘れ、同じ命として出会う体験をします。宮沢賢治の作品『鹿踊りはじまり』は、まさに「平等の極み」を伝えてくれている物語だと思います。かつて岩手に暮らしていた祖先も、鹿の命を頂き命を脈々と繋いできました。祖先たちもやがて土に還り、山の草木に命が巡っていきます。ふと岩手の自然に身を置くと、山と人の区別の基準はどこにあるのかと不思議に思うことがあります。鹿踊りはやはり私にとっても大切なもので、人と獣のボーダーラインを消してくれる、消しゴムみたいなものです。自然の中に身を置けば、命の垣根などないことなど身体はちゃんと分かってくれているんだと感じます。シンプルで大切なことを身体で伝えるこの踊りを次の世代にも繋げていくために、これからも岩手で踊り続けていきたいと思います。今日がクラウドファンディング最終日。沢山の方からの応援と共に過ごせた1ヶ月は私の宝物です。これからも岩手で踊る理由がさらに強くなりました。皆様のご支援心より感謝しています!本当にありがとうございます!!
京屋染物店の蜂谷淳平です。『山ノ頂』は、遠野市立博物館さんに多大なる協力を頂きながら作り上げてきました。マタギが実際に使っていた資料がいくつも展示されていて、現物を見ながら商品企画やビジュアル撮影を進めることができました。遠野市立博物館には遠野の民話や暮らしにまつわるものなど、昔の岩手の歴史や文化を面白く伝える展示の工夫がされていので、岩手にお越しの際は是非足を運んでいただきたいスポットです。昔はさほど興味がなかった岩手の歴史や文化ですが、今となっては本当に興味深いものばかりで一日いても飽きないほどです。博物館で、昔のマタギの資料を撮影していた時に一人の女の子に出会いました。女の子はよく一人で博物館に来て、展示物を見ているそうです。『あそこに面白いお面があるよ』とか、『ここの置物が怖いよ』とか、自慢げに沢山教えてくれました。 難しいことは抜きにして、「芸能のお面が面白い」とか「マタギの資料がヘンテコリン」だとか、展示物の見た目のユーモラスさが、子供の心を惹きつける魅力だと感じました。岩手は山々に囲まれた盆地で形成され、閉ざされた世界に人々の暮らしがありました。独自の文化が発展して、今見るとクスッと笑ってしまうようなものや、なんとなく怖さを感じるものがたくさんあり、遠野博物館はただただ見ているだけども楽しい空間です。そんな中でもマタギの文化は、特に変わっていて歴史の背景などを知るととても魅力的なものばかりです。特にお気に入りのマタギのお守りを2つご紹介したいと思います。その1、オコゼの干物オコゼの干物は、マタギが山に狩猟に入る際に、猟の安全と豊猟を祈願して、山の神に捧げる貢物です。なぜオコゼなのかというと、山の神様はとても嫉妬深い女性の神様だからです。マタギたちは神様を怒らせてしまうと、山で災いが起きたり、獲物が獲れなくなります。それを恐れたマタギは、山の神様のご機嫌を取るために、見た目がとてもブサイクなオコゼの干物を山の神様に捧げ、『あなたの前では、あらゆる生き物が醜く映ってしまいます。山の神様、あなたはなんて美しいのでしょう」と、山の神のご機嫌取りをしてから山に入っていました。その2、サンスケマタギがお守りとして持っていたサンスケという木彫りの人形があります。山では12という数字が神聖な数字とされており、12月12日は山に入ってはならないほど、12という数字を大切にしてきました。マタギは複数人で狩りをするのですが、12人で山に入ると山の神様が12本の木と間違えてしまい、山から帰れなくなると言い伝えられてきました。やむおえずグループが12人になってしまう時には、サンスケを持って山に入り『13人いますよー』と山の神様に伝えていたそうです。山の神様を恐れ、厳格に守られていたマタギの掟ですが、オコゼもサンスケも、山の神様とマタギたちとの関係性と必死で健気な攻防戦を知ると、とても可愛らしく思えてきます。一見難しそうな歴史や文化も、子供のような軽やかな眼差しで見てみると思わぬ面白さに出会えると思います。