京屋染物店の蜂谷淳平です。
『山ノ頂』は、遠野市立博物館さんに多大なる協力を頂きながら作り上げてきました。
マタギが実際に使っていた資料がいくつも展示されていて、現物を見ながら商品企画やビジュアル撮影を進めることができました。
遠野市立博物館には遠野の民話や暮らしにまつわるものなど、昔の岩手の歴史や文化を面白く伝える展示の工夫がされていので、岩手にお越しの際は是非足を運んでいただきたいスポットです。
昔はさほど興味がなかった岩手の歴史や文化ですが、今となっては本当に興味深いものばかりで一日いても飽きないほどです。
博物館で、昔のマタギの資料を撮影していた時に一人の女の子に出会いました。
女の子はよく一人で博物館に来て、展示物を見ているそうです。
『あそこに面白いお面があるよ』とか、『ここの置物が怖いよ』とか、自慢げに沢山教えてくれました。
難しいことは抜きにして、「芸能のお面が面白い」とか「マタギの資料がヘンテコリン」だとか、展示物の見た目のユーモラスさが、子供の心を惹きつける魅力だと感じました。
岩手は山々に囲まれた盆地で形成され、閉ざされた世界に人々の暮らしがありました。
独自の文化が発展して、今見るとクスッと笑ってしまうようなものや、なんとなく怖さを感じるものがたくさんあり、遠野博物館はただただ見ているだけども楽しい空間です。
そんな中でもマタギの文化は、特に変わっていて歴史の背景などを知るととても魅力的なものばかりです。
特にお気に入りのマタギのお守りを2つご紹介したいと思います。
その1、オコゼの干物
オコゼの干物は、マタギが山に狩猟に入る際に、猟の安全と豊猟を祈願して、山の神に捧げる貢物です。
なぜオコゼなのかというと、山の神様はとても嫉妬深い女性の神様だからです。
マタギたちは神様を怒らせてしまうと、山で災いが起きたり、獲物が獲れなくなります。
それを恐れたマタギは、山の神様のご機嫌を取るために、見た目がとてもブサイクなオコゼの干物を山の神様に捧げ、『あなたの前では、あらゆる生き物が醜く映ってしまいます。山の神様、あなたはなんて美しいのでしょう」と、山の神のご機嫌取りをしてから山に入っていました。
その2、サンスケ
マタギがお守りとして持っていたサンスケという木彫りの人形があります。
山では12という数字が神聖な数字とされており、12月12日は山に入ってはならないほど、12という数字を大切にしてきました。
マタギは複数人で狩りをするのですが、12人で山に入ると山の神様が12本の木と間違えてしまい、山から帰れなくなると言い伝えられてきました。やむおえずグループが12人になってしまう時には、サンスケを持って山に入り『13人いますよー』と山の神様に伝えていたそうです。
山の神様を恐れ、厳格に守られていたマタギの掟ですが、オコゼもサンスケも、山の神様とマタギたちとの関係性と必死で健気な攻防戦を知ると、とても可愛らしく思えてきます。
一見難しそうな歴史や文化も、子供のような軽やかな眼差しで見てみると思わぬ面白さに出会えると思います。