2週間、上海の大学の研究室の一角を借りて本件の塗料を含むいくつかの塗料を作成し、現在日本に向けて発送中です。届き次第豪雪地域に行って試験を行います。
早く日本ででも塗料作成が出来るようにしたいです。
屋根材がトタンなど平滑平面ならば100gでおよそ1平方メートルに塗れます。10Kg(12リットルくらい)で普通の家の屋根なら塗れるのではと思います。コロニアルも比較的平板ですが多少浸み込みが起きるかも知れません。和瓦は形状が波打っている上に浸透性があるので、材料使用量はトタンよりも増えそうです。
いずれにせよ数回業者の人に来てもらって雪下ろしするより低価格にしたいですし、それは可能です。
技術的な話で申し訳ありませんが、数点書き連ねます。
1)なぜ超撥水だと雪が付かないのか?
一言で言えば空気です。超撥水材料は表面に微細凹凸があって水・雪が本当にコート材に接している面積は見かけの10分の1以下です。150度の接触角の場合はおおよそ10%の材料と90%の空気に接します。本件の塗料のように170度の接触角の場合は1%の材料と99%も空気と接するという実感の湧かないような数値になります。
ではなぜ空気が良いのでしょうか?
①最も表面張力の小さい物質
気体なので表面張力という言葉より界面張力の方が正しいと思いますが、水滴は空気中で重力の影響などを受けないと真球に近い形状になります。宇宙船の中を漂う水は球形ですね。
②熱伝導率が小さい
空気をたくさん含む衣服は暖かいですよね。雪が固体であるうちは屋根から排除し易いんです。固体と固体の付着力は固体と液体に比べると格段に小さいからです。なので、雪が屋根材よりも断熱性の高い空気に多く触れるということは雪が融解せず固体の状態を保ち排除し易くなるということです。
③摩擦抵抗が小さい
エアホッケーですね。雪と屋根材の間に空気層があるとわずかな力で動きます。
これらの原理は通常の撥水コートには当てはまらない新しい現象です。
2)湿雪
超撥水コートは水を表面に保てません。1度未満の角度でも球状の水滴はどんどん転がって明後日の方向に行ってしまいます。また乾雪のように固体使く比重が小さい場合も、乾雪は塗膜の上にただ載っているだけで簡単に滑ったり転がったりします。
撥水コートや超撥水コートにとってやっかいなのは湿雪なんです。湿雪は氷と水と空気の混ざった”非常に粘度の高い液体”という扱いになり、超撥水コートの上でも水のように球形になることはありません。従って湿雪は超撥水コート材の上に留まる事が出来ます。ある程度積み重なれば重さが摩擦に打ち勝って滑り出すと思いますが、無雪とはいかないのが今後の課題です。
そういう小難しい話は学会ででもやってくれってことですよね。