引渡しを数日後に控えて、この家との、ほんとうにさいごのお別れをしてきました。
この日ばかりは、おちびも連れずにひとり。
着物や、その他細々とした色々を持ち帰るため
飛行機に乗せられる最大容量、という特大スーツケースを持って。
家に着いたら、話にも聞いていたし、父からの写真でも見ていた通り。
大きな家具はそのままだけれど、その中身や色んなものが片付けられて、
すっきり、と言うにはやっぱりどこか寂しい。“空いている“とでも言うべきでしょうか。
そこから私が持ち帰るもの、友人たちにお譲りするものを片付けて、さらに。
Twitterで、たくさんあったこの家の食器やなんかを
#ほしい人は挙手 なんて募集したのは多分、
お別れの期限を少しでも先延ばしにしたかったからなんだなと、
帰りの新幹線の中で思いました。
作業しながら、あっちこっち。
暑い日で、でも家中のドアや窓を開けているとこの家はやっぱり風が通り抜けるのです。
記録的な猛暑日を観測しているここ数日、暑いのはやっぱり暑いんですけどね、
「暑い暑い」と言いながらも、この風の通り道を感じていたかったり。
軒下の簾がさらりと躱してくれる暑い日射しを、のんびりと愛でていたかったり。
朝一番の電車で恵那に着いたのに、日が長いから、
気がついたらついうっかり長居してしまいました。
夕焼けの中で、さいごのさいごのお別れをしようと思ったら、
ふと口をついて「またね」と言ってしまい、
深呼吸。
「ありがとう。元気でね」
新しいご家族との新しい生活を、楽しんでね。
いい毎日になるといいね。きっとなるよ。だってあなた、本当に素敵な家だもの。
ひと部屋ひと部屋回りながら。
大好きな窓や、壁や、天井や、電燈や、扉や、取手や、家具や、床や、、、、。
「ありがとう。元気でね」
見つめながら、触れながら、聴きながら、、、、。
CFのことを考えて、写真とか動画を撮ろうかな、とも思ったんですが、
でも、撮れませんでした。
さいごのさいごの、私の抵抗だったのかもしれません。
大好きな家とのさいご、を、まだちょっと、認めたくなかった、のかも。
いいんです。大好きな姿を、いっぱいいっぱい映画のなかにのこしたから。
それをたくさんの人に見てもらいましょう。
だってこの家が色んな人の懐かしいに重なるのは、
この家に暮らしが満ち満ちているからなんですもの。
この家の思い出がそこここでくすくす笑ってるからなんですもの。
だから、、、、
本当にさいごのお別れの時間は、私だけの時間に、させてもらいました。
皆さんにこうやって応援してもらって、撮影を実現できたから、
さいごの瞬間に、寂しくてもちゃんと、笑いながら伝えられました。
ありがとう。大好きだよ。
元気でね。