セサミには優馬の他にも、神馬(しんちゃん)というハンディをもつ馬がいました。
しんちゃんとの出逢いは、肥育牧場で働く女の子からの電話で
「牧場に連れて帰ったが転んで自力で起きられないポニーがいる。手が掛かるから放置されている」
と連絡が入ったのです。私(MOMO) は、セサミから2時間30分の道のりを急いでその場所に向かいました。
何故なら、いつから倒れているかわからないし、ずっと放置されたままだと命に関わる熱中症にもなりかねない。
「無事でいて」と祈りながら軽トラを走らせました。
牧場に着くと、これまた小さな栗毛のポニーがヌカルミの中に転んでいました。
近ずいてみるとあまり見たこともない程の重度の障害のある子馬でした。
馬の特徴でもある長い首がなく、しんちゃんは頭のすぐ後ろに肩がありました。背中は丸く、前後から押し潰された様に見える姿でした。
顔は、受け口のオランウータンと見違えるほど愛嬌のある顔でした。
私は衝撃を受けながらその子馬を抱き抱え、そのまま軽トラに乗せて来た藁の中にしんちゃんを乗せました。
その後立たせてみると、両前脚とも足首が全然曲がらず、何とか歩くけれど爪先立ちで前進するしかない歩行状態。
しんちゃんを連れて帰ることに、迷いはありませんでした。
大きさも優馬君と同じ位で、ハンディがあっても1頭も2頭も変わらん、と自分に渇を入れて連れて帰る事にしました。
それは、想像を絶する介護の始まりでした。
優馬くんと同じエリアに入ったしんちゃん。
爪を切るのも寝転んだ状態で切らなければならず、爪を切っていると、他の足で容赦なく思いっきり蹴られる。
優馬君は、寝転んでも自力で起きれますが、しんちゃんは転ぶと自分では起きあがることができません。
夏場は日中に 転ぶと熱中症になったり、突然の雨に濡れて低体温になってしまったり。
一瞬たりとも気を抜く事の出来ない日々が続きました。
夜は夏布団を四つ折にして四隅をゴムでずれないように絞り、しんちゃんはその布団の上で毎日寝転んでいました。
20時、12時、3時、6時と、3~4時間おきにしんちゃんの体を抱え起こして体位変換しなければならず、自力で起き上がれないしんちゃんは、寝たままおしっこも糞もしてしまいます。毎日新しい布団に入れ替えなければなりませんでした。
それでも 床擦れが出来てしまい、しんちゃんは褥瘡との戦いでした。
それでもセサミにお客さんが来ると、優馬くんとしんちゃんは、一歩一歩、一生懸命歩いて みんなの所に出て来ていました。
その一生懸命な姿が涙が出るほど愛おしく、介護の苦労も吹き飛ぶほど嬉しかったし、勇気づけられました。
来たお客さんもこんなに頑張って生きてる二頭を見て、「私も負けずに頑張るよ~」とか「勇気出た~!可愛い!」と言っていました。
優馬くんもしんちゃんも、セサミのアイドルでした。
生まれながらのハンディキャップがあったしんちゃんも優馬くんは、沢山の人に勇気を与えました。オープンセサミで最後まで一生懸命共に生き抜いた、かけがえの無い家族です。
今では虹の橋の住人、いや住馬ですが、きっと セサミの仲間達を見守ってくれていると思います。
しんちゃん ゆうちゃん
たくさんの大きな愛をありがとう
一緒に生きた事 絶対に忘れないよ