セサミには、34歳、人間でいうと130歳の高齢馬がいます。
名前はパンナコッタ 通称『ぱんちゃん』
ももさんが、ある熊本の肥育牧場を訪れていた時に、北海道から沢山の肉馬がその牧場に送り込まれてきたのですが、その馬たちの中に、ぱんちゃんはいました。
ももさんはすぐにぱんちゃんが妊娠していることに気付き、その牧場主に
「あの馬は珍しい毛色をしている。妊娠しているみたいだから、子馬を産ませたらどうか」と持ちかけました。
ぱんちゃんができるだけ肉になるのを回避できるチャンスを作りたかったのです。
その肥育牧場では毎日のように、4~5頭の馬たちが肉にされるため屠殺場に送られていました。
常時80頭近くいる馬たちが肉になるまで、そんなに日数はかかりません。
ももさんの提案をのんでぱんちゃんに子供を生ませた牧場主は、ぱんちゃんと同じ珍しい毛色の子馬が生まれたらことを喜んでいました。乗馬クラブなどに売れば、高い金額になります。
肥育牧場で、ぱんちゃんは産まれた我が子を一生懸命子育てしていました。しかし、温厚で優しいぱんちゃんは、他の気の強い馬から追い払われて、ごはんをなかなか食べることができません。
そのため、ぱんちゃんの子馬は痩せほそり、しばらくして亡くなってしまいました。
子馬を亡くしたパンちゃんは、生きる気力を失い、水も食べ物も何も口にしなくなり、痩せ細っていきました。
子馬を失った悲しみから毎日毎日涙を流し、その場に倒れ込み起き上がらなくなってしまったのです。
それを聞いたももさんが、肥育牧場のオーナーからパンちゃんを肉値で買い取り、ぱんちゃんはセサミにやってきました。
セサミに来てからも、ぱんちゃんは悲しみに暮れて何も食べようとしませんでした。生きることを、拒んでいるかのように。
当時ボランティアに来てくれていたみんなで、何を食べさせたら喜ぶかなぁと、笹の葉やいろいろな物を山からかき集めて、パンちゃんのために持ってきて励ましました。
また、同じエリアにいた小雪ちゃんやチビちゃんなどのかわいいポニーたちが、パンちゃんには亡くなった子馬のように見えていたのかもしれません。
みんなの思いや、かわいいポニーたちに励まされ、勇気づけられたパンちゃんは、次第にごはんを食べるようになり、少しずつ元気を取り戻していきました。
ぱんちゃんがセサミに来てから、約13年になります。
ももさんが辛く苦しかった時も、ずっと毎日そばで見守ってきたぱんちゃんです。
悲しみを乗り越えた優しいぱんちゃんの眼差しは、セサミを訪れる人をいつもあたたかく迎えてくれます。
ぱんちゃんは宝物。
またまだ元気でおってな。
MOMO