こんにちは。ジュマ・ネットの稲川です。きょうは我々のビジョンを自身はどのように見ているのか、というお話です。 ジュマ・ネットは、チッタゴン丘陵地帯の人権侵害防止・平和構築を目的に活動をはじめました。国家の中で抑圧されるエスニック・マイノリティが公正で安心して暮らせる社会を作ることは、21世紀の大きな課題です。人や資本、情報の移動のスピードと量が急速に増していく一方で、世界各地で民族や国籍に基づく差別・抑圧が発生しています。一般的にグローバル化が進んでいるといわれる現在では、民族や国籍を異にする人々が入り混じる傾向にあります。しかし、グローバリゼーションは単純な画一化をもたらすわけではないことが指摘さ れています。例えば文化研究者のフェザーストンによれば、グローバル化は他者との差異を確認するプロセスであると言われています。 異なる他者との接触が増えることで、むしろ自身のあり方と他者との違いに自覚的になり、自らの文化や価値観を強化させることさえ起こり得ます。自身のルーツや文化を大切にすることはもちろん自由である一方で、異なる記憶や慣習をもつ人々 が共存するという時代の流れにおいては、現実として共存へと壁を超えなければならないことは確か です。民族や国籍の意識が自然消滅していくことはなく、きっと残り続けるでしょう。その中で、重層的に異なるアイデンティティが意識され、市民として他者と現実的に共存できる道を探すことが、ジュマ・ネットが見ている未来です。私たちは、エスニック・マイノリティが公正な権利を享受して生きられる社会を目指すために活動しています。