現在、現地での聞き取りを続ける中で、改めて我々にできることはなんだろうと考えています。リーダーたちと話している中には、「近年はこの問題を国際社会に発信するチャンスも少なくなり、正直にいうと孤独を感じている」という声も聞かれました。課題が長期化する中で、きっとジュマ・ネットの役割も変化していると感じます。暫定的ではありますが、いくつかの重要なポイントが見えてきました。1. 情報を収集し、国際社会に発信し続けること和平協定から25年が経ち、平和への茨の道が続く中でも、国際社会が注目しつづけるよう、現地の状況や変化を訴え続けることが重要です。特に現地で聞かれた「孤独感や取り残される感覚」は、長期に課題が続く中で国際社会が離れていくことを意味しています。このために、これまでの日本語中心の発信から英語での発信、他にもSNSなど広報内容の変化などを検討しています。2. 不当な抑圧や人権侵害を受けている人々の声を代弁すること今も続く事件や人権侵害等に関しては、事実の把握と情報発信を続けていきます。3. 国際的な連携や取り決めに働きかけること長く、そして根深い課題を我々が単独で解決することはとても難しいです。だからこそ、第三国の組織や国際的な会合の機会を十分に活用し、声を上げていく必要性があります。各国のNGOや国際社会この地域の課題に目を向ける機会を作り出すことは、大きな役割です。その“繋ぎ目“としてできることはきっとあるはずです。4. ジュマの団結の糸口を探し続けること内部でも問題が深刻化する現在ですが、平和にはまず団結が不可欠です。互いに弱体化させている間は、平和は訪れません。これまでのアプローチにこだわりすぎず、世代を超え、市民的な価値観を共有できる人々との連携を模索していきます。5. 現地と関わり続けられる取り組みを持つこと 常に政治的なリスクが取り巻く以上、活動し続けられるバランスをとることも重要な視点です。対立でなく、前向きな提言ができるスタンスを見つけていくことも疎かにせず、機会を作り出します。このバランス感は、今後より重要性が増していくはずです。以上のような、柱となる考え方を重視しながら活動を組み立てていきます。
紛争 の付いた活動報告
こんばんは。ジュマ・ネットの稲川です。先月末からフィールドに来ており、現在はチッタゴン丘陵地帯におります。まさに今現場で考えていること、今だから感じられていることを素直に書いています。今回、市民リーダーや政治家の方などから話を聞く中で、和平協定から25年が経った中でも、その実現には希望が見出せない声が聞かれました。特に政府・軍の政治的影響力を握ろうとする駆け引きの中で、この地域がいかに翻弄されてきたかも強く感じました。(一部は和平協定の実施を今も希求する考えの方もおりますが、現状を見る限りやはり難易度は高いだろうと感じます。)そしてその駆け引きの余波は、いつも一般市民の負担や犠牲となっていることも今回痛感します。家にお邪魔すれば次から次に食事をご馳走してくれ、停電して暗闇になっても笑いが絶えない会話がいつまでも続く、そういった人々の顔が浮かびます。大きな政治の争いの中で、彼らの尊厳や洗濯が抑圧されている状況には、感情的に迫ってくるものもあります。その一方で、長期政権で地盤を固め続けている与党の状態、また年末年始に予定される総選挙、ジュマ内部での分裂と暴力の応酬を鑑みると、すぐに劇的な変化がやってくることも現実的ではありません。また、ただ闇雲に政府や軍を批判しても、思わぬ形で締め付けを強化してしまうことも考えられます。人権侵害や理不尽な抑圧には声をあげる一方で、暫時的・未完成でもいいので現状の硬直状態に刺激が加わり、少しでも前向き変化を及ぼせる現実的な提言と実行力が必要です。今回現場にいる中で浮かんできた方策を丁寧に戦略へと組み立てていきたいです。少し涼しい朝を迎えたチッタゴン丘陵地帯で、そんなことを考えています。
こんにちは。ジュマ・ネットの稲川です。きょうは我々のビジョンを自身はどのように見ているのか、というお話です。 ジュマ・ネットは、チッタゴン丘陵地帯の人権侵害防止・平和構築を目的に活動をはじめました。国家の中で抑圧されるエスニック・マイノリティが公正で安心して暮らせる社会を作ることは、21世紀の大きな課題です。人や資本、情報の移動のスピードと量が急速に増していく一方で、世界各地で民族や国籍に基づく差別・抑圧が発生しています。一般的にグローバル化が進んでいるといわれる現在では、民族や国籍を異にする人々が入り混じる傾向にあります。しかし、グローバリゼーションは単純な画一化をもたらすわけではないことが指摘さ れています。例えば文化研究者のフェザーストンによれば、グローバル化は他者との差異を確認するプロセスであると言われています。 異なる他者との接触が増えることで、むしろ自身のあり方と他者との違いに自覚的になり、自らの文化や価値観を強化させることさえ起こり得ます。自身のルーツや文化を大切にすることはもちろん自由である一方で、異なる記憶や慣習をもつ人々 が共存するという時代の流れにおいては、現実として共存へと壁を超えなければならないことは確か です。民族や国籍の意識が自然消滅していくことはなく、きっと残り続けるでしょう。その中で、重層的に異なるアイデンティティが意識され、市民として他者と現実的に共存できる道を探すことが、ジュマ・ネットが見ている未来です。私たちは、エスニック・マイノリティが公正な権利を享受して生きられる社会を目指すために活動しています。
みなさまこんにちは。ジュマ・ネット事務局長の稲川です。 新年度の本日、ジュマ・ネットもクラウドファンディングをスタートしました!本文でたくさんプロジェクトについて書かせていただきましたので、ここでは私がこめた思いを共有さ せてください。私が事務局長として正式に活動に参画して、今日で3年目になります。当初は感染症の関係で渡航 もままらないなかでのスタートなりました。その後、やがて状況も変わっていき、昨年は無事チッタゴ ン丘陵への訪問も再開することができました。そこであらためて感じたのは紛争や内紛の被害を受けているのは、何の罪もない市民であることで す。前回訪問時に行った聞き取り調査では、家族を失った方や土地を奪われてしまった方などさまざ までした。皆、とても丁寧に挨拶やお話をしてくれました。真面目でにこやかな雰囲気をまとった穏や かな人たちが抑圧され、苦しい状況に追い込まれていることに私も苦しくてたまりませんでした。それでも家族を失った悲しみや土地を奪われた理不尽さになんとか折り合いをつけながら、日常を 続けようと過ごしている方達がいます。ジュマ・ネットは、そうした方達と協働し、希望を生み出したい と思っています。少し大きく言ってしまえば、支援をする・されるという構図ではなく、一緒に変わっていける協力関係 を実現したいと思っています。すべての人が公正で安心して暮らせる社会をつくること。 ジュマ・ネットは、一歩ずつではありますが実現を目指して日々の活動に取り組んでいきます。