2022/11/22 21:00

地方のお寺の多くは災害時の避難所に指定されています。お寺や神社が数百年立っていることを考えると、昔の人は災害に強い土地を選んで、お寺や神社を立てていたんだと感じます。東日本大震災の際も、お寺や神社は比較的被害が少なく、その後の避難者の受け入れに活用されたと同宗派の和尚様から聞きました。

当地方も12年前に大水害にあいました。当時、大泰寺のある太田地区も多くの家が水没し、避難生活を余儀なくされた方が多くありました。太田地区の場合、直接水害で亡くなった方は多くありませんでしたが、過去帳を繰ってみると水害の後に多くの方が亡くなられております。やはり水害のショックや慣れない避難生活の中で受けた心身のストレスが原因で体に不調をきたした方が多いということだと思います。

久司吉五郎 様 提供

ですので、7年前に住職に就任してより、「災害に強い」「災害の時に役に立つお寺」というのは一つの目標でした。災害時に倒れて道を塞ぎそうな木を伐り、地域住民と協力しながら一か所しかなかったお寺に通じる車の通れる道を、もう一か所作り、まずは危ない時に必ず逃げてこられる体制を作りました。

山を切り開き、境内地の北側にも車が通れる道を建設。

また、二次避難場所として、地域住民が避難生活を送るということを考えたときに、当初お寺は快適に過ごせる場所ではありませんでした。エアコンは数台しかなく、布団も十分な数がありませんでした。

宿坊を開いたのは、こうした災害時の体制を充実させるためでもありました。今では、多くの人が大泰寺を利用して下さっているおかげで、各部屋にエアコンが備え付けられ、寝具も充実して参りました。宿泊で利用して頂いているため、ストックしてあるシーツやカバーも清潔に保たれ、いつでも使うことができます。

また、坐禅堂の座布団の半分は、禅の修行道場で使っているものと同じです。これは折りたたむと坐禅用の座布団になり、広げると寝るための布団に変わります。禅の合理性が生んだ発明品ですが、大量の布団を災害時のためにストックしておくのは難しいですが、普段は坐禅で災害時は布団として使えれば、保管場所にも困りません。

サウナの導入も入浴の代替施設となりうるというところが決め手になりました。災害時に困るのは、やはり水です。しかし、大泰寺の横を流れる太田川は冬でも水がなくなることはなく、サウナで温まることができれば、川で汗を流し、心身をリフレッシュさせることも可能です。

多くの人が大泰寺を利用して下さることで、大泰寺の避難所としての設備が整い、いざという時には、多くの人の命を救うかもしれません。あたなが楽しんだことが、知らないところで誰かの命を救っている。そんな循環を目指しています。