本クラウド・ファンディングのもう一つの目玉リターン企画が、the Five Books様のプラットフォームをお借りして実施するオンラインの読書会です。the Five Books様では、「”おそい”読書体験」をキーワードに、専門家のレクチャーを受けながら、参加者同士で対話を行い、講師からの問いかけを咀嚼しながら、一冊の古典を時間をかけてじっくりと読む、きわめて付加価値の高い読書会を運営されていらっしゃいます。
今回、現代世界文学の古典ともいえるアミタヴ・ゴーシュ the Hungry Tide『飢えた潮』を刊行するにあたり、リターンのひとつとして、以下の日程でオンライン読書会を企画しておりますので、ぜひ多くの皆様にご参加いただければと思います。
2023年5月13日(土)10:30-12:00
2023年5月20日(土)10:30-12:00
2023年5月27日(土)10:30-12:00
前置きが長くなりましたが、そのオンライン読書会第一回にゲスト講師として登場予定の内田力さんから、素敵な紹介メッセージを頂戴しましたので、早速ご紹介をさせていただきます。内田さんは、現在東洋大学国際共生社会研究センター研究助手/東京大学農学部共同研究員、もともと史学史の研究からスタートした内田さんですが、その後、環境史・メディア史・歴史教育などさまざまな方面に研究を展開されてきました。「歴史」と「環境」双方を、深くかつわかりやすく語ることのできる、本書にうってつけの貴重な研究者ということで、ご協力をお願いさせていただきました。
<内田さんメッセージ>
近年、環境問題といえばCO2排出量。しかし、環境は本来、もっとその土地土地に根差したもののはずです。たとえば、田んぼのあぜ道を歩くと、足音に反応した水中のオタマジャクシが順々に逃げていく、そんな各国各地の原風景の話が環境問題です。決してこぎれいな国際会議場で交わされる英語の討論が環境問題ではないのです。わたしはSDGsに関する研究センターに所属する研究者ですが、そんなことを『飢えた潮』の原稿を読んで思いました。
『飢えた潮』は、マングローブが生い茂る土地を舞台にした物語です。動物園・水族館でおなじみのトラやイルカが、本書では怖いほど生き生きとした表情をしています。作中、トラやイルカは人間の所作をじっと見つめ、非力な人間は立ちすくむのみ。それはあたかも人間のほうが展示されているかのように。
まずはマングローブ観光のつもりで気楽に読みはじめてみてください。
まったくインドのベンガル地方のことを知らなくても大丈夫。著者アミタヴ・ゴーシュは、おなじようにベンガルに不案内な海洋哺乳類学者ピヤを主人公に据えています。ピヤの目線を借りて読者はベンガルのマングローブ地帯に踏み込んでいくのです。アメリカ人のピヤのように現地語がわからなくても、ベンガルの環境の生命力は痛いほどに読み手に伝わってきます。そして、きっと沼地のような物語の魅力にはまり込むことでしょう。
国連のSDGs(持続可能な開発目標)やCOP27(気候変動枠組条約締約国会議)がマスコミをにぎわしていますが、グローバルな課題を語るうえで、土地に根差した自然環境に対する想像力が必要なのではないでしょうか。
本書は、そのために最適の書籍です。クラウドファンディングの成功を心から祈念しています。