【中村京蔵連載企画】連載５５回
｢三島由紀夫からフェードルそしてNINAGAWAマクベス｣
ーフェードル上演までの軌跡

小道具５

第２幕の冒頭、フェードルとエノーヌのやり取りは、

第１幕とはトーンがかなり違います。

自己嫌悪と原罪意識に苛まれいたフェードルは、

夫の逝去とイポリットの拒絶によって、逆に開き直ったような気持ちを吐露し、

エノーヌを困惑させます。で、私はフェードルに飲酒させて、

その溝を埋めようと思い、大河内さんの了解を得ました。

御殿物でよく使う黒塗り唐草蒔絵の酒器一式です。盃は赤の漆器です。

パノープが持って出る燭台は、｢眠り灯台｣と云って、

油皿灯芯の後ろの円い反射板に、眠っている人物が描かれているところから、

そう呼ばれています。