ドキュメンタリーには強い「ボイス力」が必要だとずっとおもっていました。そして、このプロジェクトを誰に語ってもらうと説得力があるのか…悩んでいました。
現地をちゃんと知っていて、登場人物にもあったことがあり、肌感覚できちんと伝えられる人。
思い返せば、私が西原村を訪れたのは、菅剛史氏がフジの番組「ゲームセンターCX」のチームで熊本を慰問する際、どこを訪れたらいいかと相談が来たことがきっかけでした。
益城町や南阿蘇村とならぶ、甚大な被害をうけた西原村は、知人一家が被災した報をメールでもらっていたこともあり、ものすごく気になっていました。
役場の震災復興推進室に電話をかけ、「慰問したいのですが、ご迷惑になりませんか?」と相談すると、「ぜひ来てください」と、不眠不休で疲れ切っているはずなのに、やさしく対応してくださいました。
7月、完成していた仮設住宅に向かいました。役場の吉井さんと村上さんが、無精ひげをのばした顔で同行してくださいました。吉井さんに「ご自宅はどうでしたか?」ときくと、「全壊です」と微笑みながらの答え。絶句しました。吉井さんは、それ以来仮設で暮らしておられます。
ナレーターは、そんな現地の実情を知るひとこそふさわしい。
当たり前のことに気づき、相談して即、無償で声の出演を快諾いただきました。
菅剛史氏は、15年にわたり「ゲームセンターCX(GCCX)」のナレーターをつとめている、大ベテラン。GCCXも有野課長とその周辺で起きることのドキュメントですが、その番組を菅氏の声が時に強く時にやさしく、目を閉じても現場の輪郭がまぶたの裏にうかびあがらせるように、リードしています。
菅氏は、大阪市出身。「VS嵐」などを数多くの番組を手掛ける名ディレクターでもあり、
プロデューサーでもあります。