長年、市民活動・コミュニティ活動の運営や支援をしてきて、感覚的ではありますがまあまあ確信的に思っていることがあります。それは、市民活動やコミュニティ活動は「小さくてもいい」ということです(もちろん大きくてもいい。中くらいでもいい)。売上やスタッフ数のようなサイズ(規模)は必ずしも成功や価値の最重要尺度ではありません。
この世の中に星の数ほどある市民活動・コミュニティ活動。市民や個人の発意に基づいて、様々なテーマで、様々なかたちで、いろいろな団体やプロジェクトが生まれて運営されていきます。1つ1つの団体を見ていくと「売上やメンバーが増えてすごい!」とか「うちは全然小さくてだめだ」とか、そんなふうに思ってしまったり、比較や評価をしてしまうこともあります。
でも、大きく俯瞰して地域や社会の目線で見ていくと、その全体は“生態系”のようなものであり、その中では「象が偉い」とか「カブトムシはだめだ」ということはありません。それぞれがそれぞれのかたちで意味あってそこに居る(在る)のです。
さらに踏み込んで言うと、「プロジェクトでいい」と思います。つまり、長く続くことが必ずしも是ではない。問題意識と発意で始まる市民活動・コミュニティ活動。そして、多くの場合にそこに「当事者性」があります。つまり、自分もその活動の顧客であり受益者でもあることが多いのです(子育ての悩みを分かち合いたくて子育てサークルをつくる。野球がどうしてもやりたくて野球チームをつくる)。
そして、問題意識や当事者性が減衰しているにも関わらず続けることが必ずしもハッピーなことかというと、そうでない場合も多々あります。自分の人生にとってあまり重要でなくなってきたら、思い切ってやめるのも選択肢です。そんな簡単にやめられないかもしれないけど、自分の当事者性も含めて必要で切実で楽しくてエネルギーが湧き出るからこその市民活動・コミュニティ活動だと思います。その気持ちやエネルギーを大切にしてほしいと思います。
最後にもう一つだけ要素を挙げると「個人主体・個人起点でいい」。多くの市民活動・コミュニティ活動を見ていると、やっぱり個人の(ときに複数人の)問題意識と発意からはじまっていて、そのなんとも言えないエネルギーが一番のリソース(経営資源)です。そのうごめくマグマのようなエネルギーが活動の原動力なのです。
もちろん組織・チームはあった方がいいけど、どこまでの組織をつくるのが良いかは団体によります。公の器(地域の資源)としての安定性・継続性・組織性を目指すことを求められることもあると思いますが、そうするかどうかも選んでいい。
しっかりと事業体・組織体として、必要に応じて法人格を有しながら、地域の器になっていくのだという志や方向性も素敵です。一方で、個人主体・個人起点で柔軟にエネルギッシュにやっていくのだという方向性だって素敵です。自戒も込めて、私たち市民活動・コミュニティ活動の支援者は、安定性・継続性・組織性を是として求めがちです。しかし、それを目指してもいいし、それを目指さなくてもいい。どちらにも価値があるのです。
“生態系”の視点に立ったとき、個人の問題意識と発意に基づいた市民活動・コミュニティ活動がイキイキとにょきにょき生えてきて、ときに枯れちゃうこともあるけど、常に必要なだけ社会や地域に活発に活動している状態というのは、1つのあり方だと思います。そう思うとき、市民活動・コミュニティ活動は「小さくていい」し、「プロジェクトでいい」し、「個人主体・個人起点でいい」。(もちろん大きくて、持続的で、組織的なのもいい)
そう思ったときに、まだまだやれそうなことはありませんか?この先に希望と可能性を感じませんか?「べき」や「期待」をうまく取り外しながら、心の底からやりたいことに耳を傾けてみる。ほっとけないこと。どうしてもやりたいこと。「これやれたら絶対いい」と心が言っているようなアイディア。楽しくてわくわくするもの。そんなものたちにもっとわがままに目を向けて耳を傾けて、発意と情熱で再起動・再構築していってください。きっと誰かが待っている。あなたのアクションを。あなたの活動を。
by 呉 哲煥
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