新しいことを始めようと思うと壁が立ち現れてくる。「その取り組みの目的は何ですか?」と問われる。既存のもので実体がある場合は、この問いはほとんど起こらない。新しいチャレンジで実体がまだないから、みんな理解をしたくてこの問いを投げてくる。
私はNPO・市民活動の運営者や社会起業家の相談に乗ったりメンタリングをすることがとても多いので、私もこの問いをたびたび発する。「それ何のためにやるの?」「誰のためになるの?」「取り組みの先のゴールイメージはありますか?」
問われることで言語化され、まわりへの説明もできるようになり、それによって手伝いやすくなったり応援しやすくなったりする。「問われて言語化する」という作業・プロセスは、ある意味「事業の根幹をつくっている」行為だと思う。
ただ、もう一つ目を向けなくてはならないことがある。それは挑戦者の心の内側にある「エンジン」の状態だ。目的や理由を問うとき、同時に挑戦者のエンジンに冷水をかけてしまっている可能性がある。見た目には情熱と意欲にあふれて元気に見えることもあるけど、内側のエンジンは冷却されていて、「やっぱり難しいのかなぁ」「やっぱりやめようかな」と自動的につぶやいているときがある。
世の中のイノベーティブなものや成功事例の経営判断は、往々にして多くの反対の中で起こっている。一般の常識的なものさしによって挑戦者の挑戦を止めていることは、世の中にあふれるほどに多々あると思う。数々の問いをくぐり抜けたマッチョな人しか挑戦できないという現実もあるような気がする。
だから、何か新しいことを始めようと思う人(挑戦者)は、目的や理由を聞かれることは折り込み済みの通過儀礼だと認識して、まわりは決して疑念を抱いたり反対したいわけではないと心得るといい。自分も一緒に手伝ったり応援したりするかもしれないから理解したいだけなのだ、と。
そして、目的や理由を聞かれるという風雨にさらされても負けない自分でありたい。自分の直観をもっと信じて、「論理的には説明できないけど、なんかこれだと思うんだよね」と自分の直観に光をあてる。四六時中・365日考えているあなただから、その直観は相当正しいことが多いと思う。問われることにひるまず、説明できないことなんて気にし過ぎず、自分の直観の味方になってあげてください。
まわりの仲間や支援者も、挑戦者の「心のエンジン」に薪を焚べる(くべる)ような関わりをしていきたい。正論を唱えて、良い助言をしたと酔っている場合ではない(自戒)。挑戦者には常に逆風が吹いていて、心のエンジンが冷却される世界に身を投じているのだと理解しておきたい。
目的より直観。目的は後からでも語れる。活動や挑戦のエネルギーは「直観」だ。直観で動きをつくって、そこから実体をつくることで、雪だるま式にものごとが転がっていく。そのエネルギーを作り出せなければ、何も生まれないし、何も始まらない。みんなが納得するロジックは並行してつくっていけばいい。それまでの間に心のエンジンが冷却されないように、みんなで「直観」の味方になってあげて薪を焚べてあげたい。
by CRファクトリー 呉 哲煥
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