ご覧のように2号機SUZUKI ガンマ125のシリンダーはすでにインテークポートとリードバルブを装着できるように加工が進んでいます。
本来、この新設したポートの下のあたりからクランクケースに入っていく吸気の流れを蓋してしまって、このポートから直接にシリンダーの元の掃気ポートに吸気を流してそのまま燃焼室へと流れていくようにします。
ここへ0.4気圧か場合によってはさらに過給状態にした吸気を電動スーパーチャージャーの力で押し込んでやろうということになります。
スーパーチャージャーはまだ購入していません。まずはエンジンはベンチテストしていく予定ですので、その間はiBの工場で使用している立派すぎるスーパチャージャー(エアコンプレッサー)で代用してやろうと考えているんです。
工場用のスクロールコンプレッサーですから、流量や圧としては十分なものが確保できるはずですので、レギュレーターなどで適宜圧を落とし、必要な流用を計測しながら実験をしていこうと思います。
そして、実験結果で得られた流量や圧を実現できる電動スーパーチャージャーを購入すれば、失敗がないだろうという考えなんです。
そして、まず最初はガソリンでこのエンジンを回してみます。ガソリンで期待する成果が出れば、それを水素化することについてはすでに1号機で経験済みなので、ここはあまり問題なく実施できるのではないか、と期待しています。
このガソリンでの実験で、いったいどのような性能を示してくれるのか、ここが我々としてもたいへんに不安もあり期待もしているところなんです。
クランクケースによる一次圧縮のような脈動のない圧を吸気にかけるだけで、スムーズに吸気してくれるものなのかどうか。ピストンバルブが閉じた時に吹き返しが大きすぎたりはしないのか。リードバルブがあるとはいえ、どのように機能するのか不安もあります。
一方で、一次圧縮のためのポンピングロスがなく、ある意味ターボエンジンのようにわずかに過給状態にあるエンジンが意外なほどの高性能を発揮する可能性だってあるのではないだろうか。
もし、そんなことになるとすれば、このエンジンは水素エンジンとして意義あるという以前に、今まで世界のどこにもなかった高性能2ストガソリンエンジンになってしまう可能性だって、、、、、。(笑)
今までiB(株)井上ボーリングでは製品開発のテーマとして常に「永遠」ということをテーマにやってきました。つまり超高耐久な製品を作ることに集中してきたのです。
ですから、iBの製品に「高出力」や「出力向上」などを謳ったものはありません。製品を売るということから行くと「速い」というのがオートバイの場合には一番簡単に訴えるポイントであるにもかかわらず、我々が目指すのは「刹那」ではなく「永遠」である、と主張して長持ちするエンジン部品の開発に注力してきたんです。これは今の時代にしっかりとマッチした開発方針であると自負しています。
でも、今回ばかりは、もしかしたら我々の一次圧縮しない今までにない2ストエンジンは、意外な高性能を発揮してしまうのではないか?
僕たちは今、まさにそのことを畏れまた同時に期待もして、胸躍らせている最中なんです。
筑波サーキットで行われるレースでも250ccの2ストマシンと400ccの4ストマシンが同じクラスに出場するレギュレーションになっているのはご存じの通りです。同排気量では明らかに2ストの方が速くて勝負にならないから、です。
今年オートバイの4社が開発を始めたという水素エンジンも、またTOYOTAがレースに出ている水素エンジン車もすべて4ストの水素エンジンです。ということは同排気量で比較すれば、我々の2スト水素バイクがすべてを上回る可能性だって十分にあるのではないでしょうか。
だから僕は、「TOYOTAに負けるなっ!」って開発陣にハッパをかけているんです。(笑)
解説4は
なぜ2ストオイルを減らせる可能性があるかについて解説する予定です。