12月3日(日)東京都写真美術館ホールで公開しました。
初回11:00の回と、2回目の15:30の回の上映終了後に、それぞれ、クリスティアン・クレーネス監督とフロリアン・ヴァイゲンザマー監督の舞台挨拶とQ&A、両監督と日本大学文理学部教授でドイツ映画研究者の渋谷哲也氏とのトークイベントが開催されました。どちらも、観客や渋谷氏の様々な質問により、多角的な視点で映画を紐解くイベントとなりました。下記、公式レポートとなります。
渋谷氏が、「本作が、少年だったダニエルの視線で語られた点で、『ホロコースト証言シリーズ』の過去2作とは異なる特徴があること」を指摘すると、監督たちは「少年ダニエルがあえて感情を殺し、冷静さを保ち続けたことで、44ヶ月間もの狂気の日々をくぐり抜けることができたこと。また、当時のダニエルが柔軟な少年であったことから、大人と比べて、周りの状況を受け入れ、また、ここから解放されたら必ずパレスチナに行くのだ、という希望を抱き続けることができた点にある」と答えました。
また、現在のパレスチナの状況についての質問に対し、監督たちは、「イスラエルの人々は数百年にわたり苦難を経験してきた。しかし、だからこそ、イスラエルの人々には、他者への寛容さも期待したい。今、政治面で色々と批判されてはいるが、イスラエルには二つのグループが存在しており、一つは、外国から見えやすい、しばしば批判の対象になる考え方の持ち主たちであり。それ意外のイスラエルの国民の半数は、政府とは異なる考え方を持ち、今の問題に対しても、寛容でリベラルな気持ちを抱いていること。ダニエルも寛容なイスラエル人であり、彼には個人的には許せないことがあるけれども、決して憎しみや復讐といった感情には囚われていない」と語りました。
最後に、監督たちは、「この映画は、自分たちが思う以上に現代的で、アクチュアルな作品となった。映画で世の中を変えることができる訳ではないが、この作品が、過去から現代を考えるための良い切っ掛けとなればと願っている。私たちは、時代の最後の証言者から過去を学ぶことができるし、そうしなければ、過去が未来になってしまう」と締めくくりました。
次回は6日(水)に大阪で開催されるプレミア上映&トークの様子をアップします。
写真は全てコピーライト:Masumi Kojima