12月10日(日) に、沖縄の那覇にある桜坂劇場で、『メンゲレと私』のプレミア上映会が開催されました。本編の上映前に、クリスティアン・クレーネス監督とフロリアン・ヴァイゲンザマー監督が短い挨拶を行い、ダニエル・ハノッホさんのお孫さんであるアンナさんからのメッセージを、スタッフが読み上げました。映画の上映後は、クレーネス監督とヴァイゲンザマー監督が登壇し、約1時間、Q&Aが行われました。
観客の入りは40名ほどで、動員はさほど多くありませんでしたが、10/7から生じたイスラエルの戦争以降、この映画の受け止められ方が変わったかどうか、アーカイブ映像の使い方について、ダニエルがなぜ英語で話しているのか、最後のパルチザンの歌についてなど、会場の観客から次々と質問が上がり、充実したトークイベントとなりました。
監督たちによると「映画の受け止められ方は、特に変わっていない。これは平和についての物語で、ダニエル自身も憎悪や復讐については語っていない。唯一言えることがあるとすれば、いまヨーロッパでイスラエルに批判的な言説をすると、“反ユダヤ主義”と思われてしまうため、ガザの現状について言及しない人が増えていること。また、アーカイブ映像は、それらを探し出し、数十時間も見続けるため、非常にきつい作業だが、大事なのはそれらが当時のプロパガンダであり、現代にも影響力があることを認識すること。そして映画で用いる際には、編集はせずそのまま使い、どのような映像なのかについて正しい資料も同時に示すようにしている」と答えました。
また、ダニエルが英語で語るのは「国際的な言葉であることと彼が英語を話せること、また、我々がヘブライ語を理解できないことなど、総合的な判断でそうなった。実際、ダニエルはマルチリンガルな人で、リトアニア語、ロシア語、ドイツ語、英語、ヘブライ語など数ヶ国語を操れる人物であり、とりわけ彼がドイツ語を理解できたことは、強制収容所で生き抜くのに役に立ったはず。映画の最後に使用した音楽は、イタリアの有名なパルチザンの歌で、ダニエルが撮影中によく口笛で吹いていたので使うことにした」とのことでした。
監督たちは、沖縄の観客は非常に熱心な人が多く、とてもよく映画を観ていると感心していました。