◆はじめに
さまざまな事情で自国を離れ、日本にやってきたアラブ人の多くが若い夫婦で、小さな子どもを連れて来ていたり、日本で生まれた子どもがいたりします。子どもたちは日本の学校に入り、日本の子どもと同じように日本語を使えるようになりますが、生活に追われ日本語を十分に学ぶことが出来ない親たちとのコミュニケーションは、アラビア語の口語です。けれどもアラビア語の読み書きをきちんと学ばずに成長すると、複雑な内容はアラビア語で表現できず、親とのコミュニケーションが行き詰まることになります。
親子の問題を離れても、アラブの子どもが日本で自信をもって暮らし、社会参加してゆくためには、アラビア語とそれを基盤にした母文化によって知的・精神的に支えられていることが大切です。それを支援するため、私は2021年に「アナーラ(アラブの子どものための母語教育協会)」を立ち上げ、日本で暮らすアラブの子どもがオンラインでアラビア語を学べるようにしました。
◆活動実績と次の目標
2021年4月、クラウドファンディングを初めて利用し、おかげさまで目標額を上回る活動資金を得ることが出来ました。
日本で暮らすアラブの子どもに無償の母語教育を - CAMPFIRE
当初、2人の先生が週当たり18時間(各学年、週に1時間×3回)の授業を、当面1年間継続できる資金を確保することを目標としていました。しかしクラウドファンディングで目標額を上回ったことに加え、友人・知人を中心に直接寄付をして下さる方もいて、おかげさまで発足時に集まった資金で2年近く授業を続けることが出来ました。
他方、当初1年生から6年生まで各1クラスを予定していたものの、1年生の申し込みが多いなか受講を断るのは忍びなく、すぐに1年生だけ2クラスになりました。したがって、2年目からは1年生と2年生がそれぞれ2クラスになりました。先生は2人では足らず、現在は5人体制となっています(2年あまりで、のべ8人の方に先生となって頂きいろいろ入れ替わりもありましたが、2023年春以降は現在の5人体制となっています)。2024年度はどうなるか分かりませんが、子どもの数を増やすこと自体は目標ではなく、力量の範囲で活動を継続させることを大切にしたいと思っています。そこで、現状の8クラス体制で今後一年間授業を継続するための資金確保を次の目標としたいと思います。
ズィヤード・アル=ファラージュ先生からのメッセージ↓
当面集める資金は1年分ですが、活動はもっと長く継続させるつもりです。少なくとも発足時に1年生だった子どもが6年生になるまでは活動を続ける義務があると思っています。活動を安定させるための公的な助成金の獲得や、そのために社会的信用を得られるNPO組織化等を目指しましたが、過去2年間のあいだには実現に至りませんでした。経理など慣れない業務に想定以上に時間がとられてしまったことが理由の一つですが、ようやく経験値もついて来ましたし、助けてくれる人も出て来ました。次の1年のうちに、活動の展開を図りたいと思います。
活動内容やこれまでの収支報告については、「アナーラ」のHPを参考にして頂ければと思います(本業の傍らの素人仕事によるHPのままなのが残念なのですが…)。
アラブの子どものための母語教育協会
上記サイトにもリンクがありますが、よろしければ『季刊アラブ』(2023年冬号)に掲載された拙文を読んで頂ければと思います。
『季刊アラブ』(2023年冬号)
【1万円以上のご支援に対するリターン(ハラブ石鹸)について】
2021年のクラウドファンディングのさいには、5000円以上の支援を下さった方に、「パレスチナ・オリーブ」が取り扱うザアタル(乾燥ハーブ)またはオリーブ石鹸をお送りしました。今回も同じものを、とも思ったのですが、アナーラに参加する子どもの大部分がシリアの子どもであることも考え、古くからの知人であるシリア人、ガザール・イサームさんの経営する(有)「クロスロードトレーディング」(2000年7月3日設立、化粧品製造販売業者)が取り扱うシリアの「ハラブ(アレッポ)石鹸」一択にさせて頂くことにしました。
※ハラブ石鹸は、同社が取り扱う、オリーブ90%、ローレル10%の石鹸です(保存料・着色料・防腐剤・香料等は使用されていません)。トルコに避難中のアレッポの石鹸職人によって作られ日本に輸入された石鹸に、オリジナルラベルを付けて発送いたします。
ザアタルも好評でしたので多少残念ですが、丸い瓶入りで送料がかさんでしまうこともあり、皆さまからのご支援を少しでも多く「活動そのもの」に使わせて頂くための判断としました。10,000円以上の支援に対してに限らせて頂くのも同様の理由ですので、ご理解頂ければと思います。
そのほかのリターンについては、寄付金額ごとの項目をご参照ください。
◆スケジュール
「アナーラ」の活動は継続中です。7月末から夏休みに入りましたが、8月21日から授業を再開しています。
これまでの活動状況をふまえたスケジュールは以下のようになると思います。
10月 各学年の教科書の「上巻」の学習が終わり「下巻」に移るため、教科書の印刷・製本・発送作業
11月 クラウドファンディング終了
12月 リターン商品の発送
2024年3月上旬 学習発表会
3月10日頃~ ラマダーンとラマダーン明けのお祭りで、お休み
休み中に新学年の募集・登録、保護者説明会、新年度の教科書の印刷・製本・発送作業
2023年度の活動報告リーフ作成、紙媒体のほか、リターンとしてもPDFでメール送付
4月半ば~ 新年度の授業スタート
◆資金の使途
目標額 1,940,000円 (シリア人の先生5人の人件費 178万円+Campfireに支払う手数料 16万円)
とさせて頂きました。前回同様、リターンその他の経費は、友人や知人などからの直接の寄付で賄う計算です。
上記目標額は、2021年のクラウドファンディング目標額1,920,000円と大差ありませんが、内容はかなり異なります。
・前回は先生2人、6クラス、時間当たり2,000円、年48週と想定していました。
・今回は先生5人、8クラス、時間当たり1,500円、年44週の計算です。
(謝金額は、発足直後に先生ご自身からの申し出により話し合った結果、出来るだけ長く授業を継続できるよう1500円に変更しました。前回の資金が当初計画より長持ちした理由の一つでもあります)。ラマダーン中は必ず休みますので、一か月分減らしています。夏休みと短い冬休みもありますが、クラスが増える可能性や、いずれにしても他の費用(源泉徴収額、教科書印刷・送付代、オンライン教材費等)はここに計上していませんので、もし余ればこれらに一部充てます。
これまでの収支内容に御関心ある方は、HP上の収支報告をご覧下さい。
アナーラHP 収支報告ページ
◆最後に
この2年間、何とか活動を続けて来ましたが、事務作業その他の負担は想定以上でした。これは私の想定が甘かっただけで、こうした活動を続けるためには当然必要な仕事です。手伝ってくれる人はいても、活動を支える仕事の根幹は立ち上げ人である私以外にやれる人はいません。逃げ出すわけには行きません。皆様に活動資金の支援をお願いする一方で、この責任を再認識しています。
また、このプロジェクト発足のきっかけとなったズィヤード・アル=ファッラージュ先生の熱意と努力には、本当に助けられています。ズィヤード先生の子どもとの接し方、アラビア語の教え方は本当に素晴らしく、見ていても楽しい授業です。ズィヤード先生が中心となり、他の先生方へのアドバイスも行って頂いています。
子どもは日々成長します。資金がないからという理由で母語学習をストップさせるわけには行きません。
アナーラ発足当時4年生だった子どもは、来年は中学生になります。今のところアナーラには小学生向けのクラスしかありませんが、中学生になったらどうするのかも考える必要が出てくるかもしれません。…… いろいろ考えると大変なことだと改めて思うわけですが、無理をせずに継続するという原則に立ち返り、やるべきことに向き合い続けたいと思います。
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
最新の活動報告
もっと見る中国新聞の取材を受けました
2023/10/07 17:0710月7日、このクラウドファンディング・キャンペーンについて、中国新聞の取材を受けました。「アナーラ」発足時に取材して下さった同じ記者さんです。発足時の生徒さんは19人だったのに現在は51名になっていること、先生も2人から5人になっていることなどに感心して頂き、アナーラの活動が「地域で孤立しがちなマイノリティの子どもたちの居場所にもなっている」という点に焦点を当ててもらうことになりました。オンラインでの授業光景も取材して頂き、終わってから生徒さんにインタビュー。生徒さんが日本語で話しているのを聴いたのは初めてだったので、逆に新鮮でした。どんな記事になるのか、楽しみにしています。 もっと見る
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