久しぶりの活動報告になります。無事に台湾での展示を終えて帰ってきました。
いろんなことがあったけれど、ひとつだけお話ししたいと思います。
台湾での素敵な出会いの話。
2回目の土曜日の夜、ひとりの女の子が見にきてくれた。
ひと通り見終わったあと、会場に並んだ絵のどれかを買おうと思っているのだと教えてくれた。
キュレーターのスタッフさんと、その友達の女の子がその場にいて、4人でしばらく話をした。
自分にはボーイフレンドがいること。
彼は今アメリカに住んでいること。
原画をサプライズで贈ってびっくりさせたいこと。
いつもLINEでのやりとりに、お互い大好きなジーモのスタンプを使っていること。
特にお気に入りなのはこのスタンプだということ。
見せてくれたLINEのトーク画面には本当にぼくのスタンプが並んでいて、ぼくは別次元の世界を見ているような気持ちになった。
ぼくが作った最初のLINEスタンプには言葉が入っていない。
でもその言葉のない絵が誰かのコミュニケーションとして使われている。
新たな言語を作るような恐ろしさと嬉しさとが混じり合った感覚だった。
会話が一段落したところで、彼女は「あの絵に決めました」と言って指差した。
それは、スタンプにもなっているこの絵だった。
ぼくにとっても思い入れのある作品だった。
でも、この人の手に、この人の想う人に渡ることを思うと、なぜか感謝の気持ちが溢れてきた。
こんな経験をさせてもらっていいんだろうか。いいんだきっと。
そんなことをぐるぐると考えた。
日本で描いた絵が、台湾でぼくの元を離れ、アメリカに行くのだ。
このためだったんだ。このためにぼくはここで展示をしているんだ。
本当にこれでいいのか、クラウドファンディングしてまですることだったのか、そんなふわふわした気持ちが確かな手応えのある場所に着地するような安心感に包まれていた。
この絵は山崎まさよしの曲のタイトルから取ったんだよ。
失恋の曲だけれどこの絵にはその意味は込めてないよ。
雨も雲も街も風も窓も光も全部君だったっていう良い曲だよ。
そのことを身振り手振りも交えて伝えた。
あとで分かったことだけれど、絵を買ったことは彼には知れてしまって、残念ながらサプライズで贈ることはできなかったらしい。でもとても喜んでたよと教えてくれた。
いつか彼にも会える日がくるといいなと思う。
これ以外にもたくさんの出会いがあった。
それでもこの出会いが、ぼくの胸に何ひとつ引っかかるものもモヤモヤも残さずに展示を終えられる理由になっている。
このためだったんだ。そう思える瞬間が人生にどれくらいあるだろう。
今までの努力も、夜更かしも、妥協も、遠回りも、このためだったんだ。