皆様、多くのご支援ありがとうございます。
今回も折り紙作家山本が、『時折2024』に収録されている作品の紹介をしていきます!
【時折2024 作品紹介】では、それぞれの月のテーマとなる12の作品について一つずつご紹介したいと思います。
※作品写真は本番の紙で折る前の「試作」状態のものを含みます。商品に掲載されるものは紙質や色など、より見栄えのする状態になっているかと思いますのでご期待くださいませ。
今回の特集:5月掲載分「コイ」
5月のイベント、端午の節句から引っ張ってきた題材です。
今回はこの作品についてご紹介していきます。
僕は創作をする際に、まずは題材のリサーチを行います。
題材の画像を収集し、必要があれば折り紙風にデフォルメした絵を描いてイメージを膨らませていきます。
また、同じテーマの折り紙作品があれば、それを研究することも必ず行います。効果的なアプローチを先例から学んだり、浮かんだアイデアが誰かに試されていないかを確かめたりします。
ただし今回の「コイ」については、調べるまでもなく、他の作家による優れた先例を知っていました。
それは中村楓さんの作品です。
https://x.com/kaede9693/status/1247841029606105090?s=46&t=AIBBou6Og1qviizVJ8nw9A
彼のコイは、数年前のイベントで本人から直接講習を受けました。ヒレやシルエットが無理なく折り出されるのに感動した記憶があります。
その完璧なプロポーションは、僕が普段用いることが多い「22.5度系」という構造に沿って作られたものです。
今回は創作時間が限られていたので、この作品と同じアプローチを取ることは避けました。
そこで画策したのが、普段用いない構造を使うことです。
それが「蛇腹」です。
蛇腹構造とは
蛇腹は、紙を縦横に等分し、その線に従って折り目をつけていく手法です。
細長いカドを気軽に作りだせるため、創作初心者でもアプローチしやすい手法でもあります。
熟達すれば表現の幅も広く、今井幸太さんなどの優れた「蛇腹使い」もいらっしゃいます。
https://www.flickr.com/photos/119910244@N05/
限られた時間で、普段使わない手法を使うことへの迷いは当然ありましたが、「22.5度系」で取り組むよりは活路が見出せそうな予感がありました。
このまま突き進んでみることに決めました。
こちらが、完成したコイの展開図です。
縦横を20等分にした線に収まり、ある程度の折りやすさを確保できました。
特徴的な背びれも狙った位置に配置できており、コイっぽいシルエットが達成できたかと思います。
蛇腹構造の作品がラインナップに加わることで、アクセントのような効果を生み出せたとも思っています。
優れた先例とは異なった手法でアプローチすることで、最終的に『時折』にふさわしい作品に繋がったのは結果オーライでした。
それでは、また次回の作品紹介で!
文:山本大雅