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メランコリー(melancholie):古代ギリシア語の、黒いを意味する「μέλας(melas)」と、胆汁を意味する「χολή(kholé)」を合わせた言葉。憂鬱。
メルヒェン(Märchen):15世紀のドイツにおいて、詩の文体をなす短い物語メーレ(Mär)に、小さいを意味する語尾「chen」を付け加えた言葉。おとぎ話。
私は、憂鬱です。
つまり、私は黒い胆汁です。
黒い胆汁は、銭湯のカランさながら、私の青い口先と赤い指先から流れ落ちます。
青のカランは冷たい。
赤のカランは熱い。
それらを湯船に注ぎ込みます。
黒い胆汁がなみなみと、そしてちょうどよい湯加減になったところで突如、底の抜けた丸木舟が湯船に現れ、3人の船頭が顔を覗かせます。
・・・丸木舟は、海原を行く
・・・丸木舟は、山に登る
・・・丸木舟は、沈みこむ
予め内包された名もなき無数のヴァリアント(variant:変形)から目に留まった具材を摘み出し、原型をこしらえて名前を与えます。すると、小さいメーレ(Mär)は訥々と語り始め、人々は思いを馳せ窓の向こうを見やります。
私の名前はメルヒェンです。
窓のむこうの物語
Over the Windows
丸木舟 Banca
・・・よって、陸を行く底の抜けた丸木舟は、乗り手の同調具合が最重要視される。この特徴ある丸木舟を使うのは、マ族・ママ族・マンマ族の3部族。丸木舟はそれぞれ、マドゥコ(ひとりの乗り物)、ママドゥコ(ふたりの乗り物)、マンマドゥコ(みんなの乗り物)と呼ばれる。各部族とも、舟底の穴を塞ぐために用いた詰めもの「*根のない木」の神話を信仰の対象とする。
*根のない木;丸木舟とは異なった種類の木。現存せず。
使用材料:椿・柚・檜・鉄錆・瀝青・栗渋・鬼胡桃油・真鍮釘