金沢大学 人間社会研究域准教授の原佑介さんから、応援メッセージを頂きました。
姜徳相先生の記念碑的名著『関東大震災』を読んで私がもっとも胸をうたれたのは、最後のページで腹からしぼり出したかのように吐露された次の言葉だった。「著者の父、姜永元は思えばなんと暗い星のみえない谷間の世代であったことか、ものを言わんとして悲しみと怒りで言葉にならない、ただ涙だけが最大の表現能力を発揮したとよく語ってくれた」。
半世紀を優に超える姜徳相先生の研究活動は、「暗い星のみえない」時代を生きた在日朝鮮人たちの「言葉にならない」思いにつねに支えられていた。先生の代表作である本書は、親たちがついにみることのできなかった「星」を死に物狂いで探し求めた一人の人間の魂の記録である。この本は、帝国日本によって虐げられ、殺された人びとの「悲しみと怒り」を受け継ぎ、かれらの「涙」を涙でもって受けとって書かれた。
私たちは、関東大震災時の朝鮮人虐殺という歴史的事実を知るためだけに本書を読むのではない。虐殺された人びとの、そして姜徳相先生の「悲しみと怒り」が、今何を意味するのか。そのことを考えるためにこそ、本書を読まなければならないのである。」