私たちドナーリンク・ジャパンは、提供精子や提供卵子で生まれた人や精子や卵子のドナーを支援することを目的に2022年12月に設立されました。
今から20年ほど前、研究者になり立てだった仙波由加里と、提供精子を使った人工授精(AID)で生まれた石塚幸子が出会いました。最初は研究や調査を通しての関係でしたが、2人がプライベートでも親しくなったことが、そもそものはじまりです。
海外には、提供精子や卵子で生まれた人やドナーの情報登録のシステムがあります。そして、それらの情報を通して、生まれた人とドナー、または同じドナーから生まれた異父母きょうだいが出会えることがあります。そんな情報登録システムが日本にもできたらいいねと、2人は10年以上も前からよく話していました。
実際にその必要性について石塚は政治家たちに陳述したり、仙波は研究を通して社会に訴えたりしてきました。しかし、なかなか日本では実現に至りません。
2022年DLJの立ち上げ準備を始めた頃の仙波と石塚
そこで、自分たちでそうした組織をたちあげようと、2人は2022年に入り、本格的に準備をはじめました。そして、この問題の専門家たちの協力も得て、2022年12月に発足したのがドナーリンク・ジャパンです。
ドナーリンク・ジャパンのロゴは、Donor Link Japanの頭文字である「D」「L」「J」がゆるやかにつながり、一つのマークを描いています。
この団体が目指している、人と人を結び付け、提供精子や提供卵子で生まれた人が自らの提供者や異父母きょうだい、そして同じ経験を持つ仲間とつながることができますように・・・そんな願いを込めてデザインされたロゴです。
ドナーリンク・ジャパンは、まず多くの提供精子や提供卵子で生まれた人やドナーがつながれるように支援していきます。そして生まれた人たちの出自を知る権利の重要性を日本の多くの人にも知ってもらえるよう、活動を展開しています。
クラウドファンディングで得られた資金は、主に、今は生まれた方には有料で行っているDNAマーカー検査費を無料とし、生まれた方やドナーの方たちへの専門家による社会的・心理的支援に充てていく予定です。
また、AIDで生まれた方の出自を知る権利の重要性を日本の多くの人に知ってもらうためのイベント開催や、出版活動に使わせていただきたいと思っています。
2023年4月11日、厚生労働省の記者クラブで、ドナーリンク・ジャパンの設立記者会見を行いました。
「出自を知る権利」は大事な人権です
日本では1949年に国内初のAID児が誕生しました。それ以降もAID児は誕生してきましたが、その実数は把握されていません。ただ、1998年より日本産科婦人科学会が、学会に登録している医療施設について統計を取るようになりました。それが下に示す数字です。今でも1年に100人前後のAID児が誕生しています。
日本産科婦人科学会のデータから
日本では、最初のAIDの実施以来、提供精子や提供卵子のドナーは匿名であることを原則に実施されてきました。そのため生まれた人は、自身の出自について知ることができません。
生まれた人の中には、遺伝病などの医学的なリスクや、将来のパートナーとの血縁関係の有無などに不安を感じ、提供者情報を知りたいと思う人がいます。
また、ドナーも自分の提供で何人子どもが生まれたのか、生まれた子がどうしているのを知ることはできません。自分の家系に遺伝的な病気があっても、それを生まれた人に伝えることもできません。
さらに自分のパートナーとの間に生まれた子が、自身の提供で生まれた子と出会い、親しい関係になることも皆無とはいえません。
UnsplashのBen Wicksが撮影した写真
国際的にも提供精子や提供卵子で生まれた人たちの出自を知る権利が、重要な人権と捉えられるようになってきています。国連は1989年に『子どもの権利に関する条約』(通称:子どもの権利条約)を採択し、その条約の7条には「子はできる限りその父母を知る権利を有する」とあります。日本もその条約に1994年に批准しています。
子どもと先生の広場:日本ユニセフ協会 (unicef.or.jp)
海外では1990年頃より、精子提供で生まれた人たちの間から、ドナーの情報を提供してほしいという声があがりはじめました。そして、法律で出自を知る権利(ドナー情報を得られる権利)を保障するところも出てきています。
人生はたくさんのピースで構成されています。
提供精子・卵子提供で生まれた人の多くはそのピースの一部がわからないままです。
日本では、提供精子や提供卵子で生まれた人の出自を知る権利が重要性な人権であることが、まだ十分に認知されていません。また、残念ながら、提供精子や提供卵子で形成された親子に対する偏見や差別も存在します。
生まれた人の中には自分の出生を肯定的に受けとめられない人もいます。この医療で生まれた人が、きちんと自分について自信をもって人生を歩めるようになるために、日本社会の多くの人にこの問題を知ってもらい、出自を知るとはどういうことなのかを知ってもらう必要があります。
このプロジェクトで実現したいこと
このプロジェクトをきっかけに、できるだけ多くの生まれた方やドナーの方にドナーリンク・ジャパンに登録していただければと思います。そのために、クラウドファンディングで得た資金で、まず当事者の登録の経済的負担を減らしたいと思っています。
今は生まれた人にはDNAマーカーリンク検査費の実費(本人検査費1万円、母親の検査費1万円)をご負担いただいていますが、これを一定期間、無償にしたいと考えています。
ドナーリンク・ジャパンで実際に使用する検査キットです
(株式会社OVUSに検査依頼しています)
また、生まれた方やドナーの方には、登録後、必要に応じて社会的・心理的支援として、有償でのカウンセリングを用意していますが、これについても一定期間、無償で提供できるようにしたいと考えています。
さらに、このプロジェクトを通して、日本のたくさんの人に、提供精子や提供卵子で生まれた人たちや、提供の経験を持つドナーの方のことを知ってもらいたいと思います。ですが、まだ日本人で、公の場で自分自身の経験や思いを語れる生まれた人やドナーの方は多くはありません。
UnsplashのAmy Tranが撮影した写真
そこで、海外の当事者を招いての講演会や、当事者同士のクローズドの交流会なども開催したいと思っています。
また海外の記事や動画を選び、許可を得て、日本語に翻訳して、HPで発信できればと思います。さらに、それらの内容に、可能であれば日本の当事者の声も加え、書籍にまとめて、出版したいと思っています。
こうしたことを通して、日本社会の多くの人々に生まれた人やドナーのことに関心を持っていただければと思います。
そして最終的には、このプロジェクトをきっかけに、とくに生まれた人たちがエンパワーされることを期待します。そして彼ら自身が社会に向けて、自分たちの思いや考えを発言できるようになることを願います。
UnsplashのClay Banksが撮影した写真
スケジュール
●2024年2月29日
クラウドファンディング終了
●2024年4月~2026年3月末
DNAマーカーリンク検査、及び当事者カウンセリングを無償とする
●2024年4月
海外の当事者情報(特に動画)収集・発信のためのチームの立ち上げ
書籍出版のための執筆者を決める
●2024年5月
海外のAIDで生まれた人にオンライン交流会への参加を依頼
●2024年6月
選定した海外の当事者情報の翻訳を業者に依頼(計3本)
海外のAIDで生まれた人を招いてのオンライン交流会の告知開始
●2024年7月
オンライン当事者交流会
●2024年8月
海外の当事者動画を翻訳したものの公開準備
●2024年10月
書籍作成チームのたちあげ
●2025年1月
海外の当事者動画を当法人のHPで公開開始
●25年12月
書籍の発行
資金の使い道
【生まれた人・ドナーへの支援】
・DNAマーカー検査費(1万円)
40人分 40万円
・生まれた人・ドナーへの専門家
による社会・心理支援
(1万円/1回)x 40人 40万円
【多くの人にこの問題を知ってもらうための活動】
・翻訳料、HPへの掲載作業費等
動画1本あたり25万円x3本 計75万円
・海外の人を招いての交流会
海外からの当事者2回 計4名謝金
(3万円/人x4名)計約12万円
通訳料:20000円/hr. x 8時間 計16万円
・出版費用:70万円
合計 253万円
最後に
ドナーリンク・ジャパンの活動は、長く継続することが重要です。
そうすれば、登録する人も増え、ドナーや同じドナーから生まれた人を見つける人も現れてきます。
海外のドナーリンクを行ってきたところでも、はじめはなかなか登録者が集まらなかったといいます。
ですから、多くの皆様に、生まれた人やドナーのことを知ってもらい、「出自を知る権利」の重要性をご理解いただき、
私たちの活動が長く継続できるよう、支援していただくことが不可欠です。
このプロジェクトを通して、日本の提供精子や提供卵子で生まれた人やその家族への偏見や差別が減ることを願います。
また近い将来、生まれた人も、自分の出生を肯定的に受け止め、自信をもって人生を歩める社会が実現してほしいです。
どうぞ皆様、私たちをご支援ください。
Unsplashのluana-azevedoが撮影した写真
<募集方式について>
本プロジェクトはAll-in方式で実施します。目標金額に満たない場合も、計画を実行し、リターンをお届けします。
私たちドナーリンクジャパンのメンバーです。
最新の活動報告
もっと見る武藤香織さんから、大きなご支援と暖かいメッセージをいただきました
2024/03/27 14:53提供型生殖補助医療で生まれた人が、適切な配慮のもとで遺伝的な親の存在を知らされ、多少なりともその像を結べるように支援されることは、その後の人生を生き抜くチカラになると思います。ドナー・リンク・ジャパンの設立は、提供型生殖補助医療のコミュニティに温もりをもたらすだけでなく、私たちの日常に埋め込まれた遺伝に関する考えや語り口をも変えてくれるんじゃないかなと期待しています。 (武藤香織)武藤さん、ありがとうございました。 私たちの活動が、少しでも多くの当事者の方の役に立ち、「出自を知る権利」などに対する社会の意識を変える一助となればと思います。写真の猫ちゃんは、私の友人から今は武藤さんのお宅に引き取られ、幸せに暮らしているサンガ君とパチャラ君のきょうだいです。2匹ともきっと大きくなったでしょうね。 (仙波) もっと見る
あと2時間でクラウドファンディングが終了をむかえます
2024/02/29 22:07皆様、2月1日からスタートしたクラウドファンディングがあと2時間で終了時間をむかえます。この1か月間、長かったような短かったような...でも今、走り切った達成感を感じています。2日前に目標を達成しましたが、その後もご支援してくださる方が現れて、現在までに157名の方にご支援いただきました。本当にありがとうございました!これからはこのご支援金をもとに、さらに活動を充実させたいと思っています。どうぞ、皆様、引き続き応援してください。3月13日に、ニュージーランドのドナーの方と、彼の精子提供で生まれた方をお呼びして対談会を開催する旨、お知らせしましたが、当日の開催時間が変更になりました。午前11時時からのスタートとなります。でも、3月26日までアーカイブでご視聴いただけますので、是非多くの人にご参加いただければと思います。そして、当事者の思いや考えをお聞きして、ドナーの匿名性や生まれた人の出自の問題を一緒に考えていければと思います。クラウドファンディングにご支援いただいた方には、数日以内に参加無料コードと一緒に詳細をお知らせします。しばらくお待ちください。本当に一か月間、ありがとうございました。(仙波由加里) もっと見る
目標達成から一夜明けて
2024/02/28 23:43昨日の目標の達成をご報告して、たくさんの方から「おめでとう」のメッセージをいただきました。ありがとうございました。一夜明けた今日は、オーストラリアのDonor Conceived AustraliaのディレクターをされているAimeeさんとオンラインで話をしました。彼女も精子提供で生まれた方のお一人で、出生の事実を知った経験についてもお話くださって、色々考えさせられました。いつか、日本の皆さんの前で話してもいいと言ってくださっています。Donor Conception Australiaとドナーリンク・ジャパンは、活動のコンセプトが似ているので、これから色々と一緒に活動できればいいなと思います。そして夜は、柘植あづみさんの科研費でのセミナーのお手伝い。講師のイギリスのマリリン・クロショーさんに画面越しですが久しぶりにお会いできました。私の尊敬している素敵な女性の一人です。セミナーには100名以上の方が参加されていて、大盛況。イギリスの状況についてあらためて勉強させてもらいました。それにしても1時間半、お一人で、日英の同時・逐次通訳をされた松村さん、すごすぎです。そして、セミナーが終わったら、オーストラリアのダミアン・アダムスさんからメールが届いていました。彼は、今回のドナーリンク・ジャパンのクラウドファンディングのことを、海外のたくさんの仲間に拡散してくれた方です。その彼が、あるオーストラリアのドナーがドナーリンク・ジャパンにコンタクトを取りたがっていると連絡をくれました。オーストラリア・ヴィクトリア州で過去に匿名で精子提供したけれど、40年経ってから、DNA検査で自分のことが生まれた人に特定されるという経験をした人です。前に海外のオンライン記事で彼のことを読んだことがあり、今度、その方にもオンラインでお目にかかれるかもしれません。ドナーリンク・ジャパンの活動をはじめて、ますます世界がつながっているのを感じます。ドナーリンク・ジャパンではこうした海外の方もいずれお呼びして、多くの皆様とこうした方々の経験を共有させていただけたらと思っています。クラウドファンディングも成功したので、新年度、4月からイベントをいくつか企画したいと思っています。是非、みなさんもご参加ください。会員になられると、1年間、無料でこうしたイベントに参加できます。(非会員の方には、参加費の負担をお願いしています。今年度はすでに4回イベントを開催し、3月13日にもひとつ企画があります)。これからもドナーリンク・ジャパンを応援してください。よろしくお願いします。(写真:ひな祭り近くになると、我が家の近所の神社の階段に飾られるたくさんの雛人形たち。これは去年撮影したものですが、今年も見にいきます) もっと見る
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