「コッコーッ」と、私の足音を待つ
愛おしい娘たち(鶏たち)との生活。
生命を預かるお仕事だから、
当然「雨が降ろうが槍が降ろうが」お休みの日は一日もない。
でも、待ったなしでお腹を空かせて駆け寄ってくる
彼女たちのぬくもりを感じれば、雨の日の世話なんて、なんてことはないのだ。
ただ、もう一つの戦場である「開拓生活」となると、話は別だ。
田舎暮らしの理想として「晴耕雨読」なんて言葉をよく耳にするけれど、
現実はそんなに甘くない。

容赦なく降り注ぐ雨は、無情にも作業の歩みを止める。
「あと少しで終わったのに」「なんで今、降るんだよ……」
足元はぬかるみ、予定通りの進捗が出せない焦りから、
灰色の空を見上げては思わず大きなため息がこぼれる。
圧倒的な物量で世界を包み込む大空の下では、人間なんてあまりにも無力なものだ。
そして焦りが頂点に達すると、人は時としておかしな行動に出る。
「服が濡れて重くなるから厄介なんだ。なら、最初から脱げばいい!」
ちっぽけなプライドもかなぐり捨て、パンツ一枚で泥だらけの作業を強行!
……結果は、言うまでもない。
悠久の大自然の冷たい風と雨の前に、人間の「あがき」など一瞬で打ち砕かれる。
ガタガタと震え上がり、すごすごと道具を片付ける羽目に。
「おまえはバカか!」一人で自分に激しくツッコミを入れる。
でも、どうせ汗と泥まみれになったのだ。
「こうなったら全部洗い流してやる!」と開き直り、
雨空の下でそのまま「天然シャワー」を浴びることにした。
すると不思議なもので、容赦なく降り注いでいたはずの雨が、
いつの間にか心の中に溜まっていた
「焦り」や「もやもや」まで、きれいに洗い流してくれたのだ。
冷たい雨に打たれてすっかり正気に戻ると、ふと思う。
この途方もなく巨大な大自然の中で、
自分は「こうして生かされているんだな」と。
思い通りにいかないことばかりだけれど、
この大自然の恵みと厳しさがあってこそ、娘たちも私も生きていける。
われながら、つくづく不器用で、泥まみれで、空回りばかりのちっぽけなやつだ。
でも、明日もきっと、雨が上がれば
愛する娘たちの元気な声に背中を押され、
懲りずに泥だらけの開拓へ向かうのだろう。
圧倒的な大自然の力に、人間は決して抗えない。
けれど、転んでも立ち上がる
「生きる力」を与えてくれるのも、
この崇高で超えられない大自然なのだ。
雨音の向こうから、すべてを包み込む神さまの声が聞こえた気がした。
「藤田守よ、おまえは生きてるぞ!生命(いのち)をもっと輝かせろ!前を見ろ!」
……よーし、やってやろうじゃないの!
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