本日は「五島の伝説・昔ばなし」に載っている民話を一部紹介します。
五島の中でも北に位置する中通島(なかどおり)の青方(あおかた)という地域の民話になります。
青方の浅子(あさご)には神様が祀られていますが人々は俗に、この神様のことを浅子さまと尊称します。
祭祀の場所は、道をへだてて川があり、その向こうには田んぼがあります。その田圃で仕事をしていると、雨が降り出すことがしばしばあります。大雨になるとたちまち増水してしまい橋がなく、飛び石を伝ってわたるしか変える方法がなくなるため人々は苦労していました。
ところが、雨が降り出すと時折どこからともなく「早う帰れよ、水が出るぞー」と叫ぶ声がするのです。それを聞いた人々は「そら、早う帰ろ」と急いで仕事をやめて川を渡り帰路に就くのですが、この叫び声が聞こえた日は必ず大雨となり、川が増水するのでした。
人々は「ああ、早う帰れてよかった」と無事に帰れたことを喜ぶと同時に「誰が教えてくれたのだろうか」と村人に尋ねても誰一人として知らせた人はいませんでした。
このようなことが何度もあることから誰ということなく「きっと浅子さまのおかげにちがいない」ということになり、人々は神様の守護に感謝し、今日もなお、この「浅子さま」を手厚く祀っています。