私は2007年ごろ家業を継ぐべく地元に戻って来ました。子供のころから変わらないあづま荘は「実家の延長」のような存在でしたが、いざ働くと、館内の老朽化が目立ち、他の旅館が輝いて見えたことを覚えています。
旅館組合のつながりで様々な旅館に行き、それぞれの個性を出した魅力的な「ウリ」を持っている旅館がすごく羨ましかった。しかし、あづま荘独自の「ウリ」を見つけられず、思いついても実行する勇気が無く、悶々と日々を過ごしていました。
状況が変わったのは2011年3月11日、東日本大震災が東北を襲いました。それまで何となく過ごしていた日常は失われ、予約は真っ白に。初めて何かしなければ旅館が危ない、この時初めてそんな危機感を持ったと思います。
震災から時間が少し経ち少しずつ日常が戻る中、スタッフから「猫を目立たせるとプランの販促になるキャンペーンがあるようです」と相談がありました。これだ、と思いました。
その時は要望があった時だけ会社へ連れてきていた飼い猫のまいちゃんを、ねこ女将にする。普通はそんなことする旅館はいないだろうし、そんなバカなことを考えるのは自分くらいだろうと思いました。
一回震災で諦めかけた旅館業、バカだと言われるくらい何てことない。
そんな思いで2013年にあづま荘の歴史上最大の「ウリ」である、ねこ女将まいちゃんが誕生しました。
残念ながらまいちゃんは来年2月に引退となりますが、あづま荘=ねこ好き歓迎の宿、そのブランドはいつまでも残して行きたいと思います。 私の旅館業という冒険は、ねこ女将女将就任と共に始まった、そう言っても過言では無いと思います。