「従業員みんなを守る」――83歳・五十嵐さんの決断。
江戸時代から続く「日光彫」。その伝統を受け継ぐ五十嵐漆器店の現代表・五十嵐 吉子さん(83歳)が代表に就任したのは、つい数年前のこと。きっかけは、息子さんと、前代表である旦那さんが病気によりご逝去されたことでした。
これまで経営には関わっていなかった五十嵐さん。「会社をたたむ」という選択も、頭の中をよぎったといいます。それでも踏ん張って、会社を受け継ぐ決意をしたのは、従業員のみんなを路頭に迷わせたくないから。大切な店舗と工房を、未来へつなぐことに決めました。
技術の継承が危ぶまれる、日光彫。
最盛期には、地域の一大産業だった日光彫。しかし職人の数は時代とともに減少し、今では高齢化や後継者不足が課題になっています。現に、五十嵐さんのもとで働くスタッフの方々も、平均年齢は70歳を超えました。
観光地として知られる日光には、毎年全国から多くの修学旅行生や、国内外から多くの観光客が訪れます。旅の土産に日光彫を手に取る方もおり、観光資源の一つとしても数えられています。そんな日光彫が、もし衰退してしまったら…。かけがえのない伝統技術が廃れてしまうだけでなく、日光市にとって貴重な観光資源を一つ失ってしまうことにもなるのです。
日光彫を後世に残すためのプロジェクト、始動。
現状を打破するため、日光市とニッポン手仕事図鑑はともに「日光彫の後継者育成プロジェクト」を立ち上げました。「後継者育成プロジェクト」とは、職人を目指す若者と、後継者を採用したい工房をマッチングするもの。2023年5月、日光市の将来を左右する一大事業がスタートしました。
予想より難航したのは、後継者を採用したい工房探し。工房の数が減っていることに加えて、自分の代で工房をたたむと決めている職人さんもいました。そんななかで、周囲からの応援を背に手をあげてくれたのが、五十嵐さんだったのです。
聞けば、けっして五十嵐さんもすんなりと採用を決断できたわけではありません。新しいスタッフは採用せず、自分の代で事業をたたむことも考えていました。でも、これまで大切に受け継がれてきた「日光彫」を、自分の手で絶やすことはできない…。悩みあぐねたすえに、受け入れを決意したのです。
新しい後継者や五十嵐さんのファンを、増やしたい。
「日光彫の後継者育成プロジェクト」を通して、五十嵐漆器店に20代の後継者が3名誕生しました。そのうち2名は、いよいよ今年4月から日光彫の技術を学び始めます。「新卒・未経験から、日光彫の技術を身につける覚悟を決めた者」「修行に集中するために、移住を決断した者」…それぞれ並々ならぬ覚悟をもって、新生活をスタートします。
日光彫を後世につなぐと決めた五十嵐さん。そして、その想いと技術を受け継ぐと決めた新米職人たち。私たちは今回、勇気ある彼女たちに新しい彫刻刀をプレゼントしたく、クラウドファンディングを発足しました。
ただ彫刻刀を贈るだけでなく、「日光彫を応援してくださる全国の支援者数」を可視化できることが、何よりも彼女たちの希望につながると考えています。リターンに設定しているいくつかの日光彫商品は、新米職人が独り立ち後に絵柄を彫る予定です。全国に日光彫の魅力を届けるため、ぜひお力を貸していただけると、これほど嬉しいことはありません。
<支援金の使用用途>
・新しい彫刻刀一式の購入(3名分)
・返礼品の購入費用・配送料
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