泉鏡花[一八七三─一九三九]の単行本『繪本辰巳巷談』は、小村雪岱[一八八七─一九四〇]の装幀で、大正九年(一九二〇)の秋(奥付の初版発行表記は十一月八日付)に春陽堂から刊行されました。明治三十一年(一八九八)に春陽堂の文芸雑誌『新小説』第三年第二巻で発表された『辰巳巷談』を、〈繪本〉化したものです。
CAMPFIREでご支援いただいた方には、 限定便箋セット、限定クリアファイル、さらに明治文学の口絵の解説本『明治文学の彩り 口絵・挿絵の世界』(日本近代文学館・編、出口智之・責任編集)、『泉鏡花〈怪談会〉全集』(東雅夫・編)などのセット商品をご用意しております。
『繪本辰巳巷談』は、鏡花生誕150年記念復刻として菊判(150mm×220mm)で発行いたします。CAMPFIREでご支援いただけましたら、人数制限のある講演会や文学散歩への参加など、特別リターンもご用意しております。ぜひ、この機会に鏡花の世界を堪能ください。
泉鏡花は、明治後期から昭和初期にかけて活躍し、幻想的な作風と絢爛たる文体で知られています。代表作『高野聖』をはじめとして、300篇以上の作品を世に送り出しました。明治11年創業の春陽堂書店とは深い関わりがあり、鏡花はかつて春陽堂が発行していた『新小説』で社員として編集に携わっていました。さらに、『婦系図』や『粧蝶集』(しょうちょうしゅう)、『銀燭集』(ぎんしょくしゅう)など、彼の代表作や美装本の多くが春陽堂から刊行されており、両者の関係は鏡花文学の発展において重要な役割を果たしました。
『辰巳巷談』は、深川を舞台にした遊女の物語で、斬新な口絵や小村雪岱の装幀と相まって、鏡花ファンに非常に人気のある作品です。特に、中村不折、富岡永洗、鈴木華邨、下村為山、水野年方、楊洲周延といった名だたる画家たちによる巻頭挿絵を、小村雪岱が着色した『繪本辰巳巷談』は、芸術的にも高い評価を受けています。泉鏡花の生誕150年という節目に、このような歴史的価値の高い書籍を再び世に送り出すことは、春陽堂書店の使命であると考えています。
『繪本辰巳巷談』は、大正九年(一九二〇年)十一月八日に春陽堂から刊行されました。四六判、角背、厚紙装で、水色無地の函に収められていました。
鏡花の単著は逝去翌月の『薄紅梅』を含めると百九冊に及び、うち五十七冊は春陽堂から刊行されています。和装本にかわり洋装本が主流となることで、書物が立体的にデザインされ、かつ木版印刷の伝統がまだ生きていた時代にこそ生み出された「鏡花本」は、今も作品と「本」そのものの魅力を人々に伝えています。
明治三十一年(一八九八年)二月、『新小説』誌上に発表された短篇小説『辰巳巷談』は、鏡花の「深川もの」の嚆矢となる記念すべき作品で、主人公たる絶世の美少年「鼎」と何故か瓜二つな容姿をした長身の年増美女「沖津」は、小間物商で芸妓ではないが、まさに「辰巳芸者」と呼ぶに相応しい、凛とした勇み肌の風姿です。
物語は、鼎に惚れぬいたあげく、大金を積んで洲崎遊廓を見脱【みぬ】けした儚げな美女「お君」と鼎の悲恋を柱に、妻子がありながら、お君に横恋慕する粗暴な船頭「宗平」との歪んだ三角関係、美少年をめぐる二人の美女の確執を経て、名所「汐見橋」での凄惨な殺し場で大団円を迎えます。
訳ありげな鼎が人力車に乗って、夜の深川の長屋をあてどなく訪ね歩く冒頭シーンの精彩ある描写には、若き日の鏡花が同地に対して覚えた感興(これぞ江戸の粋!)があらわであり、名作『牡丹の客』などにも見られる荷風散人の趣深い水都・深川の描写に、一脈通ずるところがあって面白いです。(解説・東雅夫)
小説『辰巳巷談』は、七人の「近代画壇大家数氏の麗筆」に彩られた〈繪本〉として読者に届けられました。初出はこの二十二年前、一八九八年二月の『新小説』です。
この号には『辰巳巷談』に材をとった中村不折、富岡永洗、鈴木華邨、下村為山、水野年方、楊洲周延による巻頭挿絵が、七枚寄せられました。巻頭挿絵において「一つの作品に六人の画家が絵を寄せた例は珍しい」とされ、これら写真版・単色印刷の挿絵に小村雪岱が着色したものが『繪本辰巳巷談』に収められた挿絵になります。
小村雪岱[一八八七─一九四〇]は挿絵、装幀、舞台装置など多岐に亘って活躍した日本画家ですが、その名が広く知られたのは泉鏡花『日本橋』(一九一四)装幀によるものでした。
「雪岱」の号を与えたのも鏡花です。未だ無名であった雪岱は『日本橋』を鏡花に任され、浮世絵の伝統を引き継ぎつつモダンなデザインによって物語世界を見事に映した装幀は、注目を集めました。「鏡花本」には鏑木清方、鰭崎英朋、橋口五葉といった一流の画家たちが関わりましたが、『日本橋』以降の装幀のほとんどを雪岱が担うことになります。
本書における雪岱の仕事として重要なのはいうまでもなく表紙、裏表紙絵である。雪岱は作品の舞台・深川洲崎の絵地図を表裏表紙見開きの形に展開し、表紙にうつむくお君を配している。雪岱画の独特の美人は表情のない「雪岱式美人」として知られるが、ここではむしろ、お君の感情を繊細に描き出す。(…)雪岱には本作以前に人物をアップで描く例は少ないが、「辰巳巷談」〈繪本〉化にあたり本場面のお君の表情が必要不可欠であると考えたのではなかろうか。(解説・富永真樹)
■主なリターン
・『繪本辰巳巷談』
定価:5,500円 (本体価格:5,000円+税)
●辰巳巷談A:記名あり
●辰巳巷談B:記名なし(一般流通版)
・便箋セット(ポストカード5枚、一筆箋1つ、封筒5枚)
販売予定価格:1,100 円(税込)
・A5サイズクリアファイル3枚セット
販売予定価格 :1,100円(税込)
・『明治文学の彩り 口絵・挿絵の世界』
定価:2,640 円(本体価格:2,400円+税)
・『泉鏡花<怪談会>全集』
定価4,950円(本体価格 4,500円+税)
・講演会「泉鏡花──文豪伝説の誕生 」(会場:日本近代文学館)招待
限定80名様
・文学散歩
東京編「文豪・泉鏡花ゆかりの地をめぐる」限定20名様
金沢編「文豪・泉鏡花の生誕地をめぐる」限定20名様
東京編「文豪・泉鏡花ゆかりの地をめぐるペア参加」2名5組様で10名様
金沢編「文豪・泉鏡花の生誕地をめぐるペア参加 」2名5組様で10名様
・本に記名
個人5万、法人10万円
■スケジュール
2024年9月13日(金):クラウドファンディング開始
2024年10月31日(木):クラウドファンディング終了
2024年12月上旬~:随時返礼品送付
2024年12月7日(土):金沢編「文豪・泉鏡花の生誕地をめぐる」限定30名様
2024年12月14日(土):東京編「文豪・泉鏡花ゆかりの地をめぐる」限定30名様
2025年1月18日(土):講演会「泉鏡花──文豪伝説の誕生 」(会場:日本近代文学館)
■資金の使い道
・制作費(解説依頼代・デザイン・印刷製本代)
・リターングッズ製作費
・CAMPFIRE手数料
文芸評論家 東雅夫様より
「若き文豪鏡花の原点!」
大東京きっての「水の都」深川は、かつて泉鏡花が仲間たちと「百物語怪談会」を催した所縁の地にも程近く(春陽堂書店『泉鏡花<怪談会>全集』を参照)、若き文豪・鏡花がこよなく愛した、艶のある土地柄だ。
本書『繪本辰巳巷談』(約百年前の初刊も春陽堂から!)を皮切りに、『葛飾砂子』『通夜物語』等々、鏡花は一時期、憑かれたように深川を舞台に、小粋で洒脱な「辰巳の女」の凛とした生きざまと悲哀を描いた作品群を発表した。それらは当時人気を呼んだ新派劇の演目として好評を博し、文壇の新星、鏡花の名を不動のものとしたのである。瑞々しい輝きに満ちた本書によって、鏡花文学の初心な魅力を、存分に御堪能いただきたい!
所在地 〒104-0061
東京都中央区銀座3-10-9 KEC銀座ビル5階 503
電話番号 03-6264-0855
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最後に
春陽堂書店は、明治11年に創業し、夏目漱石や森鷗外といった文豪をはじめ、泉鏡花、江戸川乱歩、横溝正史などの多くの人気作家の作品を手掛けてきた老舗出版社です。現在も、山頭火全集や合作探偵小説コレクション、そして新たな装いで展開している春陽文庫など、多彩な出版活動を続けています。このたび、泉鏡花の代表作である『辰巳巷談(古書)』の復刻本を制作するため、クラウドファンディングに挑戦することとなりました。ぜひ、皆さまからのご支援をお待ちしております。
最新の活動報告
もっと見るリターンの発送と今後の活動について
2024/11/20 19:12こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
たくさんのご支援、本当にありがとうございました!
2024/11/07 20:00こちらの活動報告は支援者限定の公開です。
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