今回は、令和元年度全国盲学校弁論大会に出場した卒業生の弁論を2回に分けて掲載します。まずは前編をお読みください。
「呼吸(ブレス)を感じて」 熊本県立盲学校3年
みなさんは、「アンサンブル」という言葉を聞いたことがありますか。音楽用語では、「少人数での演奏の調和」を言います。私の学校には「アンサンブル部」という、打楽器を演奏する部があります。私は音楽が大好きで、以前から興味を持っていましたので、入学するとすぐに見学しに行きました。しかし、部員数は現在4人と聞いて、「少ない人数でどんな演奏ができるんだろう。そんなにたいしたことはないんだろうな。」と、内心、高をくくっていました。何しろ、私の出身中学校では、吹奏楽部の部員数は軽く50人は超えており、彼らの演奏は迫力に満ちていました。そんな演奏を日頃から聴いていた私にとって、たった4人での演奏というのは、想像ができなかったのです。しかし、演奏が始まるやいなや、私の考えはすぐに吹き飛んでしまいました。身体の芯まで響き、揺り動かされるような、何とも言えない迫力を感じた演奏だったのです。私は圧倒されながらも、「自分もこの部に入りたい。」と思い、希望に燃えて入部したのでした。
私たちの練習は、まず、聴くことから始まります。曲を聴いてイメージをつかみ、正しい演奏ができるまで、反復練習を繰り返えすのです。ある程度合ってきたら、今度は、曲に感情を込めて演奏していきます。これがなかなか難しく、自分としては感情を込めて演奏しているつもりでも、先生は「もっと、もっと、上げて、上げて。」と鼓舞されます。「自分は精一杯やってるよ。これ以上無理だよ。」と思うこともしばしばです。
私たちの演奏には、指揮者はいません。最初のブレスを聴いてタイミングを取り、演奏を始めます。そして、メンバーの呼吸や息づかいを感じながら何度も練習するのですが、なかなか思うような演奏になることはありません。でも、今までに数えるほどではありますが、ぴったり息が合い、完璧と思える演奏となった経験があります。演奏後、私は身震いするほどの感動がこみ上げ、この瞬間を、このメンバーたちと共有できた喜びでいっぱいになりました。
そんな私ですが、自分の不摂生から体調をくずして、何日も練習を休んだことがありました。しかも、それは、総文祭でのステージ発表まで1ケ月を切った時でした。私は、「風邪だから仕方ないや」くらいで、特に練習を休むことにも、それほどためらいもありませんでした。 …………続く…………