今回は、前回の続きで、後編です。お読みください。
「私にとって『音楽』とは」(後編)
楽譜を見ながら演奏することが難しい私たちは、楽譜を全部覚えて演奏しなければいけません。そのため、みんなで演奏曲目を仕上げるのに約半年かかります。楽譜とデジタル音源を使って繰り返し個人練習をします。楽譜では音階を確かめながら、デジタル音源では強弱や拍の長さなどの表現方法を確認しながら練習しています。初めはデジタル音源を聴く、次に弾いてみる、そして音源を聴きながら弾いてみる、同じところを何度も何度も繰り返し覚えるまで続けていきます。寄宿舎や家でもデジタル音源を聴いて、全体での演奏のイメージを膨らませ、表現力が体に染みつくようにしています。根気よく集中して取り組み、覚えることができた時はこのうえない達成感と充実感があります。それと同時に次はもっと表現力を磨きたい、その次は、みんなで合わせて演奏したい、とすぐに次の目標が浮かびます。部活動を通して、同じ志を持つ仲間と切磋琢磨する楽しさや喜びを感じています。
時には仲間とぶつかることもありました。そんなときは、納得がいくまで、何度も話し合いをしました。自分の思いや考えを相手に伝え、相手の考えも最後まで聞いて、しっかり向き合うことで時には相手の考えを受け入れることも大切なことだと感じました。また、お互いに思いを伝え合ったからこそ、自分の思い違いに気付くきっかけとなったこともあり、みんなで一つの課題に向き合うことの大切に気づくことができました。それは、一緒に練習し励まし合える仲間達、そしていつも熱心に指導してくださる顧問の先生がいてくれたからです。顧問の先生にはとても感謝しています。演奏するときはいつも「より丁寧に、やわらかい音質で、やわらかい響きで演奏できるように」と教えてくださいます。私は、肩の力がスッと抜けるような穏やかな気持ちになり、演奏することができます。先生は、私に音楽の魅力や楽しさ、音楽への向き合い方、そして仲間と協力することの大切さを教えてくださいました。
あるとき、顧問の先生から「音楽は一つの物語である」と教えていただきました。何度も繰り返し練習することで音楽が自分の物になり、音楽の物語が自分たちのものになっていくことを教えていただきました。だからこそ、演奏を通して人の心を動かすことができた時には、音楽をしてきてよかった、部活動をしてきてよかったという思いがこみ上げてきます。
音楽は私の生活に欠かせないものです。音楽を通していろいろな人と出会い、様々な経験を重ねて成長することができました。自分としっかり向き合い、努力したり苦労したりする経験は必ず自分で人生を歩んでいくための基盤になると思います。自分と向き合い、他者と向き合い、そしてまた自分自身と向き合っていく中で自分が何をしたいのか、そのために何が必要なのか、なりたい自分や自分を見つけていきたいと思います。これからも音楽を続け、音楽とともに歩み、成長し続けていきたいです。