2024/06/26 07:10

4日目


朝からの曇天。

湿度がピークのお昼過ぎ。

僕はまた見慣れた階段を登っている。

高さがマチマチの蹴上や異常に斜めになっている踏面ももう慣れたようなものだ。


ただ一つ、肩に食い込む木材の重みを除いては…。


材木屋さんが運んできた木材。

これで棚を作る事にし、設計図を描いたのは確かに僕だ。

でも運ぶ事になるとは考えて居なかった。


1枚板の高級なカウンターを地下1階へ運ぶなんていうのは華もあるしクラファンのイベント的にも最高だろう。


しかし、大量のベニヤをエレナシ5階へ運び揚げるなんてそうはいかない。

そして助けを求めている時間も無い。


くそ!重い!

そんな恨み節を吐いたところで一人なので意味も無い。


材木屋さんが台車を貸してくれたので麓までは比較的楽に運べた。


階段を回るかどうかギリギリの設計でカットした板材は天井を掠めながらなんとか上がって行く。


エレナシ5階に木材を揚げ切ったとき僕の魂は10階くらいの高さにまで上っていた。


おかしい。

僕は建築士の資格を取って設計の仕事をしているはずなのに。

この鏡に映っている汗だくのおじさんは誰なんだ。

君ら不動屋さんがエレナシ限界ビルを甘やかすからこうして現場に犠牲が出るんだぞ!

反省しろ!


それではまた!