『十二国記』などの作者である漫画家・山田章博先生から本書の推薦文をいただきましたので、帯にレイアウトしました。
http://kirakuya-honpo.hustle.ne.jp/yamada-akihiro/
漫画家の僕がどうしようもなく自分はアジア人で日本人だと思い始めた頃、ならばどう描くのが日本の漫画なのかと考えた。
岡田嘉夫のようであればいい。
そう思った。そして、これは決して短絡ではない。
岡田嘉夫という画家を意識したのがいつだったか憶えてはいないが、魅了されたのは多分、初めて見たその瞬間だ。
色彩を扱わせては絢爛にして優婉、墨は精妙な烏(カラス)彫りを思わせる。シルエットに閉じ込めた人やもの、裁ち切りの外からノシッと踏み込んで来るような構図も素敵だ。格調と崩れが矛盾しない。
庸劣な言い方で恥ずかしいが、グラフィックデザイナーの感性で再構築された当世の浮世絵だと思う。
ただ、再構築と言っても旧きを壊して出て来た人だとは思わない。
描き方の師匠を持たない僕が日本的な漫画の有り様を思った時、岡田嘉夫に辿り着いたのにはそこに僕の考える日本を見たからだが、批判を承知で言うなら日本的であるという事は何かを背負う事だ。
我々が認識する日本のやり方というのは何をどう魔改造しようが、文化だとか伝統や時間だとかそういったものをちゃんと背負っている。
小賢しく言えば、魂の緒を継いでいる。
僕はそのやり方を手本とした。
不幸な事に、様々の理由で岡田嘉夫の画業に触れる機会は得難いものになってしまったが、このままで終わってしまって良い画家ではない。
画集、画展が企画されているこの時をきっかけに、是非、その魂と技に触れて欲しいと思う。
末輩の分際で生意気なとお思いの方は少なくないだろう。僕は良いのだ。生前のご本人に誉めてもらった事があるんだから。