私の実家は「ミニスーパー ハヤシヤ」という地域のコンビニのような場所でした。店にはテレビが置いてあり、小さなベンチもあって、買物のあと、お年寄りが休んでいったり、近所の人とおしゃべりしたり、夏には野球の中継を一緒に見るような店でした。そこで店番をしながら育ったこともあり、今回、栄町に小さな共同書店ができること、そして自分も個人として「ミニ書店」を開けることを、大変うれしく思います。インターネットのない90年代のド田舎で育った私に、本は世界への関心を開いてくれました。その後、文学部に進み、留学し、演劇について学び、今は劇場で働きながら、ドイツ語翻訳者をしています。
子どもの頃から、店で人の話を聞くことが好きで、その延長に読書がありました。高校生になって本を知ったときに驚いたのは、数百年、数千年前の、遠いどこかの誰かの話さえも聞くことができるということでした。自分とは異なる誰かの声を聞くことは、芸術の楽しみの根本であると同時に、地域で、世界でともに生きること、つまり政治の基礎でもあると思います。この共同書店のあり方と、本を読み、誰かに手渡す日々のいとなみが、人が互いに声を聞き合う世の中へとつながることを信じて、自分なりの参加をしたいと思っています。