遠く地平線の彼方で空が茜色に染まり始めていた。僕は、新潟県の佐渡へ旅をしていた。夕暮れの光は、まるでソーダを注ぐときグラスへ零れ落ちる、視界めいっぱいに広がってゆく。夏風は少し湿り気を帯びていて、堤防へ座ると、ひんやりとしたアスファルトが触れる感触がやけに心地よい。ふと、子どものころに飲んだクリームソーダを思い出していた。透明なグラスの中に閉じ込められた炭酸の泡、そこにぽとりと落とされた白いアイスクリーム。それは小さな魔法だった。あの甘酸っぱさ、そしてアイスクリームが溶けていくにつれ広がるまろやかな甘さ。目の前に広がる夕焼けの空と海の色が溶け合う景色を見つめていると、そのグラスが頭に浮かび上がる。茜色の空は、空想の中で新しい色を生み出していた。もし、この茜空をクリームソーダに閉じ込めることができたら...イメージがさざ波のリズムに揺られながら心を満たしていく。自分の心音が聴こえるほどの静けさと一定に保たれた波の音が現実の世界と空想の世界を行き来する。そうだ、空が深い藍色に染まる前に残しておこう。いつかは消えていく。その儚さが、クリームソーダを飲んだ記憶と似ている気がした。泡沫の美しさ、そして甘さ。それは、色褪せてゆくからこそ特別なのかもしれない。忘れたくないと思うほど、思い出は色褪せてゆくのに、それでも心に彩度だけを残してゆく。次に訪れるとき、あの空の色を再現するクリームソーダを、自分で作ってみようかと思った。グラスの中に閉じ込められる茜空。思い出の風景とともに、それは新たな記憶として胸に刻まれるだろう。暮れてゆき、染まってゆく。一度終わって、また始まる。こうして、茜空のクリームソーダは生まれる。旅する喫茶が佐渡で出張開店をする前に訪れた、思い出と共に。海と空はどこか似ている。もしかしたら深海の先には、また美しい空が広がっているのかもしれない。_____深海へ至る航海日記よりtsunekawa
クリームソーダ職人 の付いた活動報告
こんばんは!旅する喫茶のtsunekawaです。今回は旅する喫茶という活動を始める前、そしていくつかあるターニングポイントのような、旅する喫茶を始めるきっかけの1つとなった「クリームソーダ会」のことを話したいと思います。クリームソーダ会とは、名前の通りみんなでクリームソーダを作って楽しむ会のこと。https://x.com/tsunekawa_/status/985832838560858112懐かしい2018年の春。この日はみんなで集まってフルーツを使ったクリームソーダ会をしました。このツイートがきっかけでたくさんの人にクリームソーダ会を知ってもらえたと思います。いつもお昼過ぎくらいに集まって休日を満喫しながら、おやつの時間、ちょうど3時くらいにみんなで飲み始めるような感じでした。この時作った、新鮮な果物を使ったクリームソーダの作り方はこうでした。①フルーツをミキサーでスムージーにしてから炭酸で割る。②アイスを乗せる。③好きなものをトッピング。基本的な作り方はこれだけ。この作り方をベースにフルーツを組み合わせたり、スパイスやハーブを入れたりすると味に深みが増してうんと美味しくなります。もちろん基本の作り方だけでも、フレッシュな果実感と濃厚なバニラアイスの組み合わせで美味しいクリームソーダになります。そこに炭酸のしゅわしゅわが合わさって最高なんですよね。例えば、パイナップルを使ったクリームソーダだったり、メロンを丸ごと使ったクリームソーダ王道のクリームソーダとはまた違う良さがある様々なクリームソーダがここで生まれました。そして「みんなで作るということ」の楽しさを知ることができました。クリームソーダ会を開催するとき、必ず決めていたことがあります。それは、みんなで買い出しに行って、みんなで材料を切って、みんなで楽しむ。この共同作業が楽しいし、作りながら普段なかなか会えない人と近況報告だったりおしゃべりするのも楽しい。僕はそんな時間が好きです。これからもそんな場所を作っていきたいです。最後までお読みいただきありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いします。tsunekawa