銚子電気鉄道株式会社は、千葉県銚子市、関東最東端を走る全長6.4kmの小さな鉄道会社です。1913年、地元有志によって設立された銚子遊覧鉄道を母体とし、第一次大戦中に廃線となった後、1923年に銚子鉄道として復活、100年余の長きにわたり、地元の皆さまの生活を支える交通手段として電車を運行してまいりました。
弊社のこれまでの歩みは決して平坦なものではなく、数度にわたり廃線の危機に瀕し、その度に奇跡的な復活を遂げるという稀有な歴史を辿ってまいりました。そしてその背景にはいつも、銚子電鉄を愛し、支えてくださっているファンの皆さまの存在がありました。
下記に、銚子電鉄の廃線の危機と奇跡の復活の歴史をまとめさせていただきました。
私どもの、そして今回のプロジェクトの根幹となる部分ですので、長文ではございますがお付き合いいただけますと幸いです。
廃線の危機と奇跡の復活
平成16年、社長自身による横領事件が発覚、これをきっかけに経営状況は悪化の一途を辿ります。公的な補助は打ち切られ、新規融資も受けられない中、金融機関からは終点・外川駅前の駐車場を全部売って借入金の返済をするよう迫られました。資金繰りはひっ迫し、給料の支払いもままならない状況に陥ってしまいました。鉄道部門は赤字が続き、副業のぬれ煎餅の販売収益だけで赤字を補填し、輸送の安全を確保しなければなりません。しかし限られた収益で6.4kmの鉄路を支えるには限界がありました。
線路や電路など鉄道資産についての保安が十分でないことから、2006(平成18)年11月、国土交通省より安全確保に関する事業改善命令が発出されました。2か月以内に指摘された箇所を改善しなければ運行停止…。
「廃線」の二文字が眼前に迫ってきたのでした。
このままでは電車が止まってしまう。まさに崖っぷちの状況下で、誰もが会社の破綻を覚悟したとき、奇跡が起きたのでした。それは経理課長(当時)が電車の運行維持のため必死で考えた異例のお願い文に端を発した“ぬれ煎餅ブーム”でした。
「ぬれ煎餅買ってください。電車修理代を稼がなくちゃいけないんです」
弊社公式サイトにこの一文が掲載されるや否や、全国から銚電オンラインショップに15,000件もの注文が殺到し、これを契機として運行維持への弾みがつき、奇跡的に倒産の危機を回避することができたのでした。
人と人は、きっとどこかでつながっている
インターネットというデジタルの世界の向こう側に、アナログな温かい人々の心がある…。
10枚入りで800円を超える(当時)ぬれ煎餅は、決して安いものではありませんが、毎日たくさんの方々に購入していただき、また励ましの言葉も頂戴しました。
「銚子電鉄頑張れ」
「鉄道の灯を守り続けてください」
「銚子電鉄が頑張っているから、私も頑張らなくちゃ」
時ならぬ“ぬれ煎餅ブーム”を通じて私たちが学んだことは、「人と人はどこかでつながっていること」、「苦しいときに助けを求めることは決して恥ずかしいことではないんだということ」、そして「最後の最後まで諦めないで頑張り続けることによってのみ結果が与えられる」ということでした。
どんなに現状が苦しくても、最後まであきらめずに挑戦を続けることが銚電マンの真情であり、誇りです。
この気持ちは今も社員全員の胸の内に生き続けています。
地元高校生によるクラウドファンディングへの挑戦
2014(平成26)年1月11日。笠上黒生駅構内において列車の脱線事故が発生しました。乗車されていたお客様は7名、幸いけが人はなかったものの、鉄道の信頼を揺るがす事故の発生と大幅な減便による収入減もあって、社員たちは「これはもうだめだ。廃線だ…」。これから自分たちはどうしたらよいのか…。そんな思いから先行きが不安な日々が続きました。
こうした折、破損した車両の修理費用を調達すべく、地元の銚子商業高校の生徒たちがクラウドファンディングに挑戦し、300万円の目標金額を大幅に上回る資金調達に成功、傷ついた車両は1年3か月をかけて修理を終え、再び本線を力強く走り始めたのでした。
https://readyfor.jp/projects/CHOSHO-CHODEN
若き力を結集しての果敢な取り組みには本当に感謝しかありません。
また高校生たちの呼びかけに対して資金を拠出してくださった全国の支援者様の温かい心がまたしても銚電を救ってくれたのでした。
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より詳しい弊社の歴史は、こちらでご覧いただけます👇
〇銚電ストーリー(奇跡のぬれ煎餅) https://www.choshi-dentetsu.jp/railway/1905/
〇奇跡のぬれ煎餅 ~小さな煎餅が銚子電鉄を救った~ https://www.choshi-dentetsu.jp/vspot/7/
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101年の歴史のなかで、何度もあった廃線の危機。「絶対に廃線させない!」という社員の強い思いと、それに共感してくださった皆さまの力によって今日まで鉄路をつなぐことができました。
そして今回 ———
大変図々しいながら皆さまにもう一度、お力を貸していただきたいのです。
定期利用してくださる乗客の皆さま、銚子観光でご乗車のお客さま、弊社の製品をご愛顧いただいている皆さま…多くのお客様やファンの皆さまのおかげで銚子電鉄は今日も元気に走っています。
10年前より国、千葉県及び銚子市からの補助金を大切に使わせていただき、輸送の安全確保に努めてまいりました。そして、これまで皆さまに「ありがとう」と発してきた分、今度は「ありがとう」と言われる存在にならなくてはならない。
とりわけ ――「銚子の魅力を知っていただき、銚子を盛り上げること」は、ローカル鉄道たる私どもの使命であり、地域への恩返しであると考えています。
まだまだ途半ばではありますが、歩みを止めるわけにはいきません。
銚子市の危機
銚子電鉄線が走る銚子のまちは、2024年4月24日の人口戦略会議による試算で、「消滅可能性自治体」に該当するとされました。2020年に4,331人であった若年女性の人口が、2050年には1,409人となり、約67.5%の減少が見込まれている…という推計で、自然減・社会減ともに、特に構造的に深刻な自治体とされた全国23自治体のひとつとなっています。
(参照:https://www.city.choshi.chiba.jp/shisei/page010356_00017.html )
こうした環境下で、銚子のために私どもができることは何か。
それは「銚子により多くの観光客を呼ぶこと」だと考えました。
観光は銚子にとって基幹産業のひとつ。銚子市の経済を盛り上げるとともに、訪れてくださったお客様に「また来たいな」「住んでみようかな!」と思っていただけるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
そんな「銚子観光の玄関口」としてふさわしい車両とすべく、22000形車両の観光改造を行いたいのです。
銚子電鉄を愛してくださる皆さまのために、鉄路を未来につないでいきたい。
そして次の100年を、銚子市の皆さまとともに歩んでいきたい。
どうか私どもの恩返しに、そして銚子市の未来に、お力を貸していただけませんか。
南海電鉄2200系導入の経緯
弊社では安定した輸送を提供すべく、3000形車両導入以降、新規車両の導入を模索していましたが、必要スペックに合う車両は数少なく車両導入の検討は困難を極めていました。
こうしたなか、南海電気鉄道株式会社・京王重機整備株式会社(改造工事担当)とともに、弊社路線を運行できる可能性がある車両を検討した結果、「南海電鉄2200系車両であれば、改造することにより運行可能である」という結論に達し、
2023年8月15日には、南海電鉄より2200系車両(車両番号:モハ2202-モハ2252の2両編成)を譲り受け、2024年3月には銚子電鉄22000形としてデビュー。
そして、本年8月16日には同じく南海電鉄より2200系車両(車両番号:モハ2201-モハ2251の2両編成)を譲り受けました。
費用の使い道
今回のクラウドファンディングで募った資金は、この2200系車両第2編成を「観光列車」として改修するための費用に充てさせていただきます。
✓ 南海電鉄より譲受した2200系車両を銚子電鉄を走れるスペックに改造
✓ 観光列車として車内を装飾
※費用の総額は約1300万円の見込みで、差額は自己補填等でプロジェクトを進行します。
改修イメージ
改修イメージにつきましては現在調整中です。
進捗状況は随時「活動報告」にて公開いたしますので、お気に入り登録をしてお待ちくださいませ。
皆さまのご期待にそえるよう、社員一同改修方針やデザインなど精査してまいります。
恐れ入りますが本件に関するご意見・お問合せはご遠慮くださいますよう、お願い申し上げます。
「ありがとう銚子電鉄」と言ってもらえる会社を目指して
鉄道会社の本分はもちろん乗客の輸送です。地元住民や観光客の移動手段としての役割は依然として大きいものがあります。他方、地域との協働によるイベントの共催や共同商品の開発も当社の重要な使命であり、さまざまな企画を通じて地元の事業者と利益を分かち合い、銚子の街が少しでも元気になることを目指しています。ローカル鉄道は地域の広告塔であり、情報発信基地でもあるのです。
そしていつの日か、地元の人々に「この町に銚電があってよかった♪ ありがとう銚子電鉄!」と言ってもらえることが、銚電社員全員の目標です。
地方鉄道を取り巻く環境は年々厳しさを増していますが、長年にわたり支えてくださった地元の皆さんへの感謝を胸に、与えられた環境下で最善を尽くし、鉄路を明日に繋いでまいりたいと思います。
皆さま、ぜひお力添えの程、よろしくお願い申し上げます。
銚子電気鉄道株式会社 代表取締役
竹本勝紀