JECSAカンボジアの活動
国際協力NGOのJECSA カンボジアの細島です。JECSA カンボジアはカンボジアの教育の質の向上を目指して、公立小学校への支援をおこなっている団体です。
カンボジアは49年前に起きた悲しい歴史により多くの教師が亡くなりました。その後も十数年内戦が続き、教育制度を立て直しに難しさを抱えてきました。
その一方で外国からの支援や資本をうけて、近年はインターナショナルスクールやプライベートスクールなど有料の学校ができました。
経済的に豊かな生徒は良い環境で学びを得ることができますが、そうでない生徒はどんどん学びから遠ざかってしまっています。
私たちJECSAカンボジアは無料の公立学校こそ教育を高める支援が必要と感じ、今までにトイレ、手洗い場の修繕・設置、図書館の建設や図書・勉強机・黒板などの寄贈や英語授業の無料提供をしてきました。
今回トイレ建設支援のきっかけ
このような学校支援をする中で、どうしても助けを必要とする人に出会います。
私たちが無料の英語クラスを提供しているシェムリアップ州の小学校のすぐそばにある家族でした。
この並びには4つの家があり、そのうちの1つに住んでいるご家族です。
母親と娘さん2人の3人暮らしです。娘さんは2人とも学校は途中で辞めてしまいました。
学校を辞めてしまうと仕事に就くことは難しくなります。
このように中途退学してしまった若者に向け職業訓練と就労支援をおこなうカンボジアのNGO団体があります。Youth’s Dream Fulfillment Associationです。お姉さんはそこで接客業の訓練を受け、現在はビアガーデンで働いています。しかし今働いているビアガーデンは労働環境があまりよくなく、給料も十分ではないため、NGO団体の先生も転職を進めています。
仕事に就くことも、仕事を続けていくことも非常に大変です。
今回はYouth’s Dream Fulfillment Association 代表のマカラさんより、生活状況が良くないので助けてほしいとお願いがありました。
(写真は一時支援でJECSAカンボジアより食料や調味料をお届けした時のもの)
一番端の家で床は地面がそのままの土間の状態です。カンボジアの雨季は道路が冠水するほどの雨が降るので、もちろん家の中にも雨が入ってきてしまいます。壁はところどころなくなっており、布がひかれています。
家族から生活状況の聞き取りをすると、一番困っていることは使えるトイレがないということでした。並びの4世帯で共用のトイレがありましたが、壁やドアは壊れ、穴だらけでとてもじゃありませんが使える状態ではありません。
女性たちは、トイレに行ったり、身体を洗ったりするにはほかの場所に行くしかありません。
これからYouth’s Dream Fulfillment Associationと連携し、お姉さんの転職を支援していきます。そして妹さんにも何かできることを考えていかなければなりません。
しかし、その前にまず安心して生活ができるように、このエリアにトイレの建設を支援していくことにしました。
バスルームの建設の概要
建設業者と相談し、写真のようなバスルームの建設を目指すことにしました。
まずは穴が空いていなくて鍵がしまり、安心して使えるバスルームであること。そして外に出て仕事をするためにはシャワーは必要です。身体を洗うことができるようシャワーの取り付けをお願いしました。
建築資材費 400
水道設備修繕費 350$
作業員の人件費 400$
スタッフ経費(交通費等)50$
リターン発送費用 100$
計 1300$
1300$=199,754円(2024年11月11日現在)
最後に
全ての事柄がこうした支援で必ず解決するとは思いません。しかし人には窮地に陥ってしまった時、どうしても周りの支援や応援が必要な時があると思います。それは日本人でも他の国でもみんな同じだと思います。
私自身もこれまで窮地に陥った時にいろんな人の応援や支えがありました。そのようにしていただいた応援や支えをまた別の形で社会に返したいと思っています。
支援や応援というのは必ずしも寄付だけではないと思います。年金や生活保護などの社会保障や保険制度も支援や応援だと感じます。日本はどうしても助けを必要とする時、社会保障や保険制度があります。しかし、残念ながらカンボジアではまだそれらの制度が整っていません。
事故や病気、家族の不幸などなにかトラブルが起きたら、生活は一変し立て直すことは困難です。
これから先、カンボジアでも社会保障や保険制度が作られていくと思います。しかし今すぐの助けが必要な方がたくさんいます。
どうかみなさまのご協力をいただけますようお願い致します。
国際協力NGO JECSAカンボジアは、普段は教育支援をメインに活動しています。
なぜカンボジアの教育現場に支援が必要と感じるかというと、それはこの国の歴史的背景にあります。
49年前にカンボジアに起きた悲しい歴史
1975年~1979年、ポル・ポトが指導した「クメール・ルージュ」によってカンボジア全土が支配されましました。「クメール・ルージュ」は原始共産主義を掲げ、格差・階級のない原始時代のような社会をつくるため、通貨を廃止し、教育や文化を否定しました。教師や医師、僧侶、政治家、公務員、歌手、俳優などは資本主義の手先として次々に殺されました。
外国語を話せる、眼鏡をかけている、手が白くてきれいというだけで知識人と疑われ、拷問、処刑されたと言われています。この時、病気や餓死なども含めるとカンボジアの当時の人口のの約1/4が犠牲になりました。このようにしてわずか49年前、学校は破壊され、教師は殺されたのです。
クメール・ルージュ後も十数年続いた内戦
1979年1月ベトナムの支援を受けた元幹部らがプノンペンに入城し、クメール・ルージュは終焉を迎えます。その後、ベトナムの支援をうけた人民革命党政権が徐々にカンボジアを支配していきますが、冷戦が深まる当時の社会情勢は人民革命党を支持しませんでした。
ASEAN諸国、西側諸国は虐殺をおこなったポト・ポト派を含む三派連合を支持する形となり、カンボジア国内の内戦はその後も十数年続きます。
この内戦により人々の生活はさらに困窮することとなりました。
カンボジアの公立学校の現状と就学率
内戦後、カンボジアの人口は著しく増加しました。多くの小学校では就学児童に対して教室や教師が不足しているため、午前(7時から11時)と午後(13時から17時)の二部に分け、生徒を入れ替えて授業を行っています。
例えていうなら1.3.5年生は午前の授業、2.4.6年生は午後の授業というような具合です。
国語や算数などの主要教科の授業が大半を占めており、図工や音楽、体育など教科はおこなえていない学校もあります。授業ができる時間が少ないので、授業スピードが速かったり、内容が一部飛ばされていることもあるようです。
カンボジアの学校教育は日本と同様6.3.3制で最初の初等教育6年と前期中等教育3年を合わせた9年間が義務教育です。初等教育でも試験をクリアしないと留年となります。
同じ4年生でも10歳の子もいれば14歳の子もいます。ひとつのクラスを見ていても生徒の学力差が大きいことに驚かされます。
クラスの中には学校以外の時間は有料のプライベートスクールに通っていて、学びの多い子もいます。反対に家の手伝いや仕事をしなければいけないため、休みが多く勉強に遅れている子もいます。
勉強に追いついていけないと、だんだんと学校から足が遠のいていきます。こうして小学校、中学のうちに学校を退学してしまう生徒も少なくないのです。
2020年-2021年度の就学率は初等教育87.4%、前期中等教育48.1%です。日本の中学校にあたる前期中等教育を卒業できていない生徒が半数を超えてしまっているのです。
このような歴史的背景と公立学校の現状から、カンボジアでの支援を続けてきました。
もちろん私たちだけで全てを解決することはできません。しかし小さなことでも、その場その場で出来る最善のことをおこなっていきたいと思っています。そして私たちだけでなく、この国、この地域を支援する多くの人の力が合わさり、人々の暮らしから少しでも苦しみを取り除くことができたら幸いです。
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