原作者が、京都の地で飛び込み営業を行っている時に、気づいたことを紹介します。漫画では、大山先輩が発する言葉の土台になった出来事に当たります。大山先輩もこのような経験をしたから関根君にアドバイスできたのでしょう。
飛び込み営業は、ひたすら断わられることを繰り返す仕事です。でも、たくさん断られる先にいい話に出会います。多分100件に1,2件という確率でしょうか。
5,60件訪問すると、そろそろいい話があるかなという希望が出て、頑張るといった具合です。営業パーソンは、その少ない出会いを求めて断りに耐えているわけです。よく言う「犬棒セールス」(犬も歩けば棒に当たる)と言うやつです。
コールセンターからアウトバウンドの架電(電話をかけること)を行うインサイドセールスの方も同じ心境かもしれませんね。
当時は、テリトリー(担当地域)があって、そこにはたくさん(多分数百社)の企業がありましたので、行く先に困ることはありませんでした。偶然の出会いを求めて、断られる訪問を続けていたわけです。
さて、ある時、会社の方針が変わり、今までより少し規模の大きな企業だけを対象とするようになりました。自分の担当先は約100社ほどです。
企業規模が大きくなったので、自分も偉くなったような錯覚を持ちましたが、いざ回ってみると、今までより企業側のガードは固く、いい話は全くありません。2日間で全ての対象先を訪問し、まともな面談はゼロという状況です。これは困りました。
この状況で、京都の四条大宮(京都の中心街より500mほど西に行ったところ)を、ボーっと歩いた時でした。
「どうしてこんなに辛いんだろう。お客さんは『来るな、迷惑だ』と言う。会社では、『売れないセールス』と罵られる。俺は京都くんだりまで来て、なんでこんなことをしているんだろう」と考えていた時です。
突然、自分の頭の中で、先ほど自分が飛び込み営業をしていたシーンが浮かんできたのです。自分を上から眺めている感じです。先ほど訪問した企業の総務の担当者が、「お宅には用がないから」と言って私を追い返しています。
このシーンを思い浮かべながら、私は呟きました。「そりゃそうだよなー。勝手に訪問してきて、複写機を売りにこられても迷惑だよな」
恥ずかしながら、今までずっと売る側からお客様を見ていましたが、初めてお客様の側から自分を眺めることができた瞬間でした。
「もう売るの、やめようか。どうせ売れないんだから、一緒だ。それじゃ何するかな? お客さんの役に立つ情報を届けるだけにするか」との考えが沸き起こってきたのです。自分の行動が変わった瞬間です。
後年心理学を学んで、このように自分を客観視することを「メタ認知」であるということを学びました。このメタ認知から始まった行動変容は、大きな変化をもたらしました。
お客様に役立つ情報(付近のランチマップ・お客様の業界が掲載された記事・用紙の湿気対策などのお役立ち情報)を届けに行くという訪問に変えたのです。
この訪問を何度か繰り返すと、お客様の担当者が声をかけてくれるようになり、訪問自体が苦痛でなくなりました。お客様と話す内容も、売り込みではなく、お客様の業務のことになり、その地域に多い呉服関連の業務も少しわかってきました。そうすると自分でも勉強しだします。呉服や帯が作られる工程がわかってくると、お客様と話す内容も変わってきて、複写機を提案するネタも見えてきます。
お客様もこちらが来るのを待っていてくれるようになりました。
「売るのはやめた」と決めてましたが、自然と提案するようになり、売れるようになってきました。こうなると結構楽しくなってきて、営業という職種が好きになってきました。
不思議ですね。あの時のメタ認知から全てが始まったのです。行き詰まっていたからこそメタ認知ができたのでしょうか。
皆さんも、何かに行き詰まった時、一旦立ち止まってメタ認知してみませんか。何かが見えてくるかもしれません。
NPO法人ワクワク営業応援団 理事長 渡邊茂一郎





