
正子さんの作品を初めて観たときの衝撃は、今でも忘れられません。
その舞台には「怒(いかり)」というコンセプトがありました。
お芝居が始まってすぐ、私の頭の中には「???」がたくさん浮かんできました。
というのも、舞台上はとにかく明るくて、俳優たちは楽しそうに駆け回っているんです。
「えっ?これが“怒”?どういうこと?」と、混乱しながら観ていました。
けれど、お客さまたちは、そのテーマとのギャップに惹き込まれるように、どんどん舞台に集中していきます。
そこから少しずつ、「ここはどこなのか」「この状況は何なのか」「俳優は何を演じているのか」が、言葉に頼らずとも、自然と理解できていくんです。
そして最後には、私の中にも確かに「怒」が残っていました。
「苦しい」「ムカつく」「嫌だ」「好き」「愛してる」
感情や状況を言葉で説明することはできます。
でも、それを“実感として”観客が受け取ることって、そう簡単にはできることじゃありません。
あとから作品を振り返ると、たしかに俳優たちは明るかったけれど、照明は薄暗くて、温かみがなかったことに気づきます。
つまり私は、知らず知らずのうちに、演出家の手腕にしっかりと乗せられて観ていたわけです。
「こんなの思いつかんやろ!すごいっしょ!」という、演出の“にっこり顔”が見えるような舞台も、私は大好きです。
でも、一瞬たりとも“演出の顔”が見えないのに、「たしかに、これを伝えたかったんだな」とわかるような演出には、本当にしびれました。
「こんな作品を作れる人が、札幌にいたのか?!」と、衝撃を受けたのを覚えています。
正子さんの舞台は、確かな実感をもって観客一人ひとりに語りかけてくれます。
今回の『コウノトリが飛ぶ島国で、この部屋で』という作品を考えたとき、
プロデューサーとして「面白い舞台」にするのは当然の目標です。が!
ただ「面白かったね」「舞台ってすごいねー」で終わらせたくはなかったんです。
今の私たちの生活に、ほんの少しでも“実感”を残せるような作品にしたくて、正子さんにお願いしました。
今まさに、脚本執筆を進めてくださっていますが、彼女は本当に心を削って、この作品に向き合ってくれています。
あーーー!早く皆さんにお見せしたい!!
そして今回出演する、歴戦をくぐり抜けてきたキャストたちが、正子さんの手によってどう料理されていくのか……楽しみでしかありません(笑)
もしかしたら、一番この公演を楽しみにしているのは、私かもしれませんね。
この舞台を観に来たら、きっとあなたも正子さんのファンになるはずです。
どうぞ、お見逃しなく!




