2018/09/14 17:16

メールインタビューvol.9は、nibrollの映像作家の高橋啓祐さんにお聞きしました。

「みんな、いい人!」
 これがはじめて東京演劇アンサンブルから私が最初に感じたことです。長いこと舞台に関わりながら、劇団という場所に属したことのない自分にとって、そこはとても新鮮な場所でした。なんだか温かくて、やさしくて、ときに厳しくて、誰もが作品に対して時間を惜しまず、キビキビと動き、思ったことは自由に発言できる、劇団というのは家族のようなものとはよく言うけどそこはまさしくそんな場所でした。
 私がはじめて東京演劇アンサンブルの作品に参加したのは、2013年の『忘却のキス』です。難解な、というか読む人それぞれに自由な解釈を与えてくれる挑戦的な作品だったと思います。その作品を演出するにあたっての公家さんの発想もとても自由なものでした。東京演劇アンサンブルは歴史もある劇団なので、これまでと趣向の違うことをすることはとても勇気のいることだったと思います。昔からの劇団は保守的になりがちですが、公家さんの演出からはそこからの変化を望んでいるように感じました。守るべきものは守りつつ、それでも変わりつづけようとすることの大切さをずっと感じていました。

『忘却のキス』(2013年3月1日~10日 作:デーア・ローアー 訳:三輪玲子 演出:公家義徳 音楽:かとうかなこ 映像:高橋啓祐 撮影:松浦範子)


 ブレヒトの芝居小屋の歴史からすれば、私のいた時間はほんの少しで、それも最後の最後でしたが、そこに刻まれた時間や記憶に尊いものがあることは、ちょっとそこを出入りした者でもわかります。そこはみんなが生きる場所であり、きっと帰ってくる場所なんだろうなと。この芝居小屋のような、稽古場でもあり、作品を上演する場所でもある空間を持っていることはとても幸せなことであり、とても大切なことだと思います。舞台が生活の一部になる。演技すること、演出すること、空間を考えることが生活の一部になる。表現を習慣化することの大切さをあの場所に教えてもらったように思います。そこにいる。というそれだけのことにどれほど価値のあることかと。
 そんな場所がなくなってしまうことはとても悲しいことです。自分のようなちょっと関わっただけの者がそう感じるのですから、劇団の方たちの想いは計り知れません。ですが、きっとこの劇団なら新しい場所で、新しい表現にチャレンジして、新しい時間をまたその場所に刻んでくれると思っています。次の新たな場所での健闘を影ながら見守りたいと思っています。

『音楽劇 はらっぱのおはなし』(2013年8月~公演中 作:松居スーザン 脚本:篠原久美子 演出:関根信一 映像:高橋啓祐 撮影:松浦範子)

『無実』(2014年9月11日~21日 作:デーア・ローアー 訳:三輪玲子 演出:公家義徳 映像:高橋啓祐 撮影:松浦範子)

 

今後の活動

Nibroll 公演「Imagination Record」

近畿大学文芸学部30周年記念事業

2018年10月5日(金)・6日(土)近畿大学東大阪キャンパス 11月ホール

 

ミクニヤナイハラプロジェクト公演「静かな一日」

メキシコ・セルバンティーノ演劇祭参加

2018年10月19日(金)・21日(日)TEATRO CERVANTES