
大会概要
世界大会優勝を目指してブラジルサルヴァドール国際会議場で開催されたRoboCup 2025に出場してきました。RoboCupJunior Soccer部門は以下の日程で行われました。
7/16:チェックイン、ロボット調整、ミーティング、オープニングセレモニー
7/17:2 vs 2予選第1~第4試合
7/18:2 vs 2予選第5~第7試合、ジュニアパーティー
7/19:ポスター発表、インタビュー、スーパーチーム予選、Junior vs SSL
7/20:スーパーチーム予選、テクニカルチャレンジ、アワードセレモニー
競技の内容は下記の通りです。
■2vs2
コート上で自チーム2台、相手チーム2台の計4台で試合を行いました。
■スーパーチーム
3~4チームで合同チームを作成し、ひとまわり大きなコートで合同チーム同士の試合を行いました。
■Junior vs SSL
19歳まで参加できるジュニアリーグのロボットと20歳以上も参加できるメジャーリーグの中の1つの競技リーグであるSmall Size League (SSL)のロボットを対戦させる交流試合が行われました。
■ポスター発表
チームに関する情報をまとめたポスターを掲示して、他チーム、来場者と交流を行いました。
■インタビュー
3~4チームで自チームのアピールポイントを発表しあい、運営スタッフの方も交えて質疑応答を行いました。
■テクニカルチャレンジ
高電圧をキック機構に流して新型ボールをキックする、オープンリーグvsライトウェイトリーグなどいくつか与えられた課題から好きなものを選んで取り組みました。
競技のほかにも7/18の夜にはパーティーが開催され、他チームと仲を深めました。
結果

<試合 予選>------------------------------------------------------------------
2 vs 2:1勝2分4敗 (20/20位)
スーパーチーム:1勝1分3敗 (5/5位)
------------------------------------------------------------------------------------
という大変悔しい結果になりました。
◀ 敗因 ▶
世界大会で出会ったロボットは以下の点で私たちと大きく異なっていました。
● 強力なシュート
私たちのロボットよりもよりストロークの大きくてキック力の高いプッシュ型ソレノイドを使用したキック機構を搭載していてコートの中央付近からでも正確なシュートを放っていた。
● ボール保持機構
ドリブラーというボールを保持する機構を使用し、ボールを押し出すのではなくつかむようにしてボールをゴールに運んでいた。特にスーパーチームではサッカーというよりはハンドボールのような試合だった。
● スマートなビジョンユニット
1台のカメラと高精度の全方位ミラーだけでボール等の探索を行っていた。この方法は高精度の全方位ミラーを自作するという高難度が必要であるが、キャリブレーションやプログラムを簡略化しやすいというメリットがある。
また、私たちのロボットは次の点が課題でした。
●モーターとタイヤの締結不足
全国大会からモーターを変更したため、タイヤとモーターの締結方法が大きく変わった。以前はモーターにタップ(ネジ溝)が切られていてナットをはめて固定するという方法だったが、新しく採用したモーターがDカット軸であったためネジで軸を押さえつけて固定するという締結方法に変更した。この方法は脱輪の可能性が高く、事前の交流戦で実際に脱輪が起きていたため、ゆるみ止めを塗って対策を施し、ある程度の締結力を持たせることはできたが、個人がロボットを1台ずつ持っていてロボットが衝突しあうような環境での耐久力を十分確認することができず、実戦で脱輪が相次ぎ、締結力不足が露呈する結果となった。2 vs 2予選2日目により大きなネジとより強力なゆるみ止めを使用することにより試合前とハーフタイムにねじを締め直せば、脱輪が防げるぐらいに締結力を強化することができた。
●自己位置推定アルゴリズムの不調
初日の調整日に自己位置推定のプログラムがうまく動作していないことが判明した。このアルゴリズムはコート環境に依存するためプログラムの要因であるか環境の要因であるか特定することができず、コート外にロボットが出ることを防ぐプログラムを緊急で作成し、応急処置をしたがコート外に出て、ロボットがコートから多かった。のちに、大会前に福岡でロボットを組み上げた際に2台のUnitVカメラとメイン基板をつなぐ通信線が途中でクロスする誤配線をしていて、左右入れ替わったデータがメイン基板に送信されていたことが無線デバッグシステムからの取得データで判明した。
●白線判別能力不足
私たちのロボットには白線を検知するセンサーが周囲に16個ついており、少なくはないがメイン基板とつないでいる信号線が4本しかなく、その信号線の割り当ても前後左右というきれいな配置ではなく、右前、右後ろ・・・のような割り当てのため、白線の判別や、ゴールキーパーの白線のトレースに苦労した。
また、ジュニアリーグvsメジャーリーグという大きなリーグをまたいだ交流戦でオープンリーグ機は勝つことはできませんでしたが接戦が繰り広げられ、スタッフの方が「皆さんがテクノロジーの大きな進歩を成し遂げている証です。どれだけ多くのことを学んできたかを見て誇らしく思いました」と話されていたことがとても印象に残っており、そしてその言葉にとても勇気づけられました。
スーパーチームではゴールを決める活躍!
スーパーチームでは各チームのロボットが力を出し合う中、広いフィールドで私たちのロボットがボールをゴールまで運びゴールを決め、同じチームになった他の国のチームと歓声をあげる場面もありました!
(Youtube ライブ配信より:https://youtu.be/TJdm8MabPr0?t=1836,ロボットがボールを運んでゴールを決めている様子)

<プレゼンテーション>--------------------------------------------------
ポスター発表:結果未公表
---------------------------------------------------------------------------------
ポスター発表では他チームやスタッフの方と特にロボットに搭載しているカメラやCPUについて共有を行った。また、サルバドールの地元の子供連れの方も多く来られていて、お子さんにロボットを持たせて一緒に写真を撮ったり、英語が分からない方もいるので翻訳アプリを使ってポルトガル語に翻訳しながらロボットの説明を行ったりなどもしました。
作成したポスターはこのリンクから閲覧できます↓
https://drive.google.com/file/d/1suhIfBI6EiCTd663WCHCyjG5zRlVZQMz/view?usp=sharing
インタビュー:結果
未公表無線デバッグソフトを使って遠隔でセンサの値やカメラとの通信状況を確認できる点や、レンズを使ってカメラの視野を広くした独自のビジョンシステムなどについてアピールし、無線デバッグシステムについてや、なぜカメラを複数台乗せたのかについて質問を受けた。
インタビューで使用したスライドはこのリンクから閲覧できます↓
https://drive.google.com/file/d/13zEyrpjlgwEOP13DRlyA5Zsw51cSCF0X/view?usp=sharing
その他、事前提出の技術資料に関する採点などについても現在未公開のため総合順位は把握できない状態です。
交流
大会中には、練習フィールドで無線デバッグの実演をしたり、カメラでのボールやコートの探索方法を説明したり、チームで自作した小さなマイコンボードをデータシートと一緒に配布したりして他チームと交流を行いました。英語が苦手ということもあり、初めはうまく交流できるか不安でしたが英語に詰まったときは翻訳アプリも活用しながら積極的に交流に挑戦することができました。国内予選とは違い、試合後には握手をして軽く言葉を交わすなど互いをたたえあうこともありとても良い雰囲気でした。
(写真上: オーストラリアのチームにロボットを紹介している様子、写真下: イタリアのチームと試合後の記念撮影)

New Step
次の目標は今まで私たちが学んできたこと、そして世界大会で学んできたことをRoboCupJuniorを担う次の世代に伝えていくことです。これからも国内の練習大会やOB戦などでプレゼンを行ったり、現役の選手の方々にロボットの紹介や、技術の紹介を行っていきます。また、今回世界大会で見たロボットのアイデア、共有し合った技術は、これからのものづくりや研究活動で生かしていきたいと思います。メンバーは全員今年で二十歳で今回の大会が選手として最後の公式大会となりました。今度はスタッフや審判補助などを通してこれからもRoboCupJuniorの大会を運営していけるように尽力していこうと考えています。
コメント

中野 湧
私はロボットを作るよりはアプリを作ったりWEBサイトを作ったりなど、どちらかといえばロボットのような物体を作るよりかは、パソコンの中のものインターネットの中のものを作るのが好きだと思っていました。今回の挑戦を通して、なんども試行錯誤をして、時にはうまくいかないこともありましたが、うまくいくことも多く、その時にものづくりの楽しさに改めて気づきました。そして、今回世界大会に出場するという決断をしたことで、勝敗以上に、あの会場でしか出会えなかった人、ロボットと出会いなど多くの貴重な経験をすることができ、挑戦することへの勇気をもらいました。これからも、未知の世界へ飛び込む勇気を持ち続け、新し経験を積んでいきたいと思います。

中野 葉
ロボットの設計を3年続けてきても、今年のロボットは間違いなく最高難易度の設計が必要でした。初めは真ん中に筒と全方位ミラーを置く"よくある"ロボットにするつもりだったのですが、途中で方針を一転して今のロボットへ舵をきりました。前例がないままひたすら試行錯誤を重ねて出来上がったこの機体は今まで見たことのない本当にユニークなもので、なんだか私たちのチームを具現化しているようでとてもわくわくしました。世界大会を通して多くの方からロボットをほめていただけました。Tachyon、それは虚数の質量を持つとされる仮想上の異質な粒子、私たちはそんな他者に埋もれない個性を作り出そうという思いでこのチーム名に決めました。その思いは形にできたと素直に思えるのはきっとこの2025年シーズンが本当に意味があったからだと思います。これからもこの思いを忘れずにものづくりを続けていきたいです。
まとめ
試合は最下位という大変悔しい結果になってしまいましたが、自分たちのロボットとの大きな違いが分かったこと、そしてなにより他国のチームと交流するというかけがえのない経験をすることができ、私たちにとってとても意義深いものになりました。これもみなさんのご支援がなければ成し得なかったものです。ご声援本当にありがとうございました。
リターンについて
リターン品の発送やメールの送信は8月中旬から下旬に行う予定です。



