
小学校時代、学年は伏せるが、理不尽な担任教師がいた。
黒板の脇に優秀とみなした児童の名前を書きハナマルをつけ、ダメとみなした児童の名前にはバツを付けた。
家庭訪問の感想を交えながら親御さんの悪口を平然と教室で語った。給食の時間、朝ドラの再放送を観ていた。
教室という密室の中でその人は暴君だった。幼いながらに何かがおかしいと思った。
中学に入り、反抗期になると、教師を信用できなくなり、そういう人たちから何かを習うのが我慢ならず、独学に走った。
結果それが功を奏し、今の仕事も独学でここまでやってきた。
そんな自分にとって、学校という場所はどうしても必要不可欠とは思えないし、感謝する面もあるが、正直色々と恨みもある。
学校という場所を舞台にいくつか作品も作ってきたが、半分は自分が体験しなかったファンタジーで、半分はリアルかも知れないが、そのリアルは過酷だ。
幸か不幸か僕が飛び込んだ撮影現場という職場は学歴を問われない。
思えば履歴書なんて学生時代のアルバイトまでで、社会に出てから一度も書いた記憶がない。そういう場所もこの社会にはある。
児童養護施設出身の方々の進学率はそうでない人たちの半分以下だという。
ブローハン君は機会は平等にあるべきだと語っていた。そんな彼は音楽の学校に通いたかったけど諦めたという。
児童養護施設出身の人たちに世にある様々な奨学金を紹介するサイトを作りたい。
そんな想いからクラウドファンディングを立ち上げたそうだ。
僕の学校時代の想い出が何しろ先述したような有様だったので、諸手を挙げていいねと言えば嘘になる。
大学なんて必要な人だけが行けばいい所だと思っている。このままじゃ依頼されたコメントが書けないぞ。
そうこうするうちにクラウドファンディングも始まってしまった。
そんなわけで取材を兼ねて彼の拠点である浦和を訪ねた。
クローバーハウスという児童養護施設出身の子どもたちの居場所がそこにはあった。
大学時代の下宿や映研の部室もこんな感じだったなぁと懐かしくなるような場所だった。
僕自身、独学でやって来たと言っても、密室でやってきたわけではない。
誰かと繋がり、仕事を得て、辛うじて自分なりの居場所を得て、ギリギリでここまでやってきた。
ひとつ言えることは、誰かと知り合わなければ、その先はなかった。
そんな場面だらけだった。
人生に二つとして同じ道はないけれど、辿らなかった道に想いを馳せると、もうひとつの物語が生まれる。
ブローハン君はきっとそんな物語を彼の人生に描こうとしているのかも知れない。
クローバーハウスにお邪魔しながら、まだあどけなさの残る若者たちと共に束の間のひと時を過ごしながら、そんなことを思った。
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岩井俊二さんより、応援コメントをいただきました!ありがとうございます。
応援コメント内でも触れていただいているとおり、
実際にコンパスナビの運営する居場所「クローバーハウス」に来訪してくださいました!
さまざまな若者たちと過ごすリアルな現場で、生活や支援のあれこれを語る貴重なひととき。
即興セッションも収録されたドキュメンタリー映像が、岩井俊二映画祭公式YouTubeチャンネルにて公開中です!
ぜひごらんください!
■前半(無料公開)
■後半(メンバーシップ限定)
https://www.youtube.com/watch?v=hJ6lSrMXu44




