600年以上続く神事の中にある神話を、その神社で上演してみる。

2025年10月4日(土)、地元のboraお祭りのプレ・イベントとして創作舞台「つたじまのおろち」を上演。香川県三豊市・賀茂神社に伝わる神話が、大人も子どもも楽しめる新しい芸能としてよみがえり、そしてその芸能が次の世代に手渡される。600年続く神事と神話、そして芸能の継承へ、ご支援をお願いします。

現在の支援総額

1,701,500

113%

目標金額は1,500,000円

支援者数

160

募集終了まで残り

終了

このプロジェクトは、2025/09/04に募集を開始し、 160人の支援により 1,701,500円の資金を集め、 2025/10/04に募集を終了しました

600年以上続く神事の中にある神話を、その神社で上演してみる。

現在の支援総額

1,701,500

113%達成

終了

目標金額1,500,000

支援者数160

このプロジェクトは、2025/09/04に募集を開始し、 160人の支援により 1,701,500円の資金を集め、 2025/10/04に募集を終了しました

2025年10月4日(土)、地元のboraお祭りのプレ・イベントとして創作舞台「つたじまのおろち」を上演。香川県三豊市・賀茂神社に伝わる神話が、大人も子どもも楽しめる新しい芸能としてよみがえり、そしてその芸能が次の世代に手渡される。600年続く神事と神話、そして芸能の継承へ、ご支援をお願いします。

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神話が生まれる ~ 祈りと芸能の再生

香川県三豊市・賀茂神社に伝わる「蔦島の大蛇(つたじまのおろち)」の神話をもとに、

能・浪曲・落語・舞踊・ラップ・電子音楽などを融合した、新しい芸能作品を奉納上演します。

この公演は、単なるパフォーマンスではありません。

日本各地で失われつつある「土地に根差した芸能」を再びよみがえらせ、次の世代へと手渡していくための試みです。大人も子どもも楽しめ、そして誰でもが上演できる作品として仕上げています。

消えてゆく伝統

私たちがこの神話を芸能にしたきっかけは、昨年、この地に伝わる伝統行事に参加したことです。

ここには600年以上伝わる「長床(ながとこ)神事」というものがあります(香川県指定無形民俗文化財)。都からのお客を迎えてお酒を酌み交わす神事ですが、その神事の間には『蔦加茂(つた・かも)』というの謡(歌唱)が謡われます。この能は『蔦島(つたじま)の大蛇(おろち)』の神話をもとに作られた能です。

かつては多くの人が謡うことができたこの謡ですが、昨年、参加したときには謡うことができる人はたったひとりになっていました。その方もご高齢。このままではその伝承が途絶えてしまうかもしれない。

「国の伝統文化を大事にしよう」

国も、そしてさまざまな政党も、そう声高にいいます。しかし、だからといって何かをしてくれるわけではありません。むろん予算を付けてくれることもない。

「このまま600年以上も続く伝統を途切れさせてはいけない」

そう思いました。

しかし、能の謡は何をいっているかわからない。子どもや若い人が興味を持ってはくれない。そこで、子どもも、そして若い人も楽しめる、そして…

「自分もこれを継承してみようかな」

…そう、思える作品を作ろうと思ったのです。

神話の復活に集まった人たち

最初にこのことを話し合ったのは多度津(たどつ)町のファミレス

この地に住む海谷英明、その神事に参加した能楽師の安田登、海岸寺の住職の上戸暖大、そしてその仲間たちの五人で深夜まで話し合いました。

そのときにどんな作品にしようかということが決まりました。

その話をいろいろな方にお話ししました。

最初に賛同して下さったのは、土地の方たち、特に『蔦島(つたじま)の大蛇(おろち)』の神話にも登場する「四田一本(よんたいっぽん = 塩田、鴨田、河田、吉田、倉本)」の皆様です。

しかもただの賛同だけではなく、「よっしゃ!」と体も投げ出し、このプロジェクトに参加してくださり、そして上演資金の獲得にも尽力してくださいました。

また、安田が芸能関係者にこの話をしていくと…

ラッパーで小説家でマルチクリエイターのいとうせいこうさんが「じゃあ、能の一部をラップにしちゃいましょう」と言い…

浪曲師の玉川奈々福さんや落語家の笑福亭笑利さんは「能の謡は難しいから、そこは落語や浪曲で皆さんにわかりやすく伝えます」となり…

Eテレのオフロスキー(『みいつけた!』)の編曲も手掛け、かつ明和電機にも所属する電子音楽のヲノサトルさんも「編曲と演奏は俺にまかせろ!」となり…

元・宝塚歌劇団の大﨑緑さんは「動きは私が振り付けます」となり…

美術家の山下昇平さんは「じゃあ、みんなであやつれる龍、作っちゃいましょう」となり…

そして、安田がいつも一緒にやっている東京雑戯團のメンバーや、能の謡を教えている京都、東京のメンバーたちも「私たちも出演します!」となり…

なんかすごい作品になりそうなのです。

そして、「僕たちだけでなく、伝統文化を大切にしようという方にもクラファンという形で参加していただこう」となり、クラウド・ファンディングを立ち上げることにしました。

神話は共同体に根差したものです。しかし、共同体や神話は土地にしばられません出演・クラファン・応援など、さまざまな形で参加することによって、その「神話」によってつながるネットワークが生まれます。

クラファンを通じて、ぜひ「蔦島の大蛇」神話によって生成されるドラゴン・ネットワークの一員になっていただければと思います。

いただいた支援金は、交通費・宿泊費・出演料・大道具、小道具・音響・照明・記録映像などの実費として大切に使わせていただきます。

※出演者は変更になることもあります。

どうか、あなたもこの芸能の「再生」に、共に立ち会ってください。

ちょっと自慢のパンフレットと出演の機会も

3,000円以上ご支援の方にはパンフレットを送らせていただきます。このパンフレットには…

・『蔦島の大蛇(つたじまのおろち)』の絵本
・当日の上演写真
出演者の写真
上演台本
コラム

…などが付いている、ちょっと自慢のパンフレットです。ぜひ、ご支援をお願いいたします。

また、ご支援いただいたすべての方には、本番へのミニ・出演(歌・ラップ)と、そのための公演前のミニ・レッスンがあります。見るだけでなく、一緒に謡いましょう!(当日、参加の方のみ)

『蔦島の大蛇(つたじまのおろち)』の物語

『蔦島の大蛇』の物語を子どもたちも楽しめるように作った絵本風の動画です。

文章は安田登、絵は生成AIとPhotoshop、そして音声は読み上げソフトの『VOICEPEAK』です。…なので、突っ込みどころ満載ですが、それはご寛恕を(笑)。ご支援が集まりましたら、美術の山下昇平の絵、そして出演者の声で動画と紙の絵本を作り、パンフレットに載せます。

《物語》
都の賀茂神社の宮司が、讃岐の国(香川県)にある仁尾の神社が当社の御分体だという夢を見た。船に乗って讃岐に行くと、仁尾という町に賀茂神社があった。

参拝していると不思議な女性が現れ「この沖にある蔦島という島には大蛇(オロチ)が住んでいました」と言う。

「そのために、人も近寄れず、舟も近づけず、島は蔦と蔓と雑草と棘で覆われていました。
 しかし、ある日、眩しい光を放つ白木の祠が島に流れ着いたのです。人々が舟で近づいて見ると、それは都の賀茂神社の神様の御分身でした。
 鴨田、河田、吉田、塩田、倉本の「四田一本」の人々は神様をこの地に勧請し、仁尾の人々は真摯に拝した。すると大蛇は海に消え、蔦島も仁尾の町も豊かになったのです」

そう女性は言った。

都の宮司が「大蛇はどんな姿をしていたのですか」と尋ねると、女性は答える。

「オロチの目は ほおずきのように真っ赤で、山が八つもあるようなとても大きな蛇です。体中にはいろいろな木が生えていて、お腹も血で真っ赤になっています」と。

そのとき、時間がぐるぐると巻き戻されて、「今は昔」になり、昔の蔦島がよみがえり、大蛇も現れた。大蛇は体をくねらせ、島を揺さぶり、海を荒れさせたので、人々は恐れ、逃げ惑った。

そこに島を守る神、別雷(わけいかづち)の神が現れ、剣で大蛇を斬り刻んだ!が、切られた大蛇は六体に分かれ、また神に向かって来た。

神がさらに力を振るうと、空は曇り 山も揺れて 波はぐるぐる巻き返し、大地もうなり始めた。


私たちの過去・現在の活動内容、実績

チームの主要メンバーである安田登を中心としてメンバーの活動の一部を紹介します。

※以下の他に能の公演の主催などもしています。

●シュメール神話『イナンナの冥界下り』

2015年6月6日:那須の二期倶楽部(山のシューレ)初演後30回以上公演

2018年2月 イギリス(ロンドン)、リトアニア(ヴィリニュス)公演

●人形劇『銀河鉄道の夜』

2021年8月7日:ギャラクシティ(プラネタリウム)

2022年12月25日:カメリアホール

2025年9月6日:凱風館

●『天守物語』(泉鏡花)

2017年10月8日:金沢21世紀美術館

2019年2月10日:島根県民会館

https://www.kanazawa21.jp/tmpImages/videoFiles/file-52-13-e-file-26.pdf

●『芸能開闢古事記』

2020年11月22日:島根県民会館

https://www.youtube.com/watch?v=2WRoZ9Y_Mss&list=PLoxlEOR9cqhtIrEHB6zwVPu4tpj7oPh2l&index=1&t=561s

全体:一部、二部、三部

●『冥界の秘儀』

2025年6月7日:新宿歌舞伎町能舞台

計画の具体的なスケジュール

・地元の方たちへの取材、打ち合せ

・台本完成

・出演者決定

・稽古・リハーサル

・大道具、小道具制作

・集客

プロジェクトの進捗状況、現在の準備状況

すでに「地元の方たちへの取材」は終わり、何度か「打ち合せ」が完了。

また、「台本の完成」、「出演者決定」は終わり、現在「稽古」が始まっています。

ご支援の使途

交通費(東京⇄仁尾):14人(出演者25名。14名以外は自費)

宿泊費:14人(出演者25名。14名以外は自費)

運搬費:大蛇、シンセサイザー等

舞台技術:照明、音響等

大道具・小道具:大蛇等製作費

衣装:能装束等の賃貸料

記録撮影・編集 

雑費:駐車場整理、入場整理など

支援品作成費:パンフレット、巻物、Tシャツなど  

CAMPFIRE手数料

プロジェクトの関係者紹介、協力体制

イベントが行われる予定の香川県三豊市に在住の海谷(本プロジェクトオーナー)が地元の伝統文化の継承と地域の振興を目的として、本プロジェクトは企画・運営されております。

また、このパフォーマンスの母体は、安田登(能楽師・作家)が関心を寄せた地元のとても古い神事に、インスピレーションと共感を得て集まったプロの芸能の方々です。

また、安田の創造的発想に共感を得た地元の心理カウンセラーや大手出版編集者など多種多様な才能を持つ有志がこのプロジェクトを支えています。

一方で、プロジェクトオーナーの住む三豊市仁尾町では、神事を大切に思う方々や地域の振興に深くかかわる方々にも興味を持っていただいています。その中でも、神社の元氏子総代の倉本氏、次期総代の塩田氏らが、役職を別にして、地元スタッフとしてとても大きな役割を担って頂き、地域での差配を一手に担って頂いています。

プロジェクトオーナーである海谷と創作責任者である安田の思いが伝わり、その共感の輪の広がりが、上演するまちと「創作」の現場の人々の結びつきを生んでいます。

さらに、この活動による様々なケミストリーが、この重要な文化行事(仁尾町 加茂神社に伝わる”長床神事”)の継承につながることを強く願っています。


第三者からの評価、受賞実績、メディア掲載実績

上記の『イナンナの冥界下り』に関してはアーツカウンシル東京より3年間で900万円ほどの助成金が下りました。

また、上記の金沢21世紀美術館、松江県民会館、那須の二期倶楽部、ギャラクシティの公演は開催機関からの依頼公演です。

最後にもう一度、お願い!

日本の伝統文化を新しい形でよみがえらせ、次世代に伝えていこうという活動です。芸能の誕生と継承の場にお立合いください。皆さまのご支援をお待ちしております!

そして、お近くの方は、そして遠くの方も、この祭礼の場にお出ましください(観覧料は無料です)。

支援金の使い道

集まった支援金は以下に使用する予定です。

  • 人件費

  • 広報/宣伝費

  • リターン仕入れ費

  • ・大道具・小道具製作費 ・交通費、宿泊費 ・撮影・記録

※目標金額を超えた場合はプロジェクトの運営費に充てさせていただきます。

支援に関するよくある質問

ヘルプページを見る

このプロジェクトの問題報告はこちらよりお問い合わせください

最新の活動報告

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  • ▼無事に終演いたしました!ご支援いただいた皆さま。皆さまのおかげで目標額を達成することができ、『蔦島の大蛇』を賀茂神社において無事に終演することができました。本当にありがとうございました。現在、撮影をお願いした人からの写真や動画が届くのを待っております。それが届き次第、写真付きの活動報告をいたします。会計報告も準備をいております(ただし、CAMPFIREさんからの振り込みが11月下旬ですので、会計報告は少し先になります)。また、リターンの制作も部門ごとに開始しております。ここら辺も進捗状況をこちらに書いていきます。地元の方たちには、とても喜んでいただき、終演後には子どもたちもやって来て「あれやりたい」、「これを持ってみたい」と大騒ぎをしていました。▼いろいろありましたが…さて、無事に終演はしたのですが、実はいろいろありまして…。まず、これを書くのはプロジェクト・オーナーの海谷英明のはずでした。が、海谷の身内に突然の不幸がございまして、作品の創作責任者の安田登が代わりに書いています。海谷の身内に不幸があったため、海谷が神社内に入ったり、皆さまの前でご挨拶することができませんでした。本来は終演後に会場でクラウド・ファンディングに関するお礼を申し上げる予定でしたが、それができずに本当に失礼いたしました。さらに!衣装を送ったスーツケースが行方不明になるという事態が発生し、安田ら、出演者一同は、出演直前にそちらの対応に追われ、海谷の代わりを務めることができませんでした。荷物は、東京から香川に送ったものなのですが、紛失したもののひとつはなんと羽田空港で止まっていました。しかも、宅急便屋さんは「確かに送り状はあるけれども、どこにあるかわからない」というつれない返事。それをこちらでさまざまなリサーチをして、羽田にあることがわかり、急いで送ってもらいました。そして、さらにもうひとつ紛失したのですが、それは上演時にはなく、まだ出て来ていません。足りない衣装で、どうやったらいいかをあれやこれや考え、開演ギリギリまであたふたしていました。すごいでしょ。衣装のスーツケースが2つない。こういうときに、音楽のヲノサトルさんは、必ず「面白くなって来たぜ」と言います。そして、何とかするのが東京雑戯團です。しかし、それでもやはり「とほほ…」ではあります。だってまだ出て来ていないのですから。「東京トホホ團」とも言われています。▼天候にも祝福され?さらに、始まった途端に雨が降り出しました。電子音楽の楽器は濡れると音が出なくなるかもしれない。太鼓も革がダメになるかも。装束も着物も絹です。雨は大敵です。しかし、もう始まっています。やめるわけにはいきません。「これは龍神さまからの祝福だ!」と(無理やり)思い、そのまま続けていたら5分ほどで小雨になり、15分後の「龍」や「別雷(わけいかづち)の神」が登場するころにはやんでいました。しかも、終演時には美しい月が中天にかかっていて、みなさまを祝福しているようでした。いろいろありましたが、土地の方にも、そして天候にも祝福された奉納上演でした。▼蔦島への参詣そして、今日(上演の翌日)は、出演者たちで蔦島に渡り、プチ山登りをして「沖津宮」に参詣し、いとうせいこう、玉川奈々福、ヲノサトル、安田登、そして出演者みなで謡を奉納いたしました。めでたし、めでたし…。…と思ったら、香川から東京に戻る電車(新幹線)が遅れ、今日中に東京に着けるかと最後の最後まで「とほほ…」です。 もっと見る
  • 皆さまのあたたかいご支援のおかげで目標額を達成することができました。心より御礼申し上げます。本プロジェクトのオーナー、海谷英明は今日は賀茂神社で椅子を並べたり、テントを張ったりの力仕事、私、安田登は新幹線で賀茂神社に向かっております。さて、明日の上演の詞章を掲載いたします。下記《ナレーション》部分は、当日、浪曲師の玉川奈々福さんと落語家の笑福亭笑利さんとのインプロ掛け合いになります(笑)。リターンでプログラムをお選びの方には、後日、製本した台本をお送りいたします。またプログラムには、この「活動報告」に書いた文章も載せようと思っております。音声部分はダウンロードができるようにします。お楽しみに~。《物語》《龍の頭:山下昇平作》 讃岐の仁尾にある神社が、都の賀茂の御分体だという夢を見た都の賀茂神社の宮司が、仁尾の賀茂神社に来た。参拝していると不思議な女性が現れ「この沖にある蔦島という島には、むかし大蛇(オロチ)が住んでいて、人も近寄れず、島は蔦と蔓と雑草と棘で覆われていた」という。 ある日、都の賀茂神社の神様の御分身である白木の祠が着いた。鴨田、河田、吉田、塩田、倉本の「四田一本」の人々は神様をこの地に勧請し、仁尾の人々は真摯に拝した。すると大蛇は海に消え、蔦島も仁尾の町も豊かになった、と。 都の宮司がさらに大蛇の姿を尋ねると「目はほおずきのように真っ赤で、山が八つもあるようなとても大きな蛇で、お腹も血で真っ赤になっていました」と答える。 すると時間が巻き戻されて「今は昔」になり、昔の蔦島がよみがえり、大蛇も現れた。 そこに島を守る神、別雷の神が現れ、剣で大蛇を斬り刻んだ。が、切られた大蛇は六体に分かれ、また神に向かって来た。神がさらに力を振るうと、龍は退治されて、海中の龍宮に帰っていった。『蔦島の大蛇』上演詞章【前半】《ナレーション》都の賀茂神社の宮司が登場する神官「仁保てふ浦の宮柱(みやばしら)。    仁保てふ浦の宮柱。   加茂の古跡(こせき)を尋ねん。    そもそも是は都の内。    加茂の宮の神主則之(のりゆき)とは我が事也。    さても我不思議なる御霊夢を蒙(こうむ)り。    只今讃州(さんしう)仁保の浦。    加茂の明神に参詣(さんけい)仕り候。《ナレーション》都の賀茂の神社の神主が不思議な夢によって、仁尾(香川県三豊市仁尾町)の賀茂神社に参詣することを決め、仁尾に向かう神官「急ぎ候程にこれははや。   讃州仁尾の里。   加茂の社(やしろ)に着きて候。   心閑(しず)かに参詣申さうずるにて候。   何事の。おはしますかは知らねども。   忝(かたじけな)さに涙こぼるる。   あら有難(ありがた)や候。《ナレーション》そこにどこからともなく女性がひとり現れる海女「なうなう何とてその社(やしろ)へは立ち寄らせ給ふぞ。神官「さん候これは都の加茂の社人にて候が。   当社の御神(おんがみ)と。   都の加茂の御神とは。   御一体との御霊夢を蒙り。   只今参詣申して候。海女 「仰せのごとく当社の御神は。   都の加茂の御分体(ごぶんたい)にて。   別(わけ)雷(いかづち)の神(しん)にておわします。神官 「さて御身はこの浦の海女にてあるか。海女 「さん候この浦の潜(かづ)きの海女にて候。神官 「さやうに候はば尋ねたきことの候。   まず近う御入り候へ。海女 「心得申し候。   さてお尋ねとは。   如何(いか)やうなることにて候ぞ。神官 「承り候へば。   この島の名をば蔦(つた)島(じま)とこそ申し候へ。   何とて左様には名付けられて候ぞ。海女 「さん候昔この島は。   蔦(つた)や葛(かづら)が島を覆い。   雑草(ざっそう)荊棘(けいきょく)生ひ茂り。   住む人も無く。   浦漕ぐ船も見えざりしにより。   蔦島とは申し候。神官 「あら不思議や。何とて左様にはなりたるぞ。海女 「往昔(むかし)より恐ろしき大蛇(をろち)の棲(す)むにより。   さて左様にはなりて候。《ナレーション》そこに白木の祠がひとつ流れ着いた。それは都の賀茂神社の神様の御分霊であった。四田一本の人たちがそれを祀ったら大蛇は海に消えた。海女 「則ち四田(よた)一本(ひともと)の人々勧請(かんじょう)申し。   此の浦の氏神(うぶがみ)とは祀(まつ)りしなり。神官 「いわれを聞けば有難や。   扨々(さてさて)さきに承(うけたまわ)る。   大蛇(をろち)のとがは如何ならん。海女 「其の後(のち)山河(さんが)鳴動して。   遂に退(た)ちしも此(この)神(かみ)の神官 「神慮(しんりょ)の程と海女 「聞くものを地謡 「玉藻よし。   讃岐の國はむら鳥の。讃岐の國はむら鳥の。   仁保の小里に宮柱。   敷(ふとしく)たてて御殿(みあらか)に。   神を納めし昔より。   天(あま)の羽衣稀(まれ)に来て。   撫(な)づとも尽きぬ平石(ひらいし)の。   堅き誓いぞ有難(ありがた)き。堅き誓いぞ有難き。神官 「猶々。大蛇の謂(いわ)れ委(くわ)しく御物語候へ。海女 「さても蔦島に棲みける大蛇は。   ただの大蛇にてはあらざるなり。神官 「さて其の形はいかならん海女 「その目は赤かがちの如くして神官 「何と。赤き鬼灯(ほおずき)の如しとや海女 「また八頭(やがしら)八尾(やお)有りて神官 「其の身の上には海女 「蘿(ひかげ)と檜(ひ)椙(すぎ)生ひ纏はり神官 「さて其の長(たけ)は海女 「谿(たに)を八谷(やたに)神官 「峡(を)八尾(やお)に度りて海女 「其の腹は神官 「悉(ことごと)く血に爛(ただ)れたり【後半】《ナレーション》すると突然、空が真っ暗になり、時が遡った昔の仁尾の町になり、大蛇もやって来た。神官 「あら不思議や空かき曇り。   波も逆巻き時も渦巻き。   いまは昔になるかと思へば。   大蛇の現れ出で来るぞや。《龍の登場》オン・アロリキャ・ソワカ地謡「海風暗く水は渦まき。   雲は地に落ち波立ち上り。   山河も崩れ鳴動して。   現れ出づる大蛇(だいじゃ)の勢ひ。   年ふる角(つの)には雲霧かかり。   松柏(まつかや)そびらに生ひ伏して。   眼(まなこ)はさながらあかゞちの。   光を放ち角(つの)を振りたてさも恐ろしき。   勢ひなり。《ナレーション》神官 「あら不思議や箱の岬より。   波風頻(しき)りに鳴動するは。   別雷(わけいかづち)の。   来現(らいげん)かや。《別雷の神、登場》別雷 「そもそも是は。   この島を護り國を治むる。   別雷の。神なり。神官 「神は十握(とつか)の神剣を携へ。   遥かの空より下り給へば。《ナレーション》別雷 「すわ大蛇よ。もの見せんと。地謡「大蛇(だいじゃ)は驚き怒りをなせども。   神威(しんい)にいかで叶ふまじや。   大蛇は地に伏し通力(つうりき)失せて。   山河に身を投げ漂(ただよ)ひめぐるを。   神剣を振り上げ斬り給へば。   斬られてその尾は雲を穿(うが)ち。   ぐるぐるぐると。ぐるぐるぐると。   八重(やえ)九重(ここのえ)に神を巻かんと   覆へば飛び違ひ。   巻き付けば斬(き)り払(はら)ひ。   廻(めぐ)ればめぐる。廻(めぐ)ればめぐる。互ひの勢ひ。   神は威光の力を現し   左右(ひだりみぎ)りに剣(つるぎ)を振(ふ)って。   大蛇を斬(き)り伏(ふ)せば。   斬られて大蛇は六体(ろくたい)に分かれ《ナレーション》《龍、六体に分かれる》 《ラップ》以下、2回繰り返す海風暗く水は渦まき/雲(い)は地に落ち波立ち上がり←山河も崩れ>鳴動して/現れ出づるその大蛇(だいじゃ)の年ふる角(つの)には雲霧かかり松柏(まつかや)そびらに生ひ伏したり←眼(まなこ)はさながらあかぢちの/←光を放つと角(つの)を振りたて/さも恐ろしきはその勢い←大蛇は驚き怒(いか)れども/神威(しんい)にいかで叶ふまじや←大蛇は地に伏し>通力(つうりき)失せ←山河に身を投げ>漂(ただよ)ひめぐるを神剣(しんけん)振り上げ斬り給ふと/斬られたその尾は雲を穿(うが)ち←神を巻かんと覆(おお)へば飛び違ひ巻き付けばそれを斬り払(はら)ひ廻(まわ)ればその輪めぐりゆき/互ひの勢ひ増しまさば 神は威光の力を現す 地謡「空も俄にかき曇り。   山は頻(しき)りに鳴動し。   波は逆(さか)巻(ま)き打ちよせて。   岩かみくだき山つひへ。   其の止むべくも見えざれば。   流石(さすが)大蛇(だいじゃ)も棲(す)みかねて。   海底(かいてい)深く飛び入りて。   龍宮(りうぐう)へ失せてぞ消えにける《ナレーション》別雷 「天津空ゆく日の如く。地謡 「天津(あまつ)空(そら)ゆく日の如く。   末(すえ)の世守る。神(しん)徳(とく)を。   天地(てんち)に誓ひて。海(うみ)幸(さち)と。   仁(にん)を保(たも)つの仁保の浦を。   永久(とわ)にやすらにとこしへに。   栄(さか)えゆくこそ。めでたけれ。《出演者》都の賀茂の神主           安田 登海女(実は観世音菩薩) 金沢 霞別 雷 神       本郷 智龍           名和紀子(笙も)            大島淑夫(笙も)            村田活彦            安達茉莉子            西村明子            占部まりラ ッ プ       いとうせいこう(地謡も)ナレーション      玉川奈々福(地謡も)                              笑福亭笑利(地謡も)真 言                 上戸暖大(海岸寺住職)音 楽: ヲノサトル(電子楽器)     森山雅之(打楽器)     五味佐和子(シンギング・ボウル)地謡:龍も(五十音順)  [流れの会]足立真穂、井上迅、宇野澤昌樹、小山(岡本)悦子、            杉井道子、中山ひとみ、福井沙季、門戸大輔[海岸寺寺子屋]加藤尚子、左柄伸哉、高橋香織、福田倫丈                  振り付け :大﨑 緑美術・照明:山下昇平 もっと見る
  • クラウド・ファンディングも、いよいよあと3日になりました。皆様、ご支援、本当にありがとうございます。東京雑戯團の会計を担当しております金沢霞です。『蔦島の大蛇』では、海女(実は観世音菩薩)を演じます。ちなみに上の写真は、日本神話のイザナギ命の冥界下りと、ギリシャ神話のオルフェウスの冥界下りを重ね合わせ、新たな舞台作品として再構築した『冥界の秘儀』です。手前側が私です。今回の活動報告書では6月に上演した『冥界の秘儀』の写真をいくつか載せます。赤字の劇団、東京雑戯團この度は、ご支援いただき、本当にありがとうございます。正直なところ、これほど多くのご支援をいただけるとは思っていませんで、驚きと感謝でいっぱいです。皆様のおかげで、今回の公演はあまり大きな赤字にならずに済みそうです(笑)。なんといっても出演者が29名。そのうち東京からが16名、京都からが7名ですから交通費だけでも大変なのです。そのうち何人かは出演料もなし、交通費・宿泊費も自腹です。それでも赤字です(笑)。会計担当としては胃が痛くなる毎日です。さて、私は今回の上演の演技の中心を受け持つ「東京雑戯團」について書いてみたいと思います。「楽しい」を追求する東京雑戯團の活動東京雑戯團とは、なんともふざけた名前ですが、これは本團の(一応の)主宰者である安田登(以下、安田さん)が命名した私たちの劇団の名前です。宗教家であり、宗教学者でがある釈徹宗先生から、「相変わらず雑な生き方をしていますね」と安田さんが言われたのがきっかけで、それまでのノボルーザを改名しました。ノボルーザという命名も雑です。名無しで活動していたのを、安田さんの名前である「登」から「ノボル一座」といとうせいこうさんが呼び始めたのですが、私をはじめとして、メンバーの多くが、遅刻はするわ、道は間違うわ、忘れ物はするわ、稽古の日は忘れるわ…と、ラテン気質が多いので、「一座」の「一」を長音の「ー」に読んで「ノボルーザ」とキーボードのヲノサトルさんが呼び始め、それが定着していました。が、「雑な生き方」と言われて、うれしくなってしまった安田さんが「これから当分、東京雑戯團でいこう!」と言い出して、いまのところこうなっています。でも、これも「雑」なので、いつ変わるかわかりません。リーダーがいない東京雑戯團東京雑戯團の特徴のひとつは「リーダーがいない」ということです。先ほど、安田さんが「(一応の)主宰者」と書きましたが、これは文字通り「(一応の)主宰者」であってリーダーではありません。能がそうらしいのですが、出演者の多くが違う流派に属している。持っている台本も違う。それなのに一緒に稽古(練習)をしない。東京雑戯團もそうです。ひとりひとりが自分のやるべきことを、自分なりにやってくる。そこで解釈を話し合ったもしない。誰かがリーダーになって、この演目はこうする!ということも決めない。以前の活動報告に、先日の凱風館(内田樹さんの合気道の道場:兵庫)での『銀河鉄道の夜』の公演後の打ち上げで「のぼるファースト」ではない、という話が出たとありました。主宰者の安田さんですら、ファーストではないのです。そのときに「じゃあ何ファーストだろう」という話になり、誰かが冗談で「かすみファースト・のぼるラスト」と言いました(かすみというのは私の名前です)。その時は「いやいやそんなわけ…」と適当に流していたのですが、その後、東京までの帰路にぼんやり考えて、「のぼるラスト」はともかく、「かすみファースト」は意外とその通りかもしれないと思いました。稽古を振り返ると、私が「こんなことをしてみたい」、「このタイミングでこうしたら面白いのでは」と、一番自由に発言していることに気づいたのです。私はメンバーの中で一番年下で、経験も少ないのですが、周りの経験豊富なメンバーが、私の意見を尊重し、受け入れ、時には軌道修正しながら見守ってくれています。おかげで、私はとても伸び伸びと、自由に活動できています。そして、おそらくはメンバーの全員が「自分ファースト」だと思っている(安田さん以外)に違いないのです。「ひとりひとりファースト」です。だからリーダーなんて必要ないのです。自由と楽しさを守るために実は、東京雑戯團の公演は毎回、赤字続きです。たとえば、直近の公演である9月の『銀河鉄道の夜』(兵庫県・凱風館)や、6月の『冥界の秘儀』(東京・新宿歌舞伎町能楽堂)も数十万円の赤字でした。海外公演などでは数百万円の赤字になることもあります。この赤字は、メンバーである安田さんが別の仕事で稼いで補填しています。コアメンバーは私を含めて5人いますが、このコアメンバーは出演料をもらわないのはもちろん、交通費・宿泊費も全て自腹です(安田さんもです)。また、コアメンバー以外の出演者も、相場よりかなり少ない出演料で快く参加してくれています。しかし、特に東京以外での公演では、交通費や宿泊費だけでもかなりの金額になるため、どうしても大きな赤字になります。では、なぜチケット代を上げたり、公演回数を増やしたりして、黒字にするようにしないのか?それは、「黒字にしよう」とか「利益を追求しよう」とすることで、もっとも大切である、「自由さ」や「楽しさ」が失われる可能性があるからです。まず、チケット代をあげるのは論外です。また、黒字にしようとすると、より広い会場を借りたり、何日も連続公演をしたり、あるいは外部に宣伝を委託したりと、さまざまな条件に縛られてしまいます。広い会場になるとお客さんとの近い関係がなくなりますし、何日も連続公演をすると毎回の新鮮さがなくなり、お仕事っぽくなる。宣伝を委託すると(ちょっと)ウソっぽいことを書かれてしまう可能性もある。その結果、自分たちが心から「やりたい!」、「楽しい!」と思える公演づくりができなくなってしまう可能性があると思うのです。そして、私たちが心から「やりたい!」、「楽しい!」と思える公演でない限り、ご覧いただいている方もそう思えないんじゃないか、そんな風に思っています。「損をするのが良いんだよ」という言葉お金の価値だけでは測れないものがあると、私たちは考えています。『銀河鉄道の夜』の公演は会場を提供して下さった凱風館館長の内田樹さんも、お金を出してくださいました。そのときに内田樹さんが「東京雑戯團も凱風館も、みんなちょっとずつ損をしている。それが良いんだよ」とおっしゃった言葉が心に残っています。この言葉の通り、お客さんも含めて、公演に関わる全員が金銭的にはプラスになりません。それでも、同じ時間を共有し、言葉では言い表せない特別な経験を分かち合うことができる。私たちは、その経験そのものに大きな価値があると考えています。私たち東京雑戯團は「お賽銭」形式の公演を行うこともあります。料金を決めずに、お賽銭箱を置いておき、そこに自由に入れていただく。いま金銭的に苦しい人でも、ご覧になることのできる公演、それが「お賽銭」形式の公演です。今回のクラウド・ファンディングも、この考えに基づいています。お金を「価値の対価」としてではなく、心からのご支援として受け取りたい。懐に余裕がある方は多めに、そうでない方は少しだけで構いません。今回のクラウドファンディングも、金額の多寡は関係なく、応援してくださるお気持ちそのものが私たちの励みです。もちろん、会計担当としては赤字にしたくないと切実に思っていますが、それ以上に、皆様の温かい応援に本当に感謝しています。最後にご報告と感謝を込めてこの公演も、そんな風に楽しく稽古を重ねてきました。本番をどうぞ楽しみにしていてください。なんだかまとまらない文章になってしまいましたが、皆様への感謝の気持ちと、東京雑戯團の活動に対する思いを少しでもお伝えできていれば幸いです。これからも東京雑戯團をどうぞよろしくお願いいたします。ちなみに、写真の『冥界の秘儀』の次回公演は、『蔦島の大蛇』の2週間後の…10月19日(日)…にあります。会場は東京の日本デザインセンター(銀座)です。ご興味のある方は、こちらをご覧ください。と、ちゃっかり宣伝もしてしましました(笑)。 もっと見る

コメント

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  1. 2025/10/03 09:56

    小さい頃に仁尾の昔話で読んだ、弁天さんの下がり松に出てくる蛇の話。ずっと弁天さんを守っていた蛇やと思ってたんですが、蔦島にいたのですね。


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