
皆さまのあたたかいご支援のおかげで目標額を達成することができました。
心より御礼申し上げます。
本プロジェクトのオーナー、海谷英明は今日は賀茂神社で椅子を並べたり、テントを張ったりの力仕事、私、安田登は新幹線で賀茂神社に向かっております。
さて、明日の上演の詞章を掲載いたします。
下記《ナレーション》部分は、当日、浪曲師の玉川奈々福さんと落語家の笑福亭笑利さんとのインプロ掛け合いになります(笑)。
リターンでプログラムをお選びの方には、後日、製本した台本をお送りいたします。
またプログラムには、この「活動報告」に書いた文章も載せようと思っております。音声部分はダウンロードができるようにします。
お楽しみに~。
《物語》
《龍の頭:山下昇平作》
讃岐の仁尾にある神社が、都の賀茂の御分体だという夢を見た都の賀茂神社の宮司が、仁尾の賀茂神社に来た。参拝していると不思議な女性が現れ「この沖にある蔦島という島には、むかし大蛇(オロチ)が住んでいて、人も近寄れず、島は蔦と蔓と雑草と棘で覆われていた」という。
ある日、都の賀茂神社の神様の御分身である白木の祠が着いた。鴨田、河田、吉田、塩田、倉本の「四田一本」の人々は神様をこの地に勧請し、仁尾の人々は真摯に拝した。すると大蛇は海に消え、蔦島も仁尾の町も豊かになった、と。
都の宮司がさらに大蛇の姿を尋ねると「目はほおずきのように真っ赤で、山が八つもあるようなとても大きな蛇で、お腹も血で真っ赤になっていました」と答える。
すると時間が巻き戻されて「今は昔」になり、昔の蔦島がよみがえり、大蛇も現れた。 そこに島を守る神、別雷の神が現れ、剣で大蛇を斬り刻んだ。が、切られた大蛇は六体に分かれ、また神に向かって来た。神がさらに力を振るうと、龍は退治されて、海中の龍宮に帰っていった。
『蔦島の大蛇』上演詞章
【前半】
《ナレーション》都の賀茂神社の宮司が登場する
神官「仁保てふ浦の宮柱(みやばしら)。
仁保てふ浦の宮柱。
加茂の古跡(こせき)を尋ねん。
そもそも是は都の内。
加茂の宮の神主則之(のりゆき)とは我が事也。
さても我不思議なる御霊夢を蒙(こうむ)り。
只今讃州(さんしう)仁保の浦。
加茂の明神に参詣(さんけい)仕り候。
《ナレーション》都の賀茂の神社の神主が不思議な夢によって、仁尾(香川県三豊市仁尾町)の賀茂神社に参詣することを決め、仁尾に向かう
神官「急ぎ候程にこれははや。
讃州仁尾の里。
加茂の社(やしろ)に着きて候。
心閑(しず)かに参詣申さうずるにて候。
何事の。おはしますかは知らねども。
忝(かたじけな)さに涙こぼるる。
あら有難(ありがた)や候。
《ナレーション》そこにどこからともなく女性がひとり現れる
海女「なうなう何とてその社(やしろ)へは立ち寄らせ給ふぞ。
神官「さん候これは都の加茂の社人にて候が。
当社の御神(おんがみ)と。
都の加茂の御神とは。
御一体との御霊夢を蒙り。
只今参詣申して候。
海女 「仰せのごとく当社の御神は。
都の加茂の御分体(ごぶんたい)にて。
別(わけ)雷(いかづち)の神(しん)にておわします。
神官 「さて御身はこの浦の海女にてあるか。
海女 「さん候この浦の潜(かづ)きの海女にて候。
神官 「さやうに候はば尋ねたきことの候。
まず近う御入り候へ。
海女 「心得申し候。
さてお尋ねとは。
如何(いか)やうなることにて候ぞ。
神官 「承り候へば。
この島の名をば蔦(つた)島(じま)とこそ申し候へ。
何とて左様には名付けられて候ぞ。
海女 「さん候昔この島は。
蔦(つた)や葛(かづら)が島を覆い。
雑草(ざっそう)荊棘(けいきょく)生ひ茂り。
住む人も無く。
浦漕ぐ船も見えざりしにより。
蔦島とは申し候。
神官 「あら不思議や。何とて左様にはなりたるぞ。
海女 「往昔(むかし)より恐ろしき大蛇(をろち)の棲(す)むにより。
さて左様にはなりて候。
《ナレーション》そこに白木の祠がひとつ流れ着いた。それは都の賀茂神社の神様の御分霊であった。四田一本の人たちがそれを祀ったら大蛇は海に消えた。
海女 「則ち四田(よた)一本(ひともと)の人々勧請(かんじょう)申し。
此の浦の氏神(うぶがみ)とは祀(まつ)りしなり。
神官 「いわれを聞けば有難や。
扨々(さてさて)さきに承(うけたまわ)る。
大蛇(をろち)のとがは如何ならん。
海女 「其の後(のち)山河(さんが)鳴動して。
遂に退(た)ちしも此(この)神(かみ)の
神官 「神慮(しんりょ)の程と
海女 「聞くものを
地謡 「玉藻よし。
讃岐の國はむら鳥の。讃岐の國はむら鳥の。
仁保の小里に宮柱。
敷(ふとしく)たてて御殿(みあらか)に。
神を納めし昔より。
天(あま)の羽衣稀(まれ)に来て。
撫(な)づとも尽きぬ平石(ひらいし)の。
堅き誓いぞ有難(ありがた)き。堅き誓いぞ有難き。
神官 「猶々。大蛇の謂(いわ)れ委(くわ)しく御物語候へ。
海女 「さても蔦島に棲みける大蛇は。
ただの大蛇にてはあらざるなり。
神官 「さて其の形はいかならん
海女 「その目は赤かがちの如くして
神官 「何と。赤き鬼灯(ほおずき)の如しとや
海女 「また八頭(やがしら)八尾(やお)有りて
神官 「其の身の上には
海女 「蘿(ひかげ)と檜(ひ)椙(すぎ)生ひ纏はり
神官 「さて其の長(たけ)は
海女 「谿(たに)を八谷(やたに)
神官 「峡(を)八尾(やお)に度りて
海女 「其の腹は
神官 「悉(ことごと)く血に爛(ただ)れたり
【後半】

《ナレーション》すると突然、空が真っ暗になり、時が遡った昔の仁尾の町になり、大蛇もやって来た。
神官 「あら不思議や空かき曇り。
波も逆巻き時も渦巻き。
いまは昔になるかと思へば。
大蛇の現れ出で来るぞや。
《龍の登場》オン・アロリキャ・ソワカ
地謡「海風暗く水は渦まき。
雲は地に落ち波立ち上り。
山河も崩れ鳴動して。
現れ出づる大蛇(だいじゃ)の勢ひ。
年ふる角(つの)には雲霧かかり。
松柏(まつかや)そびらに生ひ伏して。
眼(まなこ)はさながらあかゞちの。
光を放ち角(つの)を振りたてさも恐ろしき。
勢ひなり。
《ナレーション》
神官 「あら不思議や箱の岬より。
波風頻(しき)りに鳴動するは。
別雷(わけいかづち)の。
来現(らいげん)かや。
《別雷の神、登場》
別雷 「そもそも是は。
この島を護り國を治むる。
別雷の。神なり。
神官 「神は十握(とつか)の神剣を携へ。
遥かの空より下り給へば。
《ナレーション》
別雷 「すわ大蛇よ。もの見せんと。
地謡「大蛇(だいじゃ)は驚き怒りをなせども。
神威(しんい)にいかで叶ふまじや。
大蛇は地に伏し通力(つうりき)失せて。
山河に身を投げ漂(ただよ)ひめぐるを。
神剣を振り上げ斬り給へば。
斬られてその尾は雲を穿(うが)ち。
ぐるぐるぐると。ぐるぐるぐると。
八重(やえ)九重(ここのえ)に神を巻かんと
覆へば飛び違ひ。
巻き付けば斬(き)り払(はら)ひ。
廻(めぐ)ればめぐる。廻(めぐ)ればめぐる。互ひの勢ひ。
神は威光の力を現し
左右(ひだりみぎ)りに剣(つるぎ)を振(ふ)って。
大蛇を斬(き)り伏(ふ)せば。
斬られて大蛇は六体(ろくたい)に分かれ
《ナレーション》
《龍、六体に分かれる》
《ラップ》以下、2回繰り返す
海風暗く水は渦まき/
雲(い)は地に落ち波立ち上がり
←山河も崩れ>鳴動して/
現れ出づるその大蛇(だいじゃ)の
年ふる角(つの)には雲霧かかり
松柏(まつかや)そびらに生ひ伏したり
←眼(まなこ)はさながらあかぢちの/
←光を放つと角(つの)を振りたて/
さも恐ろしきはその勢い
←大蛇は驚き怒(いか)れども/
神威(しんい)にいかで叶ふまじや
←大蛇は地に伏し>通力(つうりき)失せ
←山河に身を投げ>漂(ただよ)ひめぐるを
神剣(しんけん)振り上げ斬り給ふと/
斬られたその尾は雲を穿(うが)ち
←神を巻かんと覆(おお)へば飛び違ひ
巻き付けばそれを斬り払(はら)ひ
廻(まわ)ればその輪めぐりゆき/
互ひの勢ひ増しまさば
神は威光の力を現す
地謡「空も俄にかき曇り。
山は頻(しき)りに鳴動し。
波は逆(さか)巻(ま)き打ちよせて。
岩かみくだき山つひへ。
其の止むべくも見えざれば。
流石(さすが)大蛇(だいじゃ)も棲(す)みかねて。
海底(かいてい)深く飛び入りて。
龍宮(りうぐう)へ失せてぞ消えにける
《ナレーション》
別雷 「天津空ゆく日の如く。
地謡 「天津(あまつ)空(そら)ゆく日の如く。
末(すえ)の世守る。神(しん)徳(とく)を。
天地(てんち)に誓ひて。海(うみ)幸(さち)と。
仁(にん)を保(たも)つの仁保の浦を。
永久(とわ)にやすらにとこしへに。
栄(さか)えゆくこそ。めでたけれ。
《出演者》
都の賀茂の神主 安田 登
海女(実は観世音菩薩) 金沢 霞
別 雷 神 本郷 智
龍 名和紀子(笙も)
大島淑夫(笙も)
村田活彦
安達茉莉子
西村明子
占部まり
ラ ッ プ いとうせいこう(地謡も)
ナレーション 玉川奈々福(地謡も)
笑福亭笑利(地謡も)
真 言 上戸暖大(海岸寺住職)
音 楽: ヲノサトル(電子楽器)
森山雅之(打楽器)
五味佐和子(シンギング・ボウル)
地謡:龍も(五十音順)
[流れの会]足立真穂、井上迅、宇野澤昌樹、小山(岡本)悦子、
杉井道子、中山ひとみ、福井沙季、門戸大輔
[海岸寺寺子屋]加藤尚子、左柄伸哉、高橋香織、福田倫丈
振り付け :大﨑 緑
美術・照明:山下昇平



