
こんにちは。
季節の変わり目となり、徐々に寒さを感じる季節となりました。
皆様、体調を崩されないようお気をつけください。
1週間ほど前、来院された方から『海辺にぐったりした猫がいる。頭のてっぺんが膨れていて、そこに釣り針のようなものが刺さっている。生きているように見えるけど、死んでいるかもしれない』という相談を受けました。
ちょうど健康体の成猫1匹を里親さんのもとに届けたところで、1枠空いたタイミングだったので、退勤後保護しにいきました。
船場近くのベンチの下でぐったりした茶トラの成猫ちゃんがいました。
お話に聞いていたとおり、頭のてっぺんに少し大きめの腫瘍のようなものができていて、そこに細い釣り針に似た形をした針金が2本刺さっていました。
そこから少量の出血が見られましたが、出血してから時間が経っていたのかほとんどの血は固まっていました。
どこかでお魚を狙って獲った際に何らかの原因で刺さってしまったのか、頭部の腫瘍によりぐったりしていたところを人の手で傷つけられたのか不明でしたが、早急に治療が必要だと判断し、院長に連絡して診ていただきました。
保護した段階で脱水、呼吸数が多いことは確認できていたので、病院では怪我の治療よりも先に身体検査と血液検査を実施しました。
突然ですが皆様、敗血症という病気はご存知でしょうか?
人も起こり得る病気ですが、敗血症とは、怪我等から細菌の感染が起こり、その感染が体全体に波及し、重症な場合、ショックや多臓器不全などからすぐに死に至ることがある非常に恐ろしい病気です。
特に猫ちゃんでは喧嘩によりできた傷から細菌やウイルスが感染し、敗血症になることがあります。
今回の茶トラ猫ちゃんの場合、身体検査、血液検査の結果、脱水・急性の腎不全・乳酸値高値・炎症反応がありました。
そのため、すぐに輸液、抗生剤等の注射を行いながら、怪我の治療を行うことにしました。
幸いなことに頭部の腫瘍が大きくなかったのと、現在の体では全身麻酔に耐えられない可能性があるとのことで、局所麻酔で治療を行うことになりました。
万が一のことを考え、鎮静をし、局所麻酔を行い、バイタルチェックを行いながら、腫瘍の摘出を行いました。
摘出した腫瘍は外注検査に出し、猫ちゃんは集中治療を行いました。

細心の注意を払って管理し、夜も院長がつきっきりで状態を診ていきました。
院長も看護師さんもみんなが元気になった姿を見せてほしいと願って管理していきました。
茶トラ猫ちゃんもすごく頑張っていました。
時折小さく鳴く声が本当に可愛くて、その声を聞きたくてスタッフ全員がたくさん話しかけていました。
休憩時間に集中治療室で茶トラ猫ちゃんの様子を見ながらおにぎりを食べていると、横になったままこちらを見つめ、ゆっくりと瞬きをしながら手を伸ばしてくるのが愛しくてたまりませんでした。
しかし、世の中には、あっという間にどうにもならなくなることがあります。
保護して約4日後、天国に旅立ちました。
正直、最後はすごく苦しかったと思います。
それでも、一人じゃなく、みんなが見守る中で旅立ったので、眠ったお顔はとても穏やかでした。

私が保護活動を始めてから、初めて素敵な里親様のもとに連れて行くことができなかった子になります。
もっと早くに保護できていれば、そもそも怪我をしていなければ、といつもたくさん考えます。
ですが、院長も看護師さんも次に繋げていくしかないのだと教えてくださりました。
この子の命が無駄ではなかったと次に繋げるように、今回の件は虐待の可能性もあるとみて、病院側から警察に通報させていただきました。
また、来院された保護団体さんにもお伝えし、情報を共有していっております。
皆様のご家族が少しでも長く健康で幸せに生きてくれますように。





